【小倉記念】バランスのとれた緊張感ある流れ 5馬身差圧勝のマリアエレーナ、一躍秋の主役候補へ

SPAIA編集部

2022年小倉記念回顧,ⒸSPAIA

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マーメイドSの経験が活きたマリアエレーナ

2週間の中休みが入った小倉の芝は7月開催と変わらず高速状態。小倉記念も過去10年で4番目に速い1.57.4を記録した。前後半1000m58.9-58.5とその差が0.4しかない均衡のとれたラップであり、価値は高い。18年トリオンフが記録したレースレコード1.56.9は前後半1000m1.00.0-56.9の後傾ラップで、その後半1000mは11.7-11.7-11.1-10.9-11.5。今年は11.8-11.7-11.7-11.6-11.7。前半が速かった分ラップに大きな変化はないが、前半を考えると持続力は高い。

同じ高速決着でも瞬発力を問う流れと持続力を問う流れがある。トリオンフは前者で今年は後者。つまり好位から早めに動いて直線すんなり抜け出したマリアエレーナは持続力に長けている。これまで2回の重賞2着は、スローで時計を要する馬場だった愛知杯と、持続力を問い、かつ速い時計が出たマーメイドS。特に前走マーメイドSの後半1000mは12.0-11.8-11.6-11.7-11.8で決着時計は1.58.3だった。マリアエレーナは勝ったウインマイティーから0.3差。この経験が小倉記念では活きた。

マーメイドSの斤量は55キロで、今回は1キロ減の54キロ。自身のパフォーマンスが上がる要因だった。

エリザベス女王杯で期待

牡馬相手とはいえ、1番人気は牝馬のジェラルディーナ。3番人気は格上挑戦の5歳牝馬ムジカと対戦メンバーは強力とはいえない。逃げるシフルマンの背後、4、5番手のインを追走。前にいたタガノディアマンテやショウナンバルディが早めに下がるなか、内をさばいて一気に抜けてきた。4コーナーで2番手まで押し上げながら、上がり最速34.6を記録されては後ろは敵わない。

ここ数戦、一連の重賞で磨いてきた先行力と器用さ、持続力を爆発させた。ハンデ戦で2着に5馬身差は圧勝。力が違ったとしかいえない。前走でマリアエレーナを退けたウインマイティーと合わせ、この秋、阪神のエリザベス女王杯では注目したい。派手さはないが、混戦向きの粘り強さがある。

父、母、母の父、母の母、母の母の父、母の母の母はすべて金子真人氏の持ち馬。もはや珍しくもなんともないというのがスゴイところだ。母の母の母であるブロードアピール牝系はワグネリアンも出したが、晩成型が多いのも特徴。マリアエレーナはもっと強くなる。

東京で走りを見たいジェラルディーナ

2着は10番人気ヒンドゥタイムズ。去勢8カ月ぶりの競馬で穴を演出した。小倉は3歳夏の玄海特別2着以来の出走。当時の記録は1.58.8で、まくって4コーナー先頭という積極策だった。以後の好走は広いコースが多く、小倉では狙いにくかった。

今回はジェラルディーナを見る形で序盤からレースを進め、勝負所は下がってくる馬をさばく過程で進路を失う場面もあった。それでもジェラルディーナを内に押し込めつつ進路を外に切りかえて、先に仕掛けた分、ジェラルディーナに先着できた。流れに乗れる器用さはなさそうだが、4コーナーのさばきは見事。

チャクイウ・ホー騎手の手腕もあったが、馬自身も新味を見せた。さほど安定して走れないタイプだが、血統の印象より速い時計にも対応できる点は忘れないでおきたい。

3着はジェラルディーナ。前後半の差がない持続力勝負になり、3、4コーナーで下がって来る馬と上がっていく馬との間で進路を見つけるのに、時間を要した。結果、3コーナーで一旦順位を下げる形になったのは痛かった。

元々が鳴尾記念のように前半がスローで、後半どこかで瞬発力を試される流れが得意。小倉は昨夏連勝の舞台なので、こなせないことはないが、重賞となると、ベストとは言えない舞台であることがわかった。もっと広い中央場所で見直したい。母はジェンティルドンナ。デビューから14戦で未経験の東京で見てみたい。


2022年小倉記念レース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


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