【函館2歳S】やっぱり素質馬を評価すべし!  2歳一番星にもっとも近いカイカノキセキ

勝木淳

函館2歳Sインフォグラフィック,ⒸSPAIA

上位人気堅実、関西馬優勢

JRA2歳重賞戦線は、この函館2歳Sからスタートする。早期から大物感ある馬がデビューするようになり、このレースもかつてほど単なる早熟馬による争いではなくなりつつある。

19年1着ビアンフェはその後も短距離重賞戦線を走り、今年、函館スプリントSで重賞3勝目をあげた。15年1着ブランボヌールは阪神JF3着、翌年キーンランドCを勝利と、函館2歳Sは古馬になってからも短距離戦線で活躍できる馬を輩出、ここを勝ってそれっきりというパターンは近年減りつつある。今年もここに出走する馬から、早期に活躍でき、かつその後も成長できる馬があらわれるのではなかろうか。ここでは過去10年のデータをもとに好走パターンを考えてみる。


過去10年函館2歳S人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-1-0-6】勝率30%、複勝率40%を含め、4番人気以内は【9-4-6-21】と比較的平穏。キャリアが浅いため、直接対決が少なく、能力比較をしにくいレースの割に事前のジャッジは正確。馬券を買う側も情報が少ないからこそ、シンプルに組み立てる。これが功を奏しているようだ。つまり、あまり考えすぎないというのが馬券戦略上、的中への近道であるということを示唆しているのではないか。5~9番人気【0-4-1-45】に対して10番人気以下は【1-2-3-58】。買い材料がある怪しい穴人気を買うぐらいなら、大穴候補を連下に忍ばせるべきか。


過去10年函館2歳S馬体重別成績,ⒸSPAIA


デビュー間もない2歳馬同士の短距離戦、それも滞在競馬の北海道で行われるレースとあって、馬体重が小さい馬も通用する。420~438キロは【4-1-4-24】勝率12.1%、複勝率27.3%と少ない頭数から好走が出ている。ただ、さらに小さい400~418キロは【0-0-0-8】と好走がない。今年の登録馬は比較的大きい馬が多く、馬体重で好走凡走の判断はできないが、小さい馬ポメランチェ、リトスあたりは凡走ゾーンにかかる可能性があるので注意したい。一方で小さい馬が多い牝馬はこのレース【5-5-4-62】で牡馬と互角。夏の短距離戦は牝馬が強い傾向にあるが、このレースは互角と覚えておこう。


過去10年函館2歳S東西別成績,ⒸSPAIA


移動の有利不利、調教施設の違いが少ない北海道シリーズでは、函館記念のように東西別成績が互角というレースもあるが、このレースは取り扱いに注意が必要。関東馬【2-7-4-60】勝率2.7%、複勝率17.8%、関西馬【8-3-6-44】勝率13.1%、複勝率27.9%。関東馬も2勝2着7回なので苦戦とまではいかないものの、勝率は関西馬が断然優勢。1着関西馬、2着関東馬、3着どちらもといった決め打ちもおもしろい。札幌芝の新馬戦を勝った有力馬カイカノキセキは関西馬。1着候補はこのあたりだろうか。


着差をつけて勝つか、接戦を制するか

次に前走成績の傾向からさらに好走ゾーンに入る馬を絞ってみたい。


過去10年函館2歳S前走クラス別成績,ⒸSPAIA


11年までは前哨戦のラベンダー賞があり、オープン経由という馬もいたが、北海道シリーズの日程変更により消滅。もっぱら新馬、未勝利組によるレースとなった。当然ながら価値が高い新馬は【8-7-8-75】勝率8.2%、複勝率23.5%で好走率が高い。未勝利組は【2-3-1-28】勝率5.9%、複勝率17.6%と一段さがる。といっても好走がないわけではないので、気をつけたいところ。札幌芝1200mの未勝利戦を0.6秒差つけて快勝したリトスは、馬体重データこそ気になるものの、新馬勝ちした馬との差はそうはなさそうだ。


過去10年函館2歳S前走距離別成績,ⒸSPAIA


前走距離別成績をみると、同距離の1200mが【8-7-9-86】と優勢。となると、札幌芝1000mの新馬戦を勝利したカイカノキセキは不利にみえるが、前走が1000mだった馬は【2-1-0-29】で否定できない。20年10番人気1着リンゴアメが記憶に新しいところだ。


過去10年函館2歳S前走着差別成績,ⒸSPAIA


勝率という意味では前走着差別成績にも注目したい。前走で0.3差以上つけて勝った馬は【6-6-3-44】と勝率が高まる傾向がある。前走が短距離だった馬が大勢を占めるなかで、着差をきっちりつける、いわゆる強い勝ち方をした馬が重賞も突破するとみるべきだろう。カイカノキセキやポメランチェ、リトスらはここをクリア。

メリトクラシーは前走0.2差で勝利、前走0.1~0.2差で勝利した馬は【1-3-3-48】勝率1.8%とやや確率はダウンする。一方で接戦を制した馬、前走タイム差なしは【3-1-3-27】勝率8.8%と上昇傾向。2着を離して勝つ性能の高さか、競り合いをギリギリで勝つ勝負強さが必要になる。後者に該当するトーセンサンダーは、着差がなかったからと軽視しない方がよさそうだ。


過去10年函館2歳S前走場所別成績,ⒸSPAIA


最後にある程度予測通りだが、前走競馬場別の成績を函館とそれ以外でわけると、函館が【10-9-7-84】、それ以外【0-1-3-40】。今年度は変則開催とあってデータのない前走札幌組が出走してくるが、滞在の優位は変わらないだろう。重賞を狙って本州から北海道に移動してくる馬は冴えないので、早めに函館に移動したメリトクラシーは着差データと合わせて評価を下げてもよさそうだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


函館2歳Sインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



《関連記事》
デアリングタクト、コントレイルも敗戦の春競馬 「雨の日の競馬は荒れる」は本当なのか
上手な付き合い方のコツは?ルメール騎手の「買える、買えない条件」
「関東馬の復権」「G1のルメール・川田・福永理論」 2021年上半期のG1をデータで振り返る

おすすめ記事