【中日新聞杯】3連単236万円の大波乱決着! 要因は絶妙なペースと抜群のタイミングでの仕掛け

勝木淳

2021年中日新聞杯のレース展開,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

勾配を利用した自然なペースチェンジ

今年、牝馬限定の愛知杯を除く、中京芝2000m古馬重賞は金鯱賞、鳴尾記念に続き中日新聞杯も逃げ切り勝ち。8番人気ショウナンバルディは鳴尾記念では逃げたユニコーンライオンをマークし、2着。当時の時計は2.01.3、前後半1000m1.02.9-57.8。中日新聞杯の勝ち時計は1.59.8、前後半1.01.1-58.7、前半は1.8早く、後半は0.9遅い、前半のペース配分も絶妙、後半仕掛けるタイミングもバッチリだった。これがJRA重賞100勝目の岩田康誠騎手にしてやられたレースだった。

逃げ馬不在、最内アイスバブルに先行意識は薄く、行こうと思えばショウナンバルディは楽に行けた。発馬直後から競りかける馬もおらず、さして仕掛けることなく先頭へ。伏兵アフリカンゴールドが仕掛けるも、こちらは番手狙い。正面スタンド前でマイペース確定だった。

中京芝2000mはスタンドからみて右側、レース序盤がのぼり、左半分、残り1000m付近から徐々にくだりに転じ、最後の急坂を迎えるというレイアウト。ペースが遅くても前半から動きにくい。たとえ金縛り状態を意識したとしても、のぼりで動いては急坂に阻まれる。前半1000m12.6-11.1-12.8-12.5-12.1、極端にペースダウンせずに引っ張ったことで、後続はもう動けない。

くだりに転じる残り1000m標識通過後から11.9-11.8-11.1-11.3-12.6。緩急自在、緩やかなくだりを見事に利用した。残り600m付近で番手にいたアフリカンゴールドが仕掛けてくれたこともよかった。ショウナンバルディは外から馬が来たことに反応、じつに自然とペースをあげた。その後ろの組は残り600~400m11.1でついていけず、1、2着馬より手応えが悪化し、ここで勝負あった。好位より後ろにいた組は33秒台の脚を要求されてしまい、物理的に難しかった。中京芝2000m、GⅢレベルでは33秒台の脚はそうは使えない。

2着アフリカンゴールド、激走の要因

鳴尾記念を勝ったユニコーンライオンはその後宝塚記念2着、スローとはいえ、後半1000m57.8は決して恵まれた記録ではなかった。そこについていったショウナンバルディもまたしかり。七夕賞3着、小倉記念5着、新潟記念14着とサマーシリーズで着順を落とし、今回と同舞台のオープン8着、この近況では8番人気も仕方なしだが、立て直した以上、鳴尾記念を思い出すべきだったか。

今後も舞台や展開など合わない条件で走れなくても、ハマれば一変する。買い時が難しいが、芝2000mで先行勢が手薄なら、チャンスはある。また岩田康誠騎手は年明けの京都金杯12番人気ケイデンスコール1着、鳴尾記念5番人気ブラストワンピース3着など今年、重賞で1枠だと【2-0-1-0】、18年以降だと【2-3-2-11】勝率11.1%、複勝率38.9%。これも覚えておくと使えそうだ。

2着アメリカンゴールドは17番人気で波乱の立役者に。今回は思い切った先行策が実った。また残り600mで積極的にショウナンバルディを捕らえに動き、結果的に後続を封じた。ショウナンバルディをアシストした形になったが、自身も残るためには最善策。早めに動いていかなければ残れなかっただろう。最終世代のステイゴールド産駒、今年は新潟記念を勝ったマイネルファンロンとともにその意地を見せた。

復調気配のシゲルピンクダイヤ

3着シゲルピンクダイヤは昨年2着馬。必ずしも2000mがベストではないだけに健闘した。最近はスローペースを好位で流れに乗り、最後にひと脚使えずという競馬が続いていたが、今回はスローでも最後に伸びた。1月の愛知杯で猛ペースを追走したダメージが大きかった印象だが、ここにきてようやく復調気配。来年の愛知杯がスローになるようなら、狙ってみたい。

4着は昨年の勝ち馬ボッケリーニ。昨年は前後半1000m1.01.5-58.6と今年と似たような流れ。中団から上がり最速33.5で鋭く伸びたが、今年はトップハンデ57.5キロを背負った分、そこまで脚を使えなかった。GⅢのハンデ戦だともう斤量を背負わされてしまうので、これからは定量のGⅡなどもう一段高いレベルでの戦いに挑むことになる。そのためにワンステップ強くなれるかどうか。見極めたい。

5着キングオブコージは外枠で馬場の外目を通らされた点も痛かったが、勝負所での手応えのわりに最後は伸びなかった。2000mは短いのではないか。

2021年中日新聞杯のレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。

《関連記事》
【朝日杯FS】セリフォス当確も、ほかは大混戦! ポイントはジオグリフの取捨と前走条件戦組にあり
【ターコイズS】傾向が掴みづらく超難解! 波乱の使者は偉大なる女王の後輩サンクテュエール
【注目2歳馬】暮れのG1も狙える逸材 ハイレベルの一戦を制したセリフォスを評価すべきポイントとは

おすすめ記事