【クイーンC】ベルクレスタ3着から見えてくる、プレサージュリフト、スターズオンアースの評価

勝木淳

2022年クイーンCのレース展開,ⒸSPAIA

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比較しやすい桜花賞路線

牡馬クラシックロードは昨年、皐月賞が前走共同通信杯、日本ダービーが前走毎日杯を勝った馬がそれぞれ勝利、トライアルから本番という主要ローテだった馬は振るわなかった。この路線は年々、レース選択が多様になり、複雑になりつつある。

その一方で桜花賞路線はシンプル。起点は同舞台の阪神JF。ここに出走した組が春も中心、各トライアルレースのレベルも阪神JFをものさしに測ることができ、横の比較はつきやすくなった。牝馬特有の危うさといった目に見えないものさえ顕在化しなければ、そこまで大波乱はなさそうだ。

今年のクイーンCは阪神JF6着ベルクレスタ、8着スタティスティクスが出走。掲示板以内の上位着順馬ではないので、ハイレベルとはいいがたいものの、ベルクレスタは同舞台アルテミスSでサークルオブライフとタイム差なしの実力馬、これはものさしになる。

明暗わけた道中の位置取り

大外枠のスマイルアップが押しながら先手を主張、外枠からハナに行ったことで序盤こそ流れたが、競りかけるライバルはいない。桜花賞へ向け、東京マイルで無謀な競馬はしたくないといった心理も影響、序盤400mまでは12.3-10.9、そこから12.1-12.2とペースは落ち、前半800m通過47.5は馬場状態を考えるとスローペース。1番人気2着スターズオンアースは先行集団の後ろ中団馬群のなか。流れに合った位置取りだった。

勝った2番人気プレサージュリフトはゲートに驚き、後手。後ろから3番手付近追走と流れに逆らった形で進み、3着ベルクレスタもゲートを伸びあがり気味に出たため、無理せず控える競馬を選択、プレサージュリフトより前のインに潜る。

東京マイルはスローペースであっても、下級条件も差しが決まる。展開を味方につけ、先行して押し切るのは難しい。このレースも残り600m11.5-11.3-11.6と瞬時の加速と持続力を求められ、先行勢は最後の400~200m11.3で苦しくなった。

見所あった1~3着馬

プレサージュリフトは後方から終始、外を通る大味な競馬であっても、末脚をフルに発揮したことが大きい。先行勢が苦しいとはいえ、前半はスローペース。一団で進み、馬群は密集状態、最後の最後は苦しくなっても、途中までは先行勢も踏ん張る。つまり、後ろから進む馬にとっては直線の進路が極めてタイトになる。ライバルが抜け出すために手間取った分、プレサージュリフトは上がり33.5の決め手を繰り出し、差し切った。

2着スターズオンアースは理想的なレース運びも、最後の直線では進路がなく、待たされた。結果的にこの間、外から来たプレサージュリフトに差を詰められてしまった。残り400m標識通過後、5着モズゴールドバレルが抜け出して生まれた狭いスペースを割ってきた。3歳牝馬には難しい競馬だったが、しっかり抜けてきた。その勝負根性は評価したい。

3着ベルクレスタは2歳秋に見せていた先行できる器用さがゲートで遅れて、消される形。内枠だったので馬群に潜り、4コーナーでは一旦最後方まで下げざるを得ないという大ピンチ。それでも最後は狭いところを周囲の馬を弾きながら力強く伸びた。前半の攻防を考えれば、3着は立派。やはり力はある。

春へ向けて、さらに力をつけたい上位3頭

さあベルクレスタ3着をどう評価するか。先着したプレサージュリフト0.2差、スターズオンアース0.1差、ベルクレスタを基準に考えると、阪神JF組とはどのぐらい差があるか。まず、大外を通ったプレサージュリフトと追い出しを待たされたスターズオンアースは互角と考えたい。プレサージュリフトの決め手を評価しつつも、キャリア1戦で大味な競馬になったことも味方したのは事実。ここはあくまで互角。

基準のベルクレスタは阪神JFでサークルオブライフに0.6差。同馬は今回、しっかり3着まで来たので、やはり今年も阪神JF組は最有力だろう。これが凡走すると、レースレベルに疑問符がつくが、それはなくなった。

ではベルクレスタに先着した2頭はどうか。同馬がまったく違う競馬をしたので、比較は難しいが、それでも3着。先着2頭はベルクレスタと同等かそれより少し上とひとまず評価したい。しかし、サークルオブライフを凌ぐとまでは言えない。同馬は2歳秋アルテミスSではもたつきながら上がり33.5。プレサージュリフト、スターズオンアースは春に向けてさらに力をつけたい。

2022年クイーンCのレース展開図,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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