【大阪杯】エフフォーリアが出走する中距離頂上決戦の歴史 重賞1勝の名馬・ショウナンマイティ

緒方きしん

大阪杯過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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今年の中距離界を牽引するのはどの馬か

ドバイワールドカップデーは日本馬が出走した8レースのうち5レースで勝利。さらに2着3着も合計4頭いるなど、非常に充実した結果となった。パンサラッサの同着優勝、シャフリヤールのユビアー撃破、チュウワウィザードの2年連続好走、ステイフーリッシュのサウジ、ドバイ重賞連勝など日本のファンにとっては記録にも記憶にも残る1日になったのではないだろうか。

さて、今週は大阪杯。GⅠ昇格後6年目となる今年も、非常に魅力的なメンバーが集まった。昨年の年度代表馬エフフォーリア、そのエフフォーリアと同期ながら初対決となる逃げ馬ジャックドール、昨年の大阪杯でコントレイルらを撃破したレイパパレ、エリザベス女王杯でそのレイパパレを撃破したアカイイトなどが火花を散らす。

古くはスーパークリークやトウカイテイオー、メジロマックイーンが勝利。GⅠに昇格した2017年以降もキタサンブラックやスワーヴリチャード、ラッキーライラックといった名馬が勝利してきた一戦。今年の中距離戦線を占う上でも重要な一戦だ。今回は大阪杯の歴史を振り返る。

1番人気は苦戦傾向

大阪杯過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気は2勝。GⅠ昇格初年度だった2017年はキタサンブラックが、翌年はスワーヴリチャードが1番人気に応えたが、2019年以降は1番人気が3連敗を喫している。特に2019年にはブラストワンピースが6着と大きく敗れた。そのときの勝ち馬が、先日ドバイSCで勝利した日本ダービー馬シャフリヤールの全兄であるアルアイン(9番人気)だ。

GⅡ時代を含めても、実は多くの1番人気馬が敗れている大阪杯。もちろんレースの位置付けはGⅡ時代とは大きく変わったが、それを踏まえても、ここ10年における1番人気の勝利は上記の2勝に加えて2013年オルフェーヴルのみと、1番人気が苦戦する傾向は続いている。これまで、コントレイルやキズナ、エピファネイアらが1番人気に推されながら敗れてきた。

昨年はコントレイル、グランアレグリア、サリオスの三強が人気を集め、13頭中9番人気以降は単勝万馬券という状況だったが、その三強が3〜5着と敗北。1着は4番人気レイパパレ、2着は6番人気モズベッロの決着で、馬連は190.8倍となった。ただし馬連の万馬券は6番人気テイエムアンコール、9番人気ゴールデンダリアで決着した2010年の256.4倍以来で、1番人気が苦戦傾向とはいえ馬連が大荒れになるのはレアケースと言える。

GⅠ未勝利の実力馬、ショウナンマイティ

2012年の勝ち馬はショウナンマイティ。オルフェーヴルと同期の4歳馬が、アーネストリーやローズキングダム、フェデラリストやトーセンジョーダンといった強豪をまとめて差し切った。父のマンハッタンカフェは2009年にリーディングにもなった人気種牡馬で、前年のヒルノダムールに続き2年連続で大阪杯勝ち馬を輩出した。

ヒルノダムールは大阪杯勝利後に天皇賞(春)を制したが、大阪杯勝利後のショウナンマイティは2着3回3着3回などマイル〜中距離路線で現役屈指の活躍を収めたものの、未勝利のまま引退となった。2013年の安田記念ではロードカナロア相手に上がり最速でクビ差の2着、2014年の同レースではジャスタウェイ、グランプリボスに続く3着、2012年の宝塚記念ではオルフェーヴル、ルーラーシップに続く3着など、GⅠ馬に相応しい能力を示していただけに、あと一歩タイトルに届かなかったのが悔やまれる。

ショウナンマイティは2013年の大阪杯でオルフェーヴルの2着、2014年の大阪杯でキズナの5着になるなど好走したが、約一年半の長期休養明けで参戦したAJCCで左前繋靱帯不全断裂を発症し競走中止、引退した。その後、種牡馬として登録されたものの、手術後の静養中にこの世を去った。実力はありながらGⅠタイトルに手が届かず、血を残すことも叶わなかったショウナンマイティが唯一勝利した重賞として、印象に残る大阪杯のひとつと言える。

関東馬の勝利が見られるか?

ショウナンマイティが制した2012年の大阪杯の2着馬は美浦・田中剛厩舎のフェデラリスト。実は大阪杯ではこのフェデラリストの連対以降、関東勢による勝利、連対がない。最後に大阪杯を制した関東馬は1999年のサイレントハンター。それ以降、関東馬はこれまで55頭が出走し未勝利という状況が続いている。昨年もグランアレグリアやサリオス、クレッシェンドラヴと3頭の関東馬が出走したが、いずれも人気より下の着順でゴールしている。今年挑戦するエフフォーリアやヒシイグアス、ウインマリリンといった関東馬には嬉しくないデータになる。

また、こちらはあくまでジンクスではあるが、名前が「エ」から始まる馬はこれまでエピファネイアやエイシンフラッシュ、エアソミュールやエアシャカール、エイシンデピュティといった実力派が参戦するも2、3着止まり。「エ」から始まる馬としての勝ち馬は1998年エアグルーヴが最後。昨年の年度代表馬エフフォーリアは上記のデータやジンクスを跳ね返し、2022年の初戦を勝利で飾ることができるだろうか。

ショウナンマイティと熱戦を繰り広げた名馬たちも、種牡馬として多くの活躍馬を送り出す父となっている。大阪杯で激突したオルフェーヴルはヒュミドールを、キズナはアカイイト、ステラリアをそれぞれ今年の大阪杯に送り込む。ロードカナロア産駒もAJCCを制したキングオブコージらが出走する予定だ。彼らがどのような走りを見せてくれるのか、ショウナンマイティに思いを馳せながら観戦したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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