【小倉記念回顧】父キングヘイローと重なる豪脚 6歳29戦目でタイトルつかんだリフレーミング

勝木淳

2024年小倉記念、レース結果,ⒸSPAIA

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父キングヘイローの凄み

中京で行われた小倉記念を制したのはリフレーミング。6歳29戦目で重賞をつかんだ。オープン入りは今年3月の中山。3勝クラス卒業まで14戦も要した。じっくり、そして着実に歩んだ29戦にまずは敬意を表したい。

また、父キングヘイローという血統が感慨深い。現在、JRA現役産駒はリフレーミングとヴィジョンオブラヴのわずか2頭しかいない。それもそのはずで、スペシャルウィーク、セイウンスカイと三強を形成したのは1998年、26年も前の話だ。父は欧州の至宝ダンシングブレーヴ、母は米国超良血グッバイヘイロー。世界的良血として期待されたキングヘイローは牡馬三冠2、14、5着と無冠。その後も重賞こそ2勝をあげたが、5歳シーズンまではGⅠ未勝利。待望のGⅠ勝利は高松宮記念。改修前のことだが、リフレーミングと同じ中京だった。この血統でスプリントGⅠを勝ったのもキングヘイローらしい。

そこには内面の難しさがあった。燃えやすい気性、闘争心は紙一重。悪い方に出れば、レースで全力を発揮する妨げにもなる。気性が競走にどれほど影響するのか。キングヘイローは私にそれを教えてくれた教科書のような馬だった。そして、GⅠをつかんだのは、今回のリフレーミングと同じ6歳でのこと。息長く力を出し続ける特徴は着実に産駒に伝わった。近年は母の父としてイクイノックス、ピクシーナイト、ディープボンド、キングズソードの血統表にその名がある。超良血のバッグボーンが血統表の奥に入ることで、本領を発揮する。現役時代の気難しさが様々な血と混ざり、薄まっていき、その奥にある底力が持ち上がってくる。改めてキングヘイローの凄みを証明できた。

リフレーミングも父と同じく決して操縦しやすいタイプではない。折り合いが難しく、オープン勝ちを決めた福島民報杯は小回りの福島で4コーナー13番手から後方一気。この荒削りな面もキングヘイローの魅力だ。近走、丸田恭介騎手が終盤まで後方で我慢する競馬を教え込み、それを川田将雅騎手が結果に結びつけた。序盤は内枠を生かし、後方馬群でリラックスさせ、勝負所ギリギリまで我慢。直線で外に出してから一気にエネルギーを爆発させた。勝ち時計は1:56.5のレコード。6歳でこのパフォーマンスはそう簡単ではない。父キングヘイローの高松宮記念に重なる。そんな末脚だった。


価値ある2着コスタボニータ

レースは1000m通過57.6のハイペース。競り合わなければスローで逃げられるテーオーシリウスだが、前走の中京記念で競り込まれ、以前よりスイッチが入りやすくなっているようだ。今回は単騎で進めながら、2ハロン目の10.4からすべて11秒台で突っ走ってしまった。前半にあるのぼり区間でペースを落とさないと、中京芝2000mを乗り切るのは難しい。

結果的には前後半1000m57.6-58.9の持久戦になり、リフレーミングの末脚を引き出すことになった。そんな流れのなか、2番手からゴール寸前まで先頭を守ったコスタボニータは高く評価すべきだろう。テーオーシリウスを深追いせず、自身は息を入れる区間を作れたとはいえ、牝馬56キロでこの走りは見事だ。以前はマイル寄りに距離適性があったが、今年は愛知杯3着、中山牝馬S5着、福島牝馬S1着など、着実に守備範囲を広げてきた。牡馬さえ音を上げる持久力重視の2000m戦で2着に入った事実は、秋に向けて期待を抱かせる。これまでGⅠ出走はないが、そろそろもうひとつ上を目指していいタイミングではないか。

3着は2番人気ディープモンスター。序盤は速い流れに戸惑ったか、前を追いかけようとする仕草があり、これがエネルギーのロスにつながったか。3コーナーの下りからリズムをとって進出したものの、後ろから来たリフレーミングとの末脚勝負で見劣った。そのリフレーミングに前に入られ、最後は外に切りかえるなど、少しスムーズも欠き、さらに58.5キロを背負ってのレコード決着はしんどかった。

健闘したのは格上挑戦だった4着ヴェローナシチーだろう。一旦はコスタボニータに並び、見せ場たっぷり。3歳時には京都新聞杯2着がある実績馬だが、屈腱炎で1年半の長期休養を余儀なくされた。戦列に復帰した自己条件こそ8着に終わったが、使われて着実にパフォーマンスを上昇させた。元値はオープン級の実力を持つ馬なので、自己条件突破は時間の問題だろう。9月終わりまで続く得意の中京で決めたいところ。次開催初日に芝2200mムーンライトハンデキャップ、最終週に芝2000m高山ステークスがある。反動がなく、脚元さえ無事で出てくれば、確勝級ではないか。


2024年小倉記念、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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