【札幌2歳S】リューベックは危険な人気馬か? 「関西馬」「乗り替わり」「前走逃げ」の三重苦

SPAIA編集部

2021年札幌2歳Sに関するデータ,ⒸSPAIA

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「出世レース」の面目躍如

早いもので夏競馬もいよいよ最終週、グランドフィナーレを迎える。特に夏しか開催のない札幌はこれが2021年のラストウィーク。トリを飾る重賞が札幌2歳Sだ。

歴代の勝ち馬にはジャングルポケット、アドマイヤムーン、ロジユニヴァースといった面々が名を連ねる「出世レース」だが、12年2着ゴールドシップ、14年3着レッツゴードンキの頃を最後にしばらくは大物不在。しかし昨年はそのうっぷんを晴らすかのように、1着馬ソダシがGⅠを2勝、2着馬ユーバーレーベンがオークスを制覇。久々にクラシック戦線で大きな存在感を示した。

そんな札幌2歳S、今年はそのソダシと同馬主、同厩舎のリューベックなど評判馬が多く参戦予定。過去10年のデータを見ながら占ってみよう。(函館開催の13年も含む)

関西馬、過剰人気説?

札幌2歳Sの人気別成績,ⒸSPAIA



さっそく人気別成績から。1番人気【2-2-2-4】は可もなく不可もなく。上位5頭あたりまではオッズほどの実力差がないようで、必然的に5番人気【3-1-1-5】の回収率が高くなっている。単勝オッズで見てみると2.9倍以下の支持を集めた馬が【1-1-2-3】。安定感はそれなりだが、アタマで固定するには頼りない。

札幌2歳Sの所属別成績,ⒸSPAIA



続いて所属別。美浦【5-5-4-49】、複勝率22.2%と栗東【4-4-5-53】、複勝率19.7%は一見して大きな違いはない。ところが、回収率で見ると美浦の単120%、複92%に対して栗東は単25%、複42%とかなり劣る。関西馬の好走はほとんどが人気馬。いわゆる「評判馬」が栗東に集中する状況を反映してか、やや過剰人気になる傾向がある。

ホッカイドウ競馬からの7頭にあたる地方【1-1-1-4】は複勝率42.9%で単複ともに回収率100%超。ただ、今年は登録がなかった。

札幌2歳Sの前走場所別成績,ⒸSPAIA



次に前走のコースについてデータを見る。というのも、同じく北海道で行われる2歳重賞・函館2歳Sの方には、前走が本州だと壊滅的、という有名なデータがあるから。こちらではどうなっているだろうか。

勝利数のトップは前走函館組の4勝だが、複勝率で比較すると札幌21.9%、函館22.9%とほぼ互角。本州は福島16.7%、新潟16.7%。サンプル不足だが阪神は5戦1勝、勝率20.0%だ。同じくサンプルは少ないが、東京組は【1-1-0-2】と好走馬が出ている。

函館2歳Sとは違い、コース経験の差はそれほど問題ではないようで、むしろレースレベルの高くなりやすい6月東京を使ってきた馬は評価対象になる。

札幌2歳Sの前走距離別成績,ⒸSPAIA



これは前走距離についても同じ。さすがに前走1200m組は【0-0-0-9】だが、1500m、1600m、1800mは複勝率ベースだと大差なし。異なる条件から来る組も十分に戦えている。

リューベックの取捨

札幌2歳Sの乗り替わり有無別成績,ⒸSPAIA



気になるデータをあと2つだけ。まずは乗り替わりの有無別成績。前走と同じ騎手が乗った馬が10年で9勝。連対率では同騎手17.6%に対し、乗り替わり9.8%と差が開く。ちなみに、「乗り替わり」かつ「6番人気以下」は【0-0-1-31】だった。

クラシックに挑む「相棒」を各騎手探している中のレースだけに、それまでの主戦に選ばれなかった、という点で期待度が一枚下がるのだろうか。今年の場合はリューベックが乗り替わり。吉田隼人騎手の騎乗停止というやむを得ない事情なので例外の可能性もあるが、データ上は今ひとつだ。

札幌2歳Sの前走脚質別成績,ⒸSPAIA



最後に前走脚質別。ここで気を付けたいのは前走で逃げる競馬をしていた馬。【1-2-2-25】、勝率3.3%、複勝率16.7%。この組はとにかく人気馬がよく飛ぶ。14年ミッキーユニバース(1番人気7着)、16年タガノアシュラ(1番人気8着)、18年ウィクトーリア(2番人気7着)、19年ゴルコンダ(1番人気6着)。昨年はバスラットレオンが1番人気で3着だった。

今年でいえばリューベックに加え、函館の新馬戦を逃げて楽勝したトップキャストあたりも人気になりそうだが、これは疑ってかかった方がよいのではないかと思っている。

狙いやすいのは8勝、2着7回の「前走先行」。出走数自体も多いが、勝率や連対率で見てもトップに立っている。好位につけて直線で脚を伸ばす、基本の競馬を経験してきた馬に軍配が上がる。

まとめ

札幌2歳Sで狙えるパターンは「5番人気」「美浦所属」「前走東京」「前走と同騎手」「前走で先行」、反対に成績が悪いのは「乗り替わり」「前走で逃げ」となる。

関東馬で、東京の新馬戦を先行して勝ち上がったジオグリフが筆頭候補か。ルメール騎手が継続騎乗する想定で、データ上はほぼ完璧。初戦があまりにも瞬発力偏重のラップ構成だったのは気になるが、まずはここを推しておきたい。

並んで人気を集めそうなリューベックだが、対照的に「乗り替わり」「前走で逃げ」のマイナスデータ2点と、回収率の低い「栗東所属」に該当。前走も上がり3Fは2着馬とタイの35.1秒とそれほど目立たず、危険な人気馬になりそうな予感がする。

2021年札幌2歳Sのデータ,ⒸSPAIA



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