【セントウルS】安定した先行力と堅実な末脚でタフな馬場を攻略 京大競馬研の本命はトウシンマカオ

京都大学競馬研究会

中京芝1200m(Aコース) 4角3番手以内馬の開催日別成績

ⒸSPAIA

Aコース開催10日目

今週からいよいよ秋競馬がスタート。9月8日(日)にはセントウルS(GⅡ)が行われる。昨年は14番人気テイエムスパーダが見事に逃げ切るなど、例年は阪神の開幕週に施行され、差し馬には厳しい高速決着になりがちなレースだ。しかし今年は阪神競馬場の改修工事に伴う変則開催で2年ぶりに中京競馬。また前開催から数えて5週目の馬場で施行される。先週の記録的な悪天候もあり、例年とは真逆とも言えるレース環境となる。またGⅠ・スプリンターズSの前哨戦という側面も持ち、今年も日本屈指のスプリンターが多く集結。大混戦模様の難解な一戦となりそうだ。

以下では、本レースが行われる中京芝1200mのコース形態とそれに起因するレース質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは中京芝1200mのコース形態をみる。向正面真ん中あたりからスタートし、初角までの距離は約315m。緩やかな上り坂を約120m進んだあと下り坂に入る。3~4コーナー部分は全て下り坂でスパイラルカーブとなっている。最後の直線は412.5m。ゴール手前340m地点から240m地点にかけては、中山競馬場芝コースに次いで傾斜がきつい高低差2.0mの急な上り坂がある。この坂を登り切った後も約240mの平坦な直線が待ち構えているタフなコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離がそこまで長くない上に、スタート後が上り坂になっていること。スタート直後から上り坂でテンのダッシュが付きにくく、先手争いも長引きにくい。中盤はコーナーにかけて下り坂になるため一気にペースアップし、先行勢が加速していく。そのため直線に入るまでに後方勢が先行勢とのポジション差を埋めにくい。加えて4コーナーはスパイラルカーブとなっており、スピードをつけて回ると外に振られやすい。膨れた先行勢のさらに外々を回される後方勢はまず1着までは届かない。

また、最終直線も半ばで急な上り坂があり、それを登り切った後も平坦な直線が続くタフなコース形態のため、全馬終盤で脚色が鈍り、上がりに差が生まれにくい。したがって序盤、中盤で前の位置を取り、出来るだけラチ沿いを走る馬が恵まれやすいというのがこのコースの特徴だ。

ただ今回、これに加えて深く考慮しなければならないのは、Aコース使用10日目という点だ。基本は内前をロスなく立ち回った馬が有利になりやすいコースだが、開催が進み内側の馬場が荒れていくにつれ、内前を立ち回る馬の成績は下降していく。

中京芝1200mAコース、4角3番手以内馬の日次別成績,ⒸSPAIA


この傾向は数字からも明らかだ。過去10年、Aコース使用時の中京芝1200mにおける「4角3番手以内」の馬の成績は開催1~4日目(※連続開催除く)では勝率14.6%、連対率25.5%、複勝率36.1%、単勝回収率127%、複勝回収率119%であるのに対し、同5~8日目では勝率13.8%、連対率22.3%、複勝率28.7%、単勝回収率93%、複勝回収率97%といずれの数値もダウンする。

今回はAコースの10日目。通常10日目というだけでも内荒れ馬場となるが、さらに先週の記録的な悪天候によって、中京芝コースは類を見ない程に内側が荒れている可能性が高い。先週は4コーナーから直線にかけて内外の馬場差がはっきりしており、地力のない先行馬はあっさり敗れていた。

内前が有利になりやすいコース形態と、荒れた内馬場。この二つを考慮すると、今回は道中で荒れた内側を走らせすぎずに前目の位置を追走し、最後外に持ち出して末脚を伸ばせる先行力と末脚を兼備した馬が最も恵まれると考える。

続いて想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が7頭と、出走馬全18頭に対し少なくない。新潟千直からの延長組や、テンから積極的に入る馬が多くいるため、序盤が緩みやすいコース形態といえどミドル~ややハイペースで序盤は流れるだろう。

中盤はコース形態通りペースアップし、先行勢が速度を保った状態で最終直線に入るため、スパイラルカーブで馬群は広がる。最終直線の上り坂で地力のない先行馬は脱落していき、先団に食らいつく位置から脚を使う差し馬が馬群をぬって台頭する。やや差し馬有利な展開を想定しているが、広がった馬群の大外を最後方から一気に差し切るのは至難の業だろう。安定した先行力と先団に食らいつける追走力。そして最後に馬群をぬってジリジリと伸びてくる堅実な末脚を重点的に評価して印を打っていきたい。

近2走の敗戦で妙味あり

◎トウシンマカオ
前走の京王杯SCは好スタートから内の4、5番手で控える競馬。外伸び馬場を最内から懸命に追うも最後にやや伸びを欠き0.5秒差6着に敗れた。やはり適性は1200mであり、評価を下げる内容ではなかった。2走前の高松宮記念は超内有利で重馬場適性が出たレース。完全に度外視可能だ。連勝した京阪杯、オーシャンSの内容や相手関係を見ても、この距離ではメンバー最上位の能力を持っている。安定した先行力と堅実な末脚を併せ持ち、荒れた内側を避けられる外枠も歓迎だ。能力を発揮出来なかった近2走の敗戦で高いオッズ妙味も見込まれる。

◯サウザンサニー
前走の函館SSは直線で前が壁になり追い出しが遅れるロスがありながらも、追い出すと一気の伸び脚で上がり2位を記録し、0.2秒差4着に入った。初の古馬重賞ながら着順着差以上に評価できる内容だった。この時の勝ち馬サトノレーヴが次走キーンランドCを勝利していることも高評価できる。スプリント戦で1~3勝クラスを連勝してきたようにまだ能力の底を見せておらず。こちらもオッズ妙味がある。

▲ピューロマジック
北九州記念は小倉競馬開幕週とはいえ、前半3F32.3秒で逃げ切る衝撃の内容。3着馬モズメイメイの次走アイビスSD1着をはじめ、このとき負かした馬も次走以降スプリント重賞で好成績を収めており、地力は間違いなく高い。今回このメンバーでも逃げ切れるだけの力は十分にある。ただ前走とは違い高速馬場ではないこと、先行馬が揃って楽逃げが難しいという点で3番手とする。

△ママコチャ
昨年のGⅠ・スプリンターズS覇者で今回のメンバーでも随一の実績馬だ。トウシンマカオ同様、高松宮記念は度外視可能な敗戦。ただ今回は斤量を考慮し4番手とする。

×ダノンスコーピオン
休み明けとなった2走前・京王杯SCの内容が優秀。ロードカナロア産駒として注目する。

×ヨシノイースター
前走北九州記念の内容がよく、ピューロマジックとの比較で高いオッズ妙味を感じる。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連5点、◎-◯▲△-◯▲△×3連複9点で勝負する。(花田)

▽セントウルS予想▽
◎トウシンマカオ
◯サウザンサニー
▲ピューロマジック
△ママコチャ
×ダノンスコーピオン
×ヨシノイースター

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。


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