【毎日杯】割引材料なし、ここはキングズレインの相手探し! Cアナライズからの相手候補は名牝系を持つ一頭
貴シンジ
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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
スプリングSではベラジオオペラとホウオウビスケッツを推奨し、オールパルフェは割引が必要とした。ベラジオオペラは2番人気1着、ホウオウビスケッツは3番人気2着、オールパルフェは4番人気7着。控え目に言っても完璧だった。
さて、今回は3月25日(土)阪神競馬場で行われる毎日杯について下記3つのファクターを組み合わせる、「コンプレックスアナライズ」で分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった15頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。
重要データ:前走重賞組or1勝クラス勝ちが絶対条件
重要データで取り上げるのは前走クラス別成績。ここは明確な傾向が出ており、1勝クラス【4-4-4-30】、重賞【6-4-4-23】で勝ち馬は1勝クラスか重賞組からしか出ていない。
ちなみに前走GⅠ組は【0-0-0-2】で好走馬が出ていないが、この2頭は19年ケイデンスコール(前走朝日杯FS13着)と22年コマンドライン(前走ホープフルS12着)で共に大敗からの臨戦。今回はキングズレインが前走ホープフルS3着。前走GⅠだからといって割引く必要はないだろう。
1勝クラス組についてはもう少し深堀りする。前走1勝クラス組の成績は前述の通り【4-4-4-30】で、注目すべきは着順となる。1着馬は【4-2-3-13】で勝率18.2%、連対率27.3%、複勝率40.9%。一方、2着以下は【0-2-1-17】で勝率0%、連対率10.0%、複勝率15.0%となっている。明確な傾向が出ており、1勝クラス組を狙うなら1着馬となる。
【前走重賞組もしくは1勝クラス1着馬】
・オメガリッチマン
・キングズレイン
・シーズンリッチ
・シェイクユアハート
・ドットクルー
・ノッキングポイント
前走不利データ:京成杯のオメガリッチマン
オメガリッチマンの前走は京成杯2着。京成杯は前走で負けていた場合は着差が非常に重要なファクターだった。0.6秒差以上で負けた馬の成績は【1-0-0-43】で全く結果が出ていない。唯一好走した馬は21年のオニャンコポン。その前走はホープフルS、つまりGⅠだった。GⅠ以外で0.6秒差以上負けていた馬は京成杯では厳しい。
オメガリッチマンはジュニアC(OP)1.5秒差7着大敗から、京成杯では2着に好走してみせた。思い返せばジュニアCはスタート後の躓きが響いていて、ノーカウントでもよい一戦だった。前走の走りがこの馬の真価だろう。
前走不利データ:ホープフルSのキングズレイン
キングズレインの前走はホープフルS3着。ホープフルSでは枠番が非常に重要な要素となる。GⅠに格上げ後の過去5年のデータでは7枠【0-0-1-9】、8枠【0-1-0-10】となっていてほぼ好走馬が出ていない。
昨年のホープフルSでも1番人気だったミッキーカプチーノが8枠18番から5着に沈んだ。そんな中7枠15番から3着に好走したキングズレインは評価に値する。
血統解説:オメガリッチマン、キングズレイン
・オメガリッチマン
父イスラボニータ×母エルカラファテ(父ディープインパクト)、日本での牝祖は祖母オジャグワ。オジャグワは現役時アルゼンチンで走った馬だが、エストレジャス大賞ディスタフ連覇を含むGⅠ・5勝という超級の名牝だ。
なにが凄いかというと、エストレジャス大賞ディスタフは今でこそパレルモ競馬場のダート10Fという設定だが、オジャグワが連覇した頃は奇数年はサンイシドロ競馬場の芝、偶数年はパレルモ競馬場のダートと毎年入れ替わって開催されていた。つまり連覇したということはダート10F、芝10F両方で勝利したということだ。当然ながらこんなことをやってのけた馬はオジャグワ以外いない。
社台ファームがオジャグワを繁殖として導入後、なかなか競走馬となる産駒が出ない中、JRA3勝のリベルタンゴ(父Smart Strike)、同じく3勝のサトノシャーク(父ディープインパクト)などを輩出した。本馬の母エルカラファテはそんな2頭の妹。スタミナ豊富、スピードがあってパワーもある三拍子揃った万能型ファミリーだ。
イスラボニータは緩いタイプの産駒も多く出すが、本馬はそういうことはなく柔らかい走りをする。雄大な走りができ、中山→阪神外回りは舞台好転だろう。
・キングズレイン
父ルーラーシップ×母タッチングスピーチ(父ディープインパクト)、日本での牝祖は祖母リッスン。
リッスンはフィリーズマイル(GⅠ・芝8F)の勝ち馬で実績は十分。本馬の母タッチングスピーチがローズS勝ちに加えてエリザベス女王杯3着、その全弟には共同通信杯3着のムーヴザワールドや菊花賞2着のサトノルークスを輩出していて、繁殖牝馬としても優秀。このファミリーは3代母のBrigidから世界各国で広く繁栄していて、リッスンの枝はこれでも目立たない部類だ。
この牝系はなんといっても早熟性の高い馬が多いことが特徴。GⅠ級の馬たちは総じて2、3歳の頃からバリバリ走ってくる。そこから古馬になってから少し尻すぼみな成績になってしまうのもよくあるパターンで、主戦場は芝の中距離。パワーもあってタフな馬場も歓迎といったところだ。
本馬はルーラーシップから成長力を獲得できているかどうかだが、少なくとも現時点では論点に挙げなくてよいだろう。ストライドの大きい走り方をし、完成度も高くてスラットした中距離タイプ。ホープフルSより確実に条件は好転する。
キングズレインとオメガリッチマンを推奨
今回のコンプレックスアナライズではキングズレインとオメガリッチマンを推奨する。キングズレインは前走ホープフルSは大外追込みの競馬だったが、4コーナーで外に張られる不利があった。ラストの脚色を見ても間違いなく優勢で、不利がかなり痛かった。この馬がホープフルSで一番強い競馬をしていた。というのが私の評価だ。同馬がGⅠ馬でも最優秀2歳牡馬でもおかしくなかった。
またそれだけ強いにも関わらず収得賞金が少なく、このままでは皐月賞に出られない可能性が高い。陣営もただの前哨戦と捉えてはいないだろう。好走データも前走不利データも持っていて、血統から考えてもこの舞台は前走から好転。メンバーが楽になるここは断然人気でも逆らえない。
それで終わりではあまりにも物足りない記事になるので、相手としてオメガリッチマンを推奨する。オメガリッチマンも京成杯ではソールオリエンスが外に膨れ、内に戻ってきた時に若干進路が狭くなる不利があった。勝てたとは言わないが、少なくとも3着セブンマジシャンと同等以上の評価は与えるべきだ。
こちらも前走不利データ、好走データも持っていて血統も合っている。人気が予想されるノッキングポイントも割引材料はないが、前走不利データや血統からオメガリッチマンを上に取る。
余談だが、実はオメガリッチマンの3/4同血叔父にあたるレッドバルデス(父イスラボニータ×母オジャグワ)に私は出資している。大型な馬体を上手く使いこなせなかったり、臆病だったりで、現在未勝利でもがいている。しかし、同馬は21年にこの世を去ったオジャグワ最後の産駒。名牝オジャグワの名誉のためにも、オメガリッチマンには頑張ってほしい。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。現在はWEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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