【2歳馬ジャッジ】クライスレリアーナが好指数で圧勝 カムニャックはラスト2F連続10秒9で非凡な瞬発力を見せる
山崎エリカ
ⒸSPAIA
8月2週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は新潟でクライスレリアーナが5馬身差の好指数勝ち、中京ではラスト2F 10秒9-10秒9の非凡な瞬発力を見せたカムニャックなどが出た、8月10日、11日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月10日(土) 新潟1R 優勝馬 クライスレリアーナ 指数-10 評価AA
2番枠からやや出遅れたが、難なく挽回して2列目の最内を追走。3角で逃げ馬と1馬身差につけ、その差を維持したまま2番手に上がり、直線序盤でも逃げ馬を壁にして1馬身ほど後ろをキープ。ラスト2Fで逃げ馬の外に誘導して追われると一気に先頭に立ち2馬身差ほどリードを奪うと、ラスト1Fで突き抜けて5馬身差で圧勝した。
ここは前走の未勝利戦で2着だった馬が2頭出走しており、なかなか良質な未勝利戦だったが、それらを相手にしなかった。前走の6月東京新馬戦でミリオンローズが直線で独走態勢になりかけたところを、最後に鋭い脚で追い詰めたのが2着エンブロイダリーと3着クライスレリアーナ。当時、上位3頭はかなり強いと評価した。
エンブロイダリーはデビュー2戦目の新潟未勝利戦を7馬身差で圧勝。2歳レコード勝ちで1クラス上の指数を記録。今後の大活躍が期待できる馬となった。
そして本馬のデビュー2戦目が今回のレース。単勝オッズ1.1倍に支持され、どのように勝つか、どれくらいの指数を記録するか。今後の牝馬クラシック路線を占う意味で大注目の一戦だった。
結果、本馬がここで記録した指数は1クラス上を勝てるもの。先日の未勝利戦でエンブロイダリーが記録した指数と同等だ。前走は差す競馬だったが、今回は勝ちにいく競馬で結果をだしたことはとても高く評価できる。今後の牝馬クラシック路線で相当な活躍が期待できる。
8月10日(土) 新潟6R 優勝馬 セナマリン 指数-4 評価A
6番枠から好スタート。気合いをつけることなく好位に上がっていくスピードを見せ、ハナも狙えたが外からハナを主張したラトルシェに行かせて2列目の最内につけた。3~4角で前にスペースを作り、4角でスペースを潰して直線序盤で同馬の外に誘導。そこから余裕たっぷりにラトルシェに並びかけ、ラスト1Fで抜け出して4馬身差で圧勝した。
この馬は大型馬だが脚の回転が速く、最後の直線で目いっぱい追われてはいなかったが強かった。ただし上がり3Fタイム35秒3、ラスト2F11秒6-11秒9。実際はそこまで余裕はなかったかもしれない。
新潟芝1400mの新馬戦は好タイムの新馬勝ち馬よりも凡タイムの新馬勝ち馬のほうが出世することが目立つ。コース形態上、緩みない流れとなりやすく能力をいきなり引き出されてしまうことが多いからだ。今回の本馬の走りは一見、余裕たっぷりに見えたが大事に使ってほしい。
8月11日(日) 新潟3R 優勝馬 キョウエイボニータ 指数-4 評価B
2番枠から五分のスタート。1番枠の馬が出遅れたこともあり、中団の最内を確保し、押し上げていく形で3角手前では2列目。3~4角では逃げ馬との間隔を詰め切っていたため、直線では進路がなかったがワンテンポ待って前2頭の外に誘導。その後はひと追いごとに差を詰めて2列目に上がり、ラスト1Fで逃げ馬を差し切って1馬身1/4差で勝利した。
新馬戦が超高速馬場の新潟開幕週。同レースは中団内目で脚をタメているうちに前の2頭が最後の直線で後続を引き離してしまい、直線で上手く外に誘導して差を詰めたが3着止まりだった。
それも踏まえて今回は新馬戦時よりも積極的にポジションを取って進めたが、手応えに余裕があり、2着馬にしっかり差をつけての勝利。当然、指数は悪くない。デビューから2戦連続で最速の上がり3Fタイムを記録した点も評価できる。次走の昇級戦でも要警戒だ。
8月11日(日) 新潟5R 優勝馬 マスカレードボール 指数+1 評価B
7番枠から出遅れ。気合いをつけながらも進みが悪く後方からの追走。道中で外に誘導して後方4番手で3角。3~4角で上がって中団の外で直線へ。直線では内にモタれて、追われてもあまり反応しなかったが、じわじわ伸びてラスト2Fで好位まで上がり、ラスト1Fで何とか差し切って半馬身差で勝利した。
本馬の半姉はマスクトディーヴァ。同馬は昨秋のローズS勝ち馬で秋華賞2着。今年も阪神牝馬S勝ち、ヴィクトリアマイルでは不利がありながら3着。他にもきょうだいに活躍馬がいる血統で、今回は単勝オッズ1.6倍の高い支持を集めた。
指数は平凡だが、ところどころにロスのある走りで全能力を出し切ったものではないだろう。素質が確かなら新馬戦で能力を出していないほうが後の出世は期待できる。素質が高い本物か。それとも相手に恵まれ新馬勝ちしただけの馬か。今後の成長が気になる一頭だ。
8月10日(土) 中京2R 優勝馬 アーデルリーベ 指数-10(ダート) 評価B
10番枠からまずまずのスタート。内のブルドッグワイルドが好スタートを決め、押してハナに立ったがそれを叩いた。しかし、同馬が抵抗して2頭併走状態で3角へ。3~4角でも併走状態だったが、ブルドッグワイルドが直線入口で追われて前に出た。それを直線序盤で馬なりのままかわして先頭に立ち、追い出されるとラスト1Fで突き抜け5馬身差で圧勝した。
このレースはジャスパーソレイユが16頭立てで単勝オッズ1.7倍と断然の支持を集めた。前走で初出走ながら未勝利戦に出走し、なかなか良い指数の2着だったという馬だが、前走時ほどは走れず、結果は指数ダウンの2着。デビュー戦は単発騎乗の笹川翼騎手(大井)が頑張らせ過ぎたため、ややお疲れのところがあったようだ。
アーデルリーベはなかなか良い指数で勝利。同馬の半姉ロッテンマイヤーは忘れな草賞の勝ち馬。半姉エーデルブルーメは今年のマーメイドS2着で秋の大きな飛躍が期待される馬だ。姉たちは芝での活躍が目立つが、本馬は父がヘニーヒューズということでデビューから2戦ダートに使われたが、いつか芝路線に転向して上昇を示すようなら、かなりの馬となりそうだ。
8月10日(土) 中京5R 優勝馬 エイシンワンド 指数-4 評価A
12番枠からやや出遅れたが、二の脚が速く2列目の外まで挽回。3角手前で2番手に上がり、3~4角ではクラスペディアのマイペースにつき合って脚をやや溜めた。残り300mで同馬が後続を引き離しにかかると、エイシンワンドはそれを目標に仕掛けた。ラスト1Fで後続を引き離していき、最後にクラスペディアを差し切り1馬身1/4差。3、4着には7馬身1/4差引き離しての実質完勝だった。
このレースは芝1200m新馬戦のわりには道中のペースが遅く、走破タイム自体が遅い決着となった。これは今後に向けて疲れが少なくすむので良いことだ。上がり3Fタイム33秒5はなかなか高評価できるもので、今後の活躍が期待できる。
8月11日(日) 中京5R 優勝馬 カムニャック 指数-5 評価AA
1番枠からトップスタートを決めたが、そこから控えて後方2番手まで下げ、1角までに外に誘導した。道中は後方2番手で5F通過64秒1のスローペース。これで届くのかと思われたが、3角過ぎから外を回りながら位置を押し上げ、4角で好位の外と前を射程圏内に。4角出口でワンテンポ待ってさらに外に誘導されると、フットワークが大きくなり楽に抜け出してラスト1F標で先頭。そこから突き抜けて3馬身半差で勝利した。
上がり3Fタイム33秒6はこの週の中京芝中距離では最速。ラスト2F10秒9-10秒9も高く評価ができる数字だ。本馬は牝馬でクラシックでは短い距離に対応する必要がある。2戦目以降の距離短縮で流れに乗れるかという不安はあるが、重賞戦線でかなりの活躍が期待できる。
8月10日(土) 札幌1R 優勝馬 テリオスララ 指数-4 評価A
6番枠からまずまずのスタートだったが、促すと行き脚がついて1角までに先頭に立った。1角では外に逃げようとしてやや外に張っていたが、すぐに修正して折り合いながらの逃げ。3~4角の中間で好位勢が半馬身差まで迫ってくると、じわっと動いて4角。直線入口で追われるとしぶとく伸び、リードを広げて1馬身差。ラスト1Fでもしぶとく踏ん張り、迫るマイユニバースを振り切って半馬身差で勝利した。
本馬の前走は7月札幌芝1800m新馬戦。勝利したキングスコールがレコード勝ちしたことで大きな注目を集めた一戦である。ただ新馬戦レコード勝ちはその後に過剰評価されやすく、疲れも残る可能性が高いことからあまり良い材料とは考えていない。
そのキングスコールが勝利した新馬戦で1番人気2着だったのが本馬。今回は単勝オッズ1.3倍と前走以上に圧倒的な支持を集めた。しかし、他馬との比較では指数が飛び抜けていたわけではなかった。
しかし今回は、新馬戦で好位から伸び負けしたことを意識したようで、逃げる競馬を選択。結果は後続に大きな差を付けたわけではないが、逃げて最速タイの上がり3Fで勝利したことは高評価できる。また指数も悪くない。
今回のレースぶりはかなりのスタミナを感じさせた。半兄にやはりと言うべきかスタミナ自慢のサンライズアース、セラフィックコールがいる。今後は勝ったり負けたりしながら、牝馬重賞戦線の伏兵としてかなりの活躍が期待できる。雨降りのオークスで激走がイメージできる馬だ。
8月11日(日) 札幌5R 優勝馬 マテンロウサン 指数-4 評価A
9番枠からはっきり出遅れたが、そこから気合いを入れられると好位に上がって行くスピードを見せた。道中は中団の外で折り合う競馬。このレースは前にいく2頭が飛ばし、本馬は3角では前と大きく離されてしまったが、そこから追撃開始。3~4角の中間で3番手に上がり、そこから前との差を一気に詰め直線ヘ。直線では脚色衰えることなく伸び続け、ラスト1Fで前2頭を捉えて4馬身差で圧勝した。
このレースは前にいった2頭が引っ張ったため、出走馬は能力を引き出されてしまった感があるのは減点材料だ。ただ本馬ははっきりと出遅れており、全能力を出し切ったわけではないだろう。今後の伸びしろが期待できそうだ。
本馬の母ミスパンテールはデビュー2戦目のチューリップ賞で休養明けながらいきなりの2着。その後も重賞4勝と大活躍した。母譲りの能力で今後の活躍を期待したい。
8月11日(日) 札幌8R 優勝馬 アスクシュタイン 指数-10 評価A
1番枠からトップスタートを決めてすんなりハナへ。1角で外に逃げようとして外に張ったが、2番手以下を離して逃げた。3~4角で後続が懸命に手を動かしながら迫ってきたが、本馬は4角でもまだ持ったまま。直線序盤で追われると、後続に3馬身半ほど差を広げ、ラスト1Fではもう独走。結果は7馬身差の圧勝だった。
2歳OPクラスでこの着差の勝利は相当な指数を記録したと思ったが、計算すると指数は特に優秀なわけではなく、他馬が全く走らなかったことによる独走劇だったようだ。
前走函館芝1800mの新馬戦は美しいフットワークを見せて好指数の逃げ切り勝ち。しかし多少瞬発力不足かもしれないと見ていただけに、前走以上に飛ばして逃げたことは好判断だった。
ただ今回もまだ余裕を感じさせる走り。今後は揉まれる競馬、瞬発力を問われる競馬になったときの対応力がカギになるが、重賞戦線で面白い存在となりそうだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クライスレリアーナの指数「-10」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.0秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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