【中山記念】「3番人気以内が8勝」「前走2000m組が10連対」上位人気堅実も環境激変の穴に注意!

勝木淳

中山記念インフォグラフィックⒸSPAIA

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ペースは毎年バラバラ

有力馬の始動戦、海外遠征壮行レース的な側面がある中山記念は格下の馬より休み明けでも実績馬が強い傾向が強く、ここ10年では上位3番人気以内を順調に評価すべきレースである。今年の想定には香港遠征から中山記念を国内始動戦に選ぶ馬が多く見られ、評価が難しい。また数こそ少ないが、データによると穴駆けする馬は前走が1400mの阪神Cだった馬など条件が激変するタイプが多い。

このレース、ドバイや香港遠征への壮行レースという位置づけが定着してきた。そのためにかなり豪華なメンバーが揃うようになった。中山記念といえばウインブライトだが、これはリピーターレースという側面を証明している。ただし、レースの傾向は一筋縄ではいかない。

中山記念過去10年ⒸSPAIA

展開は年によってバラつきがある。1000m通過61秒以上のスローペースもあれば、58秒台の厳しい流れにもなる。春の中山は開催が進むにつれて時計が出やすくなるという傾向がある。暖かくなるにつれて野芝が休眠から覚め、生えそろうことに起因しているが、その意味でまだ野芝が休眠中の開幕週の中山は時計面もバラつくということだろう。

昨年のような1000m通過58秒2、後半800m47秒3、勝ち時計1分45秒5というレースは例外的であり、中山らしく必ずしも時計勝負に強くある必要はない。注目すべきは勝ち馬の4角位置だ。ここ7年は4角4番手以内が勝っており、差し馬でも4角で順位を上げていく機動性が問われるレースである。昨年も4角7番手の1番人気ディアドラが6着、4番手のウインブライトが勝ち、2番手にいたラッキーライラックが2着だった。

差し馬不発の傾向から波乱含みな雰囲気もあるが、実は上位人気は堅実である。

人気順別成績(過去10年)ⒸSPAIA

1番人気こそ10年で【2-0-0-8】と極端であり、2勝は頼りないものの、2番人気、3番人気ともに【3-1-2-4】で、勝ち馬は10年で8頭が3番人気以内。10番人気以下の激走は10年トーセンクラウン(13番人気1着)、テイエムアンコール(12番人気2着)のみで、以降は複勝圏内もない。6~8番人気の中穴人気の馬も10年間で2着3回、3着3回なので、連下に入れるのは問題ないが、評価を必要以上にあげる必要はなさそうだ。

上位人気が堅実なデータを裏づけるように前走クラス別成績では前走GⅠだった馬が優勢になっている。

前走GⅠ組を狙え

前走クラス別成績(過去10年)ⒸSPAIA

前走がGⅠだった馬は【5-5-3-25】で勝率、連対率、複勝率ともにもっとも高い。伝統のGⅡ、それも海外遠征を控えた有力馬の始動戦という位置づけが素直に反映されている。格下のレースはここに挑戦する組よりも始動戦として出走する格上馬が強いという判断は、人気別の成績と合わせて正しいといえよう。

前走距離別成績ⒸSPAIA

1800mはGⅠが設定されない距離なので、秋の毎日王冠同様にこの距離に強いスペシャリストが好成績をあげるレースではあるが、前走距離が1800mだった馬【0-2-0-9】で、距離短縮組が強い。2000mだった馬は【5-5-1-31】、2500m【2-1-0-5】。

GⅠ出走馬が強いという傾向を踏まえると、前走は天皇賞(秋)、香港カップ、有馬記念だった馬をチョイスしたい。想定には香港ヴァーズ2着ラッキーライラックがいるが、これも距離短縮。一方、香港マイル1着アドマイヤマーズ、同7着インディチャンプがいるが、前走がマイル戦だった馬は【1-1-5-16】で連下評価に留めるべきか。

しかし、前走着順別成績に注目すると香港組には新たに浮上する馬もいる。

前走着順別成績(過去10年)/ 前走1着馬の前走競馬場別成績(過去10年)/前走6~9着馬の前走競馬場別成績(過去10年)/前走10着以下の前走競馬場別成績(過去10年)ⒸSPAIA

アドマイヤマーズはこの前走1着馬に該当する。距離延長がプラス材料になるような馬ではないが、バッサリ行くのはためらわれる。 ここで注目は前走6~9着馬の前走競馬場別成績である。ここに今年大挙出走が予想される香港組が出てくる。香港遠征敗退組の1着はネオリアリズム。こちらは香港マイル9着から巻き返した。

インディチャンプがこのパターンに該当する可能性も否定できない。ただ、ネオリアリズムは2000mに強くマイルは適性外だった馬で、1800mで巻き返したが、インディチャンプは春秋マイル王。アドマイヤマーズ同様に距離延長が巻き返し材料となるかどうかは微妙である。

こうした距離や条件による出し入れは中山記念でも重要になる。前走1着馬の前走競馬場別成績は中山【3-0-0-5】東京【2-0-1-5】と関東圏で連勝するタイプが多いが、前走6~9着馬の前走競馬場別成績や前走10着以下の前走競馬場別成績では京都や中京、阪神など関西圏の競馬場経由で巻き返してくる馬の好走が見られる。

阪神10着以下から3着に激走した2頭はいずれも1400mの阪神カップだった。上位人気馬は距離短縮狙いでいいが、穴となるとまったく違うカテゴリーから参戦するような馬に注意を払いたいところだ。このように環境が変わって一変する馬も多いので、出し入れという意味で中山記念に適性がありそうな馬を吟味しておきたい。

中山記念インフォグラフィック

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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