【中山記念】中山巧者ウインイクシード、好位の内で激走期待 穴馬は展開有利が予想される内枠ガロアクリーク

山崎エリカ

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内ラチ沿いで脚をタメられる馬が有利

2回中山開幕週に行われる中山記念は、1回中山開催で8日間使用されたCコースからAコースに変更される。このためグリーンベルトが発生し、馬場が高速化することが多い。つまり、内ラチ沿いで脚をタメられる馬が有利ということ。

また、中山芝1800mは最初の1角までの距離が約205mと短く、スタートしてすぐに急坂を上がって行くコースのため、前半のペースは遅くなることが多い。こうなると内枠の逃げ、先行馬を狙いたくなるが、そう簡単でもない。中山記念のような上級条件ともなると、前が後続にマクらせないように向正面の下り坂でスピードに乗せて動いて行くため、ラスト5F目からペースアップすることが大半。この早仕掛けがたたって前が失速し、外差しが決まることもある。

しかも、今回は逃げて素質が開花したパンサラッサ、コントラチェック、トーラスジェミニや前に行って持久力を生かしてこそのワールドリバイバルなど、逃げたい馬が揃ったメンバー構成。特にパンサラッサは昨年11月の福島記念をアメリカン競馬のようなペースで圧勝し、ここでは断トツの指数を記録。

パンサラッサは昨年のこのレースでは躓いて出遅れるアクシデントがあったが、そうでもならない限り、ハイペースは避けられそうもない。そうなれば差し馬優勢。特に前4頭から離れた好位の内(実質、中団)を追走できる昨年の2着馬ケイデンスコールのようなタイプの一発には注意したい。

能力値1~5位の紹介

中山記念出走馬のPP指数,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 カラテ】
連覇が期待された前走の東京新聞杯では3着敗退。しかし、前走は前回のこのコラムでも綴ったように、休養明け好走の反動によるもの。9番枠から外にヨレてエイシンチラーに接触したうえに二の脚も遅く、かなり押っつけながら中団馬群の中目にまで押し上げていく競馬になったために、前々走のニューイヤーSから指数をダウンさせた。しかし、最後までしぶとい粘りで、2着ファインルージュにクビ差まで迫ったのは、同馬の底力もあるが、トーラスジェミニが緩みないペースでレースメイクしたことと、展開に恵まれた面も大きい。

また、同馬は不良馬場の1勝クラスを勝利して以降、芝1600m戦のみを使われ、昨年の東京新聞杯や今年1月のニューイヤーSで勝利と結果を出してきた。しかし、時計の速い決着だと序盤で置かれることから、前半でゆったりとレースを運べる芝1800mは合うと見ている。距離も展開も最適条件だが、今回は11番枠。内有利の状況下で外々を回るリスクがある。

【能力値2位 ダノンザキッド】
新馬戦、東京スポーツ杯2歳S、ホープフルSを優勝し、2歳中距離王の座に君臨した馬。ホープフルS当日は外差し馬場で、内を通った馬と前に行った馬には厳しい流れ。好位の内でレースを進めたのが後の菊花賞の2着馬オーソクレースであり、その外から早めに前を捉えに動いたのが、後の菊花賞馬となるタイトルホルダー。ダノンザキッドはその2頭の外、好位の外でレースを進めての1着。馬場の良い外を走れてはいるが、厳しい流れを正攻法で優勝したのは褒められる。

皐月賞では15着とまさかのブービーに敗れたが、皐月賞は休養明けでハイレベルの弥生賞で3着と好走した反動もあったはず。また、向正面から3角途中までしつこく外からアサマノイタズラにぶつけられる不利もあった。そのアサマノイタズラ(後にセントライト記念を勝利)も最下位に敗れていることから、その激しさが窺い知れる。

それゆえにマイルCS・3着くらいは走れて当然と言えば当然だが、今回は前走で自己最高指数を記録した後の始動戦。先週のフェブラリーSのレッドルゼルやアルクトスのような結果に終わる要素はある。ただ、同世代が相手とはいえ、中距離戦では楽に好位につけられていたが、マイル戦では前の位置が取れない状況から、本質的にはマイルよりも長距離でこそだろう。今回もテンの速い馬が多数で中団からになる可能性が高いが、それゆえに展開に恵まれる可能性が高い。

【能力値3位 パンサラッサ】
タフな馬場で行われた昨年11月の福島記念では、8番枠から押してハナを主張し、内のディアンドルを制して逃げ、外から絡みに来るコントラチェックを寄せつけず、前半5F57秒3の極端なハイペースを展開。5番手以下の馬を大きく離しており、3角地点でも10馬身以上差があった。

3~4角ではコントラチェックに絡まれたが、4角ではコントラチェックが手応えを失って失速。パンサラッサも前半で消耗して減速していたが、他馬も苦しくなって同馬との差が広がり、ラストで外のヒュミドールらに差を詰められたものの、4馬身差のセーフティリードでゴールイン。

同馬が福島記念で記録した指数は、ここでも断トツのGⅠ優勝レベル。当時の指数で走れればここも圧勝だろう。しかし、今回は福島記念よりも距離が短いうえに高速馬場となると、昨年のように後手を踏まずに逃げたとしても、福島記念ほどのリードは奪えないだろう。ただパンサラッサが逃げた場合、福島記念の経験からコントラチェックを始めとする他馬は、無暗に競ってはいかないはず。楽々と逃げ切るパターンもありそうだ。

【能力値4位 アドマイヤハダル】
皐月賞トライアルの若葉Sを、好位の外からあっさりと突き抜けて3馬身差で楽勝すると、次走の皐月賞でも4着に善戦した馬。皐月賞ではエフフォーリアには突き放されたが、1番枠から同馬の後ろの、中団よりやや前の位置でレースを進め、4角で馬場の良い外に出して2着タイトルボルダーとクビ2つ差の4着。皐月賞当日がタフな馬場で前に厳しい流れだったとはいえ、4角まで馬場の悪い内を通ったことを考えれば上々の内容だった。

また、同馬は長期休養明け2戦目の前走・白富士Sでは、4歳馬らしい成長を見せて2着と好走。このレースは先週のダイヤモンドSで2着と好走したランフォザローゼスが中団よりやや前から好位まで上がったことで、ラスト3F目が最速の仕掛けの速いレースになっているが、同馬はそれをやり過ごして好位よりもやや後ろの内々で脚をため、仕掛けをワンテンポ遅らせたことも好走要因だろう。アドマイヤハダルは差し馬だけに展開に恵まれる可能性が高いが、カラテよりもひとつ外枠。前走から更なる上昇度がないと相手強化のここではやや厳しい。

【能力値5位 ウインイクシード】
2020年の中山金杯で2着、2021年は同3着、中山記念3着と好走した中山巧者。昨年のこのレースでは13番枠から押して先行争いで2番手を死守し、そのまま内目の枠から先頭に立ったバビットに競りかけていく形。昨年はこの時期の中山開催としてはかなりの高速馬場ではあったが、前半4F46秒3までベースが上がった中で3着に粘った。バビットに競りかけずにスローペースの2番手、3番手でレースを進められれば勝ち負けまであったような内容だった。

その後がやや物足りない内容だが、不良馬場で超絶ハイペースとなった5走前の福島民法杯以外は致命的に負けてもいない。休養明けの前走・中山金杯は16番枠からトップスタートを切りながらも中団の外までしか上がって行けず、終始外々を追走していく競馬になったわりには、2着のスカーフェイスとは0.1秒差の6着と上々だった。

今回はひと叩きされての調教強化で状態面の上積みが見込める。さらに今回は昨年の中山記念と同じ7番枠。昨年は逃げた馬が状態面に不安のあったバビットだったために競り掛けに行ったが、今年は手強く順調な面々が前の位置を取っていく形だけに、競り合いに加わっていかない公算が高い。昨年のケイデンスコールのような位置でレースを進められれば、相手強化を加味しても馬券圏内に加われると見ている。

【能力値5位 ヒュミドール】
一昨年の夏から芝路線に転向して、着実に軌道に乗った馬。昨年はローカル重賞の小倉記念と福島記念で2着に好走しているが、ともに差し馬有利の展開に恵まれたもの。小倉記念は5F通過61秒4とそこまで速くもないが、5F通過63秒2の同日の10レース・博多Sで行った、行ったが決まった影響で、3角外からファルコニアやヴェロックスが前にプレッシャーをかけに行って、一気にペースが速くなり、前が失速している。福島記念はここで説明するまでもなく、パンサラッサの仕業である。

今回もパンサラッサが出走しており、展開に恵まれる可能性が高いが、前走の福島記念で、3走前の小倉記念と並ぶ自己最高指数タイを記録した後の一戦。前々走の京都大賞典は距離が長かった面もあるが、その時のような凡退があっても不思議ない。また、今回は前走時よりも相手が強化されるだけに、ここは軽視したい。

穴馬は展開と内枠に恵まれる公算が高いガロアクリーク

ガロアクリークは一昨年のスプリングSの優勝馬で、皐月賞、セントライト記念でも、ともに3着と好走している中山巧者。一昨年のスプリングSは超絶スローペースとなった中、中団外目から鋭い末脚でヴェルトライゼンデを撃破して優勝。一方、セントライト記念では速い流れを積極的な先行策で2列目、道中は3列目の競馬で3着と、幅広い競馬に対応して結果を出している。

4走前の菊花賞では9着大敗したものの、休養明けのセントライト記念で好走した後の疲れ残りの一戦で、距離延長で勝ちに行く競馬が堪えたもの。また、長期休養明けの前走エプソムCではで馬体重10Kg増が示すように太目だった。今回はそこから立て直されての一戦。変われても不思議ないし、今回は皐月賞時のように前がペースを引き上げて行く展開も同馬にとって好ましい。また、内目の枠でもあるだけに一考したい。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)カラテの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。



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