【安田記念】毎年安定した勝ち時計と平均ペース インディチャンプとグランアレグリアは堅軸

佐藤永記

2021年安田記念に関するデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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毎年変わらぬペースと勝ち時計に

ダービーが終わり春のG1シリーズも終盤へと差し掛かったタイミングのG1といえば安田記念。新馬戦が始まる「中央競馬の正月」とも言える切り替わりでもある時期だ。切り替わりといえば東京の芝コースが例年、前週からCコースに替わる。そのためか、連続開催の後半でも馬場コンディションは安定しており、近年の安田記念はラップ傾向が毎年ほぼ変わらぬ平均ペースとなっている。

レースタイムも過去10年では1.31.5前後、±0.5秒程度の決着でほぼ揃う。例外だったのは不良馬場だった2014年の1.36.8と、12頭立てと少頭数のなかでスローペースとなった2016年1.33.0の2例だけだ。つまり、例年どおりであれば平均ペースを得意とし、1着時計1.31.5前後の高速決着をしっかり走れる馬を狙えばよいということになる。

直近10年安田記念ラップ傾向ⒸSPAIA


安田記念登録馬 1600mタイム実績ランキング上位ⒸSPAIA


そこで登録馬のマイルでの過去持ち時計ランキングを見てみよう。ランキング1位はインディチャンプが2019年の安田記念で記録した1.30.9だ。この他にも2レースでトップ10にランクインしている。さすが全8勝中マイルで7勝しているマイル王である。7勝の内容もさまざまなペースに対応できており、展開は不問型。また、前走は初の1200m挑戦となった高松宮記念で0.1秒差3着と調子にも問題はない。国内マイルでは5着以下になったこともなく、まさしく消す理由がない。

2位にはグランアレグリアが入った。今年のヴィクトリアマイルで記録した1.31.0はインディチャンプの1位の時計と0.1差で引けを取らない。ヴィクトリアマイルの内容を整理すると、3Fから5F目が若干落ち着いたスローペース寄りの展開になって上がりが速くなったところに、上がり3F最速となる32.6を繰り出し、4角10番手から差し切ったものだった。

マイル実績も【6-0-1-1】と文句なく、5着だったNHKマイルCも4着入線から降着したもの。実質的には国内マイルで5着以下がないインディチャンプとほぼ同等の実績を持っていることになる。持ち時計ランキング上位10位以内に他2レースで顔を出すのもインディチャンプと一緒。昨年の安田記念を勝っていることから当然、人気になりそうだが、こちらも消す理由がない。

これでは面白くないだろう。割って入れる馬を探したい。3位に入っているのはケイデンスコールが今年のマイラーズCで記録した1.31.4。マイラーズCは逃げたベステンダンクがハイペースで飛ばしたため後半は時計がかかったが、8番手から上がり2位となる33.8できっちり差し切っている。

マイル実績は【4-2-0-5】となっており、2歳時を除けば、ある程度前半が速いレースで好成績を出す傾向があり、前半がスロー寄りだったときには着外となりやすい。そのため、前半スロー寄りのほうが良いグランアレグリアとは対局にある点に注意したい。

4位の1.31.6は3頭入ったが、グランアレグリア(昨年の安田記念)以外ではシュネルマイスターとダイワキャグニーがいる。注目はこの時計を記録してNHKマイルCを勝った3歳馬シュネルマイスターだろう。それまで1分32秒台で決着していたNHKマイルCを1.31.6で走ったのだから3歳の時点で古馬に劣らない時計実績を持っていることになる。

レース自体は前半3Fが33.7と速くハイペース、ヴィクトリアマイルとは対局のペースであり、ケイデンスコールとタイプは被るように見えるが、まだ3歳馬であることを考えれば、前半スローでも対応してくる可能性はまだ残されている。

一応4位タイのダイワキャグニーに触れるが、この時計は前走マイラーズC4着時のもの。1,2着馬が33秒台の上がりで、ダイワキャグニー自身は4角5番手から粘り込んだ2着争いでの4着だった。東京の長い直線でこれ以上残せるかは微妙で、買うとしてもヒモ候補までとしたい。また、1.31.8で7位に入っているギベオンだが、これも前走マイラーズC7着時のもの。4角7番手から流れ込んだ形で、ペースにはついていけるが馬券に絡むかは微妙だ。

マイル時計実績上位10位までを見て時計実績上位馬をペース別に評価すると

・どのペースでも インディチャンプ
・平均ペース、スローペース推奨 グランアレグリア
・ハイペース推奨 ケイデンスコール、シュネルマイスター

といった形になる。

ペースの鍵を握るトーラスジェミニ

あとは今年の安田記念がどのペースになるのかを考えたいのだが、明らかな逃げ馬のトーラスジェミニがどう走るかが読みづらい。前走のダービー卿CTで先手を奪えず2番手から6着。OPクラスではリステッド競走2勝の実績はあるものの、挑戦者感が強く、思い切ったぶっ放しの逃げなのか、それとも溜める逃げなのかは鞍上を含めた関係者の判断次第だ。

登録段階では逃げ候補にビッククインバイオもいたが回避したため、ある意味安田記念がどうなるかはトーラスジェミニに懸かっている。だが、仮にぶっ放して逃げたとしてもぴったり追いかける候補が見当たらず、どちらにせよ馬群は平均ペース相当で走るのが基本線とみて、実質例年通りの平均ペースという前提で馬券を組み立てたいと思う。

人気どころ中心の推奨になってしまうので馬券作戦は慎重に考えたい。インディチャンプとグランアレグリアを入れるのは仕方ないだろう。

ここに、1600mをあまり走っていない「可能性を秘めた馬」を加えた3連単を買おうと思う。シュネルマイスターはハイペース推奨組だが、3歳馬であるため対応してくる可能性を残している。ランキング外からは昨年のNHKマイルC覇者のラウダシオンを拾いたい。マイルは【1-1-0-2】、経験は4戦と少ない。また、明けて4歳となった今年はまだ1400m以下しか使っておらず、マイルでのタイム実績で上位に来ないのは仕方がないところがある。前走は1400m京王杯スプリングCを勝っており、可能性を持つ馬として入れておきたい1頭だ。

さらにもう1頭、マイルは4戦で【3-0-0-1】と、こちらも実績が少ないなかで3勝しているサリオスも加えたい。この4戦の内訳は2歳時に3勝、唯一の着外は3歳時のマイルチャンピオンシップ5着だった時なのだが、これは最速上がりの33.1ながら後方すぎたために届かなかった内容だ。前走大阪杯(5着)でも先行したように普段は先行策を取れる馬なので、これからマイルで活躍する可能性は否定できない。

馬券は3連単マルチで、インディチャンプとグランアレグリアを2頭軸にして、相手をシュネルマイスター、ラウダシオン、サリオスの「可能性を秘めた馬」たちにする。あとは万が一ハイペース展開になった際のケイデンスコールとシュネルマイスターをワイドで押さえるかどうかだが、オッズを見て考えたい。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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