トップはヴァーミリアンの10億8056万円! 競走馬の国内ダート戦獲得賞金ランキング
高橋楓
ⒸSPAIA
10億円超え3頭! 上位2頭の差はわずか186万円!
1995年6月13日。舞台は川崎競馬場。同年から中央競馬と地方競馬の交流が盛んに行われるようになり、この日はエンプレス杯が行われた。
勝ち馬はホクトベガ。当時は芝もダートも牝馬路線が整備されておらず、牡馬との混合戦とGⅠホースゆえのハンデや賞金別定戦の斤量で苦しんでいた本馬にとって、新境地が拓かれた一戦だった。
2着に3.6秒もの大差をつけた伝説のレースを披露し、翌年はダート路線で8戦8勝。川崎、船橋、高崎、大井、盛岡、浦和。彼女が走る競馬場は人がごった返した。記録の上ではGⅠを1勝、中央重賞4勝に留まっているが、1990年代を彩るトップホースだった。
さて、今回は国内のダート戦における歴代総賞金ランキングを調べていく。
2022年2月18日時点で国内ダート戦における総賞金ランキングは下記の様になる。なお成績は中央競馬、地方競馬の成績と5着内賞金で計算している。
1位 ヴァーミリアン 10億8056万(24戦13勝・2002年うまれ)
2位 ホッコータルマエ 10億7870万(36戦17勝・2009年うまれ)
3位 エスポワールシチー 10億1189万(32戦16勝・2005年うまれ)
4位 コパノリッキー 9億9514万(33戦16勝・2010年うまれ)
5位 タイムパラドックス 9億7786万(49戦16勝・1998年うまれ)
ランキングにするとこうなった。非常に僅差で上位5頭が約1億円差に収まり、上位2頭はわずか「186万円」しか差が無い程。では1頭ずつ回顧していく。
7年連続重賞Vの大偉業! 1位「ヴァーミリアン」
トップは「ヴァーミリアン」の24戦13勝で獲得総賞金は「10億8056万」。
中央競馬 11戦3勝 3億3456万
地方競馬 13戦10勝 7億4600万
父はエルコンドルパサーで、母は最終的に産駒達が重賞21勝をあげる事になる名牝スカーレットレディ。デビューから神戸新聞杯まではラジオたんぱ杯2歳S制覇を含め芝のレースを走っていた。しかし、兄サカラートがダート路線で頭角を現しつつあった事もあり、弟も続いてダートに転向。それが大きな転機となった。
エニフS、浦和記念と連勝すると、翌年にはダイオライト記念、名古屋グランプリを制覇。2007年1月に川崎記念を圧勝した以降は中央、地方、そしてドバイと、引退する2010年12月のジャパンカップダートまで19戦連続でGⅠ、JpnⅠのレースを走り続けた“無事是名馬”だった。その間にもJBCクラシック3連覇や、2007年にJBCクラシック、ジャパンカップダート、東京大賞典という史上初の秋ダート三冠を達成するなど輝かしい記録を残し続けた。
日本競馬初のGⅠ&JpnⅠを10勝! 2位「ホッコータルマエ」
第2位はヴァーミリアンとわずか186万円差だった「ホッコータルマエ」の「10億7870万」となった。
中央競馬 17戦6勝 3億5105万
地方競馬 19戦11勝 7億2765万
2010年の北海道セレクションセール1歳にて1500万円で落札され、デビューから一貫して砂のうえを走り続けた本馬。デビュー戦は16頭立てのなか単勝107.7倍の11番人気だった。
2戦目を単勝49.1倍で勝ち上がると春には単勝10.1倍で2勝目、日本ダービー翌週の2012年6月3日には単勝3.1倍で3勝目と着実に力をつけ、秋にはレパードSを制しジャパンカップダートではニホンピロアワーズの3着と善戦した。
覚醒したのは翌年で、佐賀記念、名古屋大賞典を圧勝するとアンタレスS、かしわ記念、帝王賞と破竹の5連勝を果たす。また、この2013年5月のかしわ記念から引退する2016年11月のJBCクラシックまで23戦連続でGⅠ、JpnⅠのレースを走り続けた。
その間にあげた勝利数は史上2頭目の川崎記念3連覇を含む10勝。グレープブランデー、ニホンピロアワーズ、エスポワールシチー、ワンダーアキュート、ベルシャザール、コパノリッキー、クリソライト、サンビスタ、サウンドトゥルー、アウォーディーなど、常に強豪と戦い続けた姿は正に横綱といえよう。
クラブへ希望を届けた名馬! 3位「エスポワールシチー」
第3位は「エスポワールシチー」で「10億1189万」。
中央競馬 18戦8勝 5億2204万
地方競馬 14戦8勝 4億8985万
父がゴールドアリュール、母父がブライアンズタイムの血統で友駿ホースクラブにて一口2.4万円、総額1200万円で募集された本馬。デビュー以降7戦は芝のレースを走り、ダートに舞台を移してからは一気に4連勝。2009年は平安S2着、フェブラリーS4着。マーチS1着以降は強豪たちとの激戦を勝ち続けた。
かしわ記念でカネヒキリ、南部杯でサクセスブロッケン、ジャパンカップダートでヴァーミリアンやシルクメビウス、年が変わってからもフェブラリーSで再びサクセスブロッケン、テスタマッタを撃破。連覇を目指したかしわ記念ではフリオーソなどのライバルに対し、単勝1.1倍の圧倒的な期待を集めそれに応えた。
その後も中央、地方、米国などを転戦しGⅠ、JpnⅠを9勝。クラブにとって忘れられない1頭となった。
史上最多のGⅠ&JpnⅠを11勝! 4位「コパノリッキー」
第4位は2017年の引退レースにて史上最多11勝目のGⅠ&JpnⅠ制覇を達成した「コパノリッキー」で「9億9514万」。
中央競馬 16戦6勝 3億824万
地方競馬 17戦10勝 6億8690万
やはりこの馬で忘れられないのは2014年、GⅠ初制覇を果たしたフェブラリーSである。それまで8戦4勝で重賞の兵庫CSを制覇しているとはいえ、近2走のオープン特別で10着、9着。抽選でなんとか出走できた身であり相手関係を考えてもとても馬券には組み込めなかった。
単勝オッズも272.1倍の16頭中最低の16番人気。それがどうだろう。レースがはじまってみると2番手をしっかり追走し、直線ではあっさり抜け出し、鞍上の田辺裕信騎手と共にGⅠ初制覇を成し遂げた。
当時、最低人気の馬がGⅠを制したのは4例目。サンドピアリスに続くGⅠ史上第2位の単勝払い戻しを演出した。翌年には2.1倍の1番人気で参戦、フェブラリーS史上初の連覇を達成する。1番人気と最低人気でGⅠを連覇する馬は今後現れるだろうか。
晩成馬の輝き! 5位「タイムパラドックス」
第5位は「タイムパラドックス」で「9億7786万」。
中央競馬 4億3791万
地方競馬 5億3995万
「黄、黒縦縞、袖青一本輪」の社台レースホースの勝負服が本当に似合っていた1頭だと思っている。募集額は約79頭中43位の一口70万円、総額2800万円。デビューが遅れ、クラシックの足音が聴こえる3歳3月にやっとデビューを果たした本馬。
ダートで2連勝を飾り、日本ダービーを夢みて出走した青葉賞では11着惨敗。その後、体質の弱さもありながら着実に力をつけ、6歳を迎えた2004年の平安Sで初重賞制覇を果たす。そして、これを機に晩成だった血が開花する。
5歳まで芝のレースも含め20戦7勝だった本馬が、6歳から8歳の暮れまで走り続け30戦9勝。なるほど。50回もこの馬とあの勝負服の組み合わせを見続けてきたのかと、ふと感慨深くなった。上位4頭と比べると重賞戦線での連勝が無く、実績はやや劣るかもしれないが、紛れもなくダート界を支え続けた名馬だった。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。
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