【エプソムC】前走データからレーベンスティールは巻き返し可 面白いのはセルバーグとルージュリナージュ

勝木淳

2024年エプソムカップに関するデータ,ⒸSPAIA

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4歳優勢のレース

5週連続GⅠ開催が終わった東京は、早くも収穫の秋を目指す馬たちの種まきがはじまる。エプソムCは秋の毎日王冠、天皇賞(秋)とつなげていきたい。その反面、梅雨入りがニュースになる頃らしく、過去10年で良馬場開催は半数の5回にすぎない。残りは稍重2、重2、不良1の道悪競馬。良馬場以外だと4、5番人気、7~9番人気の成績が上昇し、天候と同じく荒れ模様になる。

この春は開催日の雨が少なく、道悪予想をする機会も少なかった。当然、近走で道悪を走った馬も少なく、戸惑う場面もあるかもしれない。当日の天候と馬場に非常に気を遣う季節だが、この時期がないと実りの秋はやってこない。たくましく育つ作物に倣い、ここを力強く突破してほしい。そして、ここで重賞2勝のヴェルトライゼンデが復帰戦を迎える。コントレイル世代の代表格が度重なるケガを乗り越えて走る。データは過去10年分を使用する。

エプソムCの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%、2番人気【3-0-2-5】で基本線として上位人気はアテになる。ただ、良馬場以外で上昇するのが7番人気【0-2-0-8】複勝率20.0%あたり。良馬場なら5番人気以内も、雨で馬場が渋った際はそのゾーンをもう少し広げたいレースだ。

エプソムCの年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢は4歳【5-5-4-24】勝率13.2%、複勝率36.8%、5歳【4-2-2-35】勝率9.3%、複勝率18.6%、6歳【1-3-3-28】勝率2.9%、複勝率20.0%で4、5歳を中心に組み立てたい。特に降級制度が廃止された2019年以降は4歳が5年連続3着以内に入っている。


道悪なら前走ダービー卿CT組

4歳勢はレーベンスティール、マイネルケレリウス、シルトホルンなどが出走を予定している。データのあと押しを受けたいところだが、今年、4歳はかなり苦戦中だ。東西金杯から目黒記念までの重賞で4歳は【9-11-9-105】。芝にかぎると【7-8-9-90】で、芝1800m以上だと【3-3-2-49】勝率5.3%、複勝率14.0%。3勝のうち牝馬限定重賞が2つで、牡馬は大阪杯のベラジオオペラしか勝っていない。芝マイル以下の4勝も、うち2勝が牝馬限定で、コレペティトール(京都金杯)、ルガル(シルクロードS)の2頭にとどまる。そろそろ上半期も終わり、夏がくる。4歳牡馬も成長力で逆転を目指してほしい。

エプソムCの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


エプソムCの前走レース別成績,ⒸSPAIA


まずは前走重賞組から。時期が近い左回りの中距離重賞である前走新潟大賞典は【1-2-1-25】勝率3.4%、複勝率13.8%。数が多く絞りにくい。着順の傾向をみても5着以内【0-1-1-10】、6着以下【1-1-0-15】。好走した馬がいいとは限らない。セルバーグ、レーベンスティールも巻き返す。セルバーグは展開のカギを握る存在であり、2走前は小倉大賞典で逃げてハイペースをつくり、3着に粘った。新潟大賞典はスタートで躓き、流れをつくれなかった。大敗後だからこそ、今度は面白い。

マイルのダービー卿CTは【1-0-2-6】勝率11.1%、複勝率33.3%。距離も競馬場も違うハンデ戦で、頭数は少ないながら好走馬を出す。今年は4、6着ニシノスーベニア、タイムトゥヘヴンがいる。ニシノスーベニアは戦歴をみると中山巧者で、東京だと瞬発力で見劣る。しかし道悪になり、時計がかかった際は楽しみがありそうだ。タイムトゥヘヴンは22年京王杯SC3着以来馬券圏内がなく、年齢的に厳しそうだが、大きく負けてもいない。東京の適性はある。

前走ヴィクトリアマイルは【1-0-0-5】勝率、複勝率16.7%。強行軍だが、16年ルージュバックが得意の芝1800m戦で好走した。同じく5着だったのがルージュリナージュ。ヴィクトリアマイルは最後方から追い込んで5着まできた。東京芝1800mもベストだ。

エプソムCの前走OP・L、距離別成績,ⒸSPAIA


前走OP・Lは【4-5-2-58】勝率5.8%、複勝率15.9%。必ずしも前走重賞組だけで決まらないのはいかにも端境期に行われるエプソムCらしい。分かりやすいのは距離だ。前走1800mだった馬が【4-4-2-36】勝率8.7%、複勝率21.7%、1800m未満【0-0-0-12】、1800m超【0-1-0-10】複勝率9.1%で、1800mが断然。メイS3、5着シルトホルン、カレンシュトラウス、都大路S2着アルナシームが該当する。谷川岳S2着トゥデイイズザデイは人気に推されそうだが安心できない。1800mは国内にGⅠがない非根幹距離という特殊舞台。スペシャリストが育ちやすく、直前の1800m経験が大きなアドバンテージになる。

前走3勝クラスは【1-0-2-10】勝率7.7%、複勝率23.1%と重賞の壁を感じないでもない。好走馬は東京芝2000m【1-0-1-3】、阪神芝1800m【0-0-1-1】。東京でも芝1600mだと【0-0-0-4】。府中市70周年記念を勝ったマイネルケレリウスは狙える。反対に、分倍河原Sを勝ったラケマーダや中山芝1600mの春興Sを勝ったサイルーンはデータ上、危険な香りがする。

2024年エプソムCに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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