【デイリー杯2歳S回顧】新星ジャンタルマンタルはダービー路線でも楽しみな素材 カンティアーモの敗因は
SPAIA編集部
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日本にも縁のあるPalace Malice産駒
11頭で計3.7秒。これはデイリー杯2歳Sの出走馬たちが新馬、未勝利戦でつけてきた着差の合計だ。着差が全てではないが、能力を測るひとつの尺度ではある。下級のレースを楽勝してきた馬が集まった、GⅠ前哨戦にふさわしい好メンバー。今年のデイリー杯はそんな一戦だった。
この戦いを制したのは鮫島克駿騎手騎乗、1番人気のジャンタルマンタル。2着エンヤラヴフェイスにつけた着差は0.3秒だった。1986年以降の当レースで、2着に0.3秒以上の着差を付けた馬は過去13頭。ビワハヤヒデ、メイショウボーラーら5頭がのちにGⅠ馬になり、エアスピネル、エイシンキャメロン、レジェンドハンターは朝日杯FSで2着に入った。ジャンタルマンタルも大舞台への視界は開けたといっていい。
レースはメイショウサチダケの逃げに九州産馬テイエムチュラランが続いて前後半47.4-47.1の平均ペース。ジャンタルマンタルは五分のスタートから馬なりでインの3~4番手につけると、道中少しだけ行きたがる面を見せながら追走。直線入り口では空いたインを突いて先頭に立ち、残り200m付近で鞍上のステッキに応えて後続をさらに突き放す快勝だった。マイルですんなり先行できるスピード、馬群に入った経験、仕掛けに対する鋭い反応。どれをとっても文句なしの満点だ。
父Palace Maliceはあまり聞きなじみがないかもしれないが、実は日本にも縁がある。現役時代はダート12FのGⅠ・ベルモントSを制した馬で、その母はのちに日本で供用されるパレスルーマー。今年の天皇賞(春)を制したジャスティンパレス、ステイヤーズSと阪神大賞典で2着があるアイアンバローズの兄がPalace Maliceだ。そして、母インディアマントゥアナはアメリカの芝11FでGⅢ・レッドカーペットHを勝っている。
これを踏まえると、血統的にはむしろマイルが距離不足とすら感じさせる。この後は朝日杯FSに進むのかもしれないが、自身が1800mの新馬戦を完勝した点も含め、ホープフルSでも面白いのではないか。そして、来年は日本ダービー戦線でも楽しみがある。
走らなすぎたカンティアーモ
2着エンヤラヴフェイスは好タイム5馬身差勝ちの新馬戦に素質を感じさせながら、新潟2歳Sでは7着と大敗。評価を落としていた。ただ、新潟2歳Sは内枠で揉まれて前進気勢を欠いた形の敗戦であり、今回は少頭数の外枠に替わって本来の力を発揮できた。あとは再び内枠になったときにどうなるかが課題として残る。
3着ナムラフッカーは序盤最後方で折り合いに徹しつつ、内2~3頭分を避けながら追走。直線も迷いなく大外に持ち出されると、上がり最速34.5秒の脚を使って追い込んだ。松山弘平騎手の馬場読みが奏功した。とはいえ紫菊賞5頭立て3着からは一気にパフォーマンスを上げた形で、現状はマイルまでで後半勝負が合うのかもしれない。
3番人気6着カンティアーモは新馬戦のレコードVを思うと走らなすぎた。折り合いはついたが、逆に残り800mからは進んでいかなかった。右回りのせいか、初めて馬群に入って怯んだか、敗因はひとつに同定できないが、ひとことでまとめるなら「経験不足」だろう。それでもゴール前はようやくエンジンがかかった感じで伸びており、能力にケチがつくものではない。今年は阪神JFだと相手がかなり手強い想定だが、自己条件や他の重賞なら即反撃を期待していい。
2番人気9着ダノンキラウェアは好位追走から直線伸びず。こちらは新馬戦が6頭立て超スローペースでの勝利であり、時計含め重賞で通用する裏付けがまだない。経験面の差もあったのは事実だが、現状は力負けか。4番人気10着フルレゾンは序盤、折り合いを欠きすぎた。父オルフェーヴル、母は南関東で活躍したカイカヨソウ。将来的にはダート馬の可能性もある。
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