リーグ屈指のDeNA外野陣で大田泰示が果たす大きな役割
林龍也
ⒸSPAIA
FA権取得から一転ノンテンダーの屈辱
2021年11月、日本ハムをノンテンダーとなった大田泰示。シーズン中に国内フリーエージェント(FA)権を取得してのオフだっただけに、本人にとっても周囲にとっても、まさに青天の霹靂だったことだろう。以降はその動向に注目が集まったが、12月にDeNAとの契約が発表され、新天地で今シーズンを迎えることとなった。
FA権を行使していれば、争奪戦になっていたかもしれない選手だが、悔しさいっぱいの移籍を経験。今シーズンへかける思いもひとしおだろう。そんな大田がDeNAで果たす役割について考えてみたい。
リーグ屈指の外野陣を誇るDeNAに自ら加入
昨シーズンのDeNAは、リーグ屈指の外野陣を形成していた。左翼の佐野恵太は2020年には首位打者、2021年には2年連続の打率3割をマーク。主将としてもチームを牽引する絶対的な存在だ。
中堅の桑原将志はレギュラーに返り咲き4年ぶりの規定打席到達、自身初の打率3割をマークしてリードオフマンに定着した。守備でもガッツ溢れるプレーで幾度もチームのピンチを救ってみせた。
右翼のタイラー・オースティンは、規定打席未到達ながら打率3割をマークし、28本塁打、74打点はチームトップ。攻守に全力プレーというスタイルから故障が多いものの、グラウンド内外での言動からチームメイトの信頼の厚い選手だ。
一見、DeNAに入っても外野手としての出番は少ないようにも見える。だが、大田は複数あったというオファーの中から、自らDeNAを選んで入団した。
レギュラーでなくても大田が果たす大きな役割
大田本人にとってはやはり、レギュラーを務めることが理想だろう。2019年には打率.289、20本塁打、79打点をマーク。2020年にはゴールデングラブ賞を受賞するなど、攻守に実績充分。
当時のようなパフォーマンスを発揮できれば、強力外野陣の中でもレギュラー争いをできるだけの実力はある。むしろ、守備面ではアドバンテージがあると言っても良いレベルだ。
とはいえ、佐野、桑原、オースティンが万全なら、レギュラーを取ることは簡単ではない。しかし、例えレギュラーでなくても、大田の果たす役割は大きい。これまでのDeNAは、レギュラークラスの選手は優勝チームと遜色ないレベルでも、選手層に大きな課題があったからだ。
故障などでレギュラーが離脱すると、一気に力が落ちてしまうのがDeNAというチームだった。神里和毅や細川成也といったポテンシャルのある外野手は多くいるが、「期待の若手」の域を出ていない。唯一、楠本泰史が代打で結果を残して今シーズンの開幕スタメンを手にしたが、続く選手がいないのが現状だ。
そこに実績のある大田が加入したことで、一気に選手層が厚くなった。パワフルな打撃はもちろん、緊迫した場面でも安心して守備に送り出せる大田の存在は、起用に幅を持たせてくれる。
外野の4番手を争っていた選手にとってはライバルとなり、レギュラー陣でさえも危機感を持つ存在。大田の加入は大きな刺激となっているはずだ。控えと言ってしまえばそれまでだが、強いチームというのは控えに良い選手がいるものだ。
チームとともに"反撃"のシーズンに
今春キャンプでは度々、若手選手とも積極的にコミュニケーションを図っている様子が報じられていた。若い選手が多いDeNAにあって、リーダーシップも発揮していることがうかがえる。生き生きとした表情で、充実したキャンプを送っていたようだ。
そんな大田だが、ここまではなかなか結果が出ずにいる。横浜スタジアムでのオープン戦初戦となった3月2日の広島戦、2番・左翼でスタメン出場すると第1打席でいきなり中前打をマーク。本拠地のファンに挨拶代わりの一打を披露した。
しかしその後は低空飛行を続け、15試合で打率.094、本塁打なし、1打点という結果に終わった。チームはオースティン、ソトという両助っ人を欠いた状態で開幕したが、オーダーに大田の名前はなかった。それどころか、開幕3連戦を終えて出番は初戦の代打のみ。2戦目、3戦目も代打が必要な場面はあったが、そこで選ばれたのは大田ではなかった。
チームは開幕3連敗スタート、大田も出場機会が得られず悔しい思いをしていることだろう(29日の試合ではスタメン出場)。しかし、シーズンはまだ始まったばかり。今シーズンのスローガン通り、"反撃"していくしかない。それは大田にとっても同じこと。一軍にいる限り、チャンスは必ず巡ってくる。そこでしっかりチームに貢献したい。
FA権を得ながらもノンテンダーという屈辱を味わい、そこから這い上がってきた大田。巨人から日本ハムへ移籍した際にも、計り知れない悔しさがあったことだろう。しかし、それを乗り越え、FA権を取得するまでになった。
今回もまた這い上がる姿を、チームに、そしてファンに、見せてほしい。東海大相模高時代のように、横浜スタジアムを熱狂の渦に包み込む活躍を、誰もが待ち望んでいる。
【関連記事】
・2022年DeNAの年俸ランキング、大幅増の牧秀悟が一気にランクイン
・DeNAと横浜F・マリノスが30周年記念コラボ、6月にスペシャルユニフォーム着用
・オープン戦とシーズン成績の相関関係、チームはほぼ無関係も個人は?
おすすめ記事