【ジャパンC】近10年は1番人気が5勝、主役は秋盾制したドウデュース 好データ集まるダノンベルーガも面白い

勝木淳

過去10年のデータから見るジャパンC,ⒸSPAIA

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海外勢が狙う1着ボーナス4億5000万円

イクイノックスの衝撃的引退レースからはや1年になる。あのレースに出走していた馬のうち、今年も登録があるのは3着スターズオンアース、4着ドウデュース、6着ダノンベルーガの3頭だけ。2年連続のジャパンC出走はそう簡単ではない。

その昨年、豪華なメンバーがそろったものの、なにかが足りなかった。それが海外の強豪だ。たしかにイレジンはいた。フランスGⅠ2勝馬ではある。だが、かつてジャパンCを彩ったのは海外のトップクラスだった。ブリーダーズCと香港国際競走の狭間にあり、検疫などスケジュールも悩ましい。

そんなジャパンCに今年、とんでもない強豪が出走する。英国ダービー、ブリーダーズCターフなどGⅠ6勝のオーギュストロダンはディープインパクト産駒であり、ジャパンCを勝てば、異国調教馬による父子制覇となる。

さらにゴリアットは今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSでオーギュストロダンを破った。2着は凱旋門賞馬ブルーストッキング、3着はブリーダーズCターフを勝ったレベルスロマンスだから、申し分なし。ついでにC.スミヨン騎手の騎乗も熱い。

もう1頭、ファンタスティックムーンもジャパンCボーナス対象馬。3頭はともに対象レースを制しており、ジャパンCを勝つと、1着賞金にボーナス約4億5000万円が上乗せされる。3頭の1着賞金は9億5000万円。JRAの施策にのった3頭の運命やいかに。

以降では、過去10年のデータを使用してデータ分析していく。

人気別成績,ⒸSPAIA


はじめに断っておくが、外国馬は過去10年で【0-0-0-25】と散々。オーギュストロダン以下、今年のメンバーをこのデータに当てはめるのは早計というもの。よって、ここから先では、国内組についてのデータ分析となる。

1番人気は【5-1-2-2】勝率50.0%、複勝率80.0%と強力だが、2番人気は【0-3-3-4】複勝率60.0%も未勝利。主役が勝つが、対抗馬の逆転はない。一方で、3番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%以下、5番人気までが5勝で、3番手評価の一発が目立つ。これ以下は未勝利で、8番人気以下【0-0-0-98】。人気薄は複穴すらない。

年齢別成績,ⒸSPAIA


チェルヴィニア、シンエンペラーの3歳は【1-4-2-17】勝率4.2%、複勝率29.2%。3着以内7頭は19年2着カレンブーケドール以外すべてGⅠ馬だった。格を重視したい。ソールオリエンス、ドゥレッツァの4歳は【5-3-4-38】勝率10.0%、複勝率24.0%。16年3着シュヴァルグラン、21年2着オーソリティ以外は戦前にGⅠを勝っており、ここも格に注目。皐月賞馬と菊花賞馬ならチャンスはある。

ドウデュース、スターズオンアース、ジャスティンパレス、ブローザホーンらの5歳は【4-3-4-31】勝率9.5%、複勝率26.2%。こちらは22年1着ヴェラアズール、3着ヴェルトライゼンデ以外もラストインパクト、サウンズオブアース、シュヴァルグランなどレース時点でGⅠ未勝利馬が目立つ。GⅠ馬以外を狙う場合、5歳がおもしろい。

ドウデュース連勝への壁

外国調教馬を含め、前走が海外レースの馬は【0-1-0-28】複勝率3.4%。唯一の好走は凱旋門賞帰りだった5歳ジャスタウェイだけだ。同じく凱旋門賞帰りのシンエンペラーにとって高速馬場への対応はカギとなる。

前走GⅠ・主なレース別成績,ⒸSPAIA


前走天皇賞(秋)は【6-3-5-34】勝率12.5%、複勝率29.2%。秋華賞【1-2-1-3】勝率14.3%、複勝率57.1%と双璧をなす。前者からは勝ち馬ドウデュースをはじめ、4、7、14着馬が駒を進める。

前走天皇賞(秋)・着順別成績,ⒸSPAIA


天皇賞(秋)1着は【2-0-3-0】勝率40.0%、複勝率100%と馬券を外していない。とはいえ、ドウデュースの3連複では妙味が薄い。買うなら馬単、3連単のアタマにすえたい。そう考えると5頭で2勝は物足りない。

連勝を決めたのはGⅠ9勝アーモンドアイとGⅠ6勝イクイノックス。5歳でも牝馬のアーモンドアイは勝ったが、3着だったスピルバーグ、ラブリーデイ、キタサンブラックの3頭はいずれもドウデュースと同じ5歳牡馬。天皇賞(秋)との連勝はそれほど楽々越えられるわけではない。

同2着以下は一桁着順であればチャンスはある。4着ジャスティンパレス、7着ソールオリエンスは逆転できるか。また、上述した5歳・非GⅠ馬でいえば、ダノンベルーガが一致する。前走14着は大きなマイナス要素だが、前走を除く東京のGⅠでは4→3→5→4→6着。GⅠを勝つなら、東京しかない。

前走天皇賞(秋)・人気別成績,ⒸSPAIA


もうひとつ、天皇賞(秋)での人気別成績をみる。1番人気は【3-0-3-1】勝率42.9%、複勝率85.7%だが、2番人気だと【0-1-0-3】複勝率25.0%。1986年以降、天皇賞(秋)を2番人気で勝ち、ジャパンCで連勝を決めた馬はじつはいない。2着に1988年タマモクロス、1997年エアグルーヴの2頭がいるだけだ。

データを過去10年に戻すと、天皇賞(秋)で5番人気は【2-0-1-0】勝率66.7%、複勝率100%。これに一致するのはダノンベルーガ。前走着順は悪いものの、良いデータもある。

今年の天皇賞(秋)は1000m通過59.9のスローから後半1000m11.9-11.8-11.1-11.1-11.5とハイレベルの持続力勝負になった。同じようなロングスパート戦なら、ドウデュースには敵わない。だが、もう少し中盤が緩やかで、レースの動き出しが遅くなるなら、ダノンベルーガにだって勝機がある。海外で好走しており、本質はスロー寄りに適性があるではないか。

なお、前走秋華賞組は1着が【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%。チェルヴィニアにとってハードルは一段上がるものの、食い下がる場面はあっていい。

過去10年のデータから見るジャパンC,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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