【菊花賞】トライアル組は着順で取捨、神戸新聞杯勝ちは複勝率5割超え メイショウタバルが展開のカギを握る
勝木淳
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重視すべきは人馬の呼吸
来年、JRAは重賞日程を改編する。時代にそぐわない状況を変える姿勢は理解できるものの、長年の競馬ファンにはしみ込んだリズムがある。今週はなんだっけとレースを思い出すまでもない。日程は暗記というか、頭に叩き込まれている。来年はこの回路を大きく組みかえないといけない。
そんな大改編のなか、ひっそりホッとしたのが菊花賞だ。ここ10年ぐらいだろうか、もっと前からだろうか、菊花賞は芝2400mに変えたらどうかという声がある。ある調教師はかつて、将来を考えると3000mを走るメリットが少ないとも語った。発言の趣旨は理解できる。2400m適性を重視した馬づくりにおいて、3000mは越えなければならないハードルではない。
昨年、皐月賞馬とダービー馬がそろって菊花賞を走ったが、これは23年ぶりのこと。三冠がかからない限り、菊花賞は是が非でも勝つレースではなくなった。クラシック三冠最終戦がそれでいいのか。議論が起こるのは自然な流れだろう。
しかし、淀の丘を二度越える3000mには2400mでは問えない能力がある。そして、3歳夏から秋にかけ充実期を迎える馬、長距離で力を発揮する馬もいる。多様性こそ競馬。菊花賞の3000mは競馬の間口を広げるためにも必要だと個人的には考えるが、みなさんはどう思うだろうか。
ここからは、菊花賞をデータとともに展望する。データは21、22年阪神を含めた過去10年分を使用する。
春二冠を制した馬がそろう機会が少なくなり、近年は混戦の年が増えた。1番人気【3-0-3-4】勝率30.0%、複勝率60.0%をはじめ4番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%までは横一線で、5番人気【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%、7番人気【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%など伏兵との差はさほどない。
全馬初となる3000mを乗り越えるには、やはり人馬の信頼関係は大切だ。継続騎乗【8-6-8-99】勝率6.6%、複勝率18.2%、乗り替わり【2-4-2-50】勝率3.4%、複勝率13.8%と継続騎乗が一歩リードする。ちなみに乗り替わり2勝はフィエールマンとドゥレッツァでどちらもルメール騎手だった。同騎手は今年、アーバンシックに騎乗予定なので、継続騎乗。乗り替わりは減点したい。これは一発勝負のクラシックの特徴でもある。
今度こそレースの中心に立つメイショウタバル
ダービー馬ダノンデサイルが二冠をかける。昨年タスティエーラで取り上げられたが、ダービーと菊花賞の二冠制覇はクリフジ(※オークスを加えた変則三冠を達成)、タケホープの2頭だけ。ダノンデサイルが勝てば、51年ぶり3頭目となる。
菊花賞は逆転の一冠といわれ、夏の上がり馬が勝つレースでもあったが、ここ10年では前走条件戦が【1-1-4-44】勝率2.0%、複勝率12.0%と苦戦。勝ち馬はドゥレッツァしかいない。上がり馬はトライアルで重賞を経験してから本番が理想で、好走馬は前走GⅡ【8-8-6-95】勝率6.8%、複勝率18.8%から出る。
一方で、ダノンデサイルと同じダービーからの直行は【0-1-0-1】。昨年タスティエーラの2着のみ。さすがに夏を越すからか、GⅠからGⅠへ、とはいかない。9月にひと叩きして本番が良く、ダノンデサイルはどうか。ちなみにダービーとの二冠を達成した上記2頭はいずれも皐月賞を走っていない。皐月賞をゲート入り直前で除外になった事実がここにつながるのではないか。
春と違い、トライアル組が強力なのも菊花賞の特徴だ。前走神戸新聞杯【5-4-4-52】勝率7.7%、複勝率20.0%、セントライト記念【3-3-2-39】勝率6.4%、複勝率17.0%。関東馬が3連勝中と勢いがあるからか、最近はセントライト記念組も良い。
神戸新聞杯組は1着【2-0-2-3】勝率28.6%、複勝率57.1%など、3着以内【5-4-3-14】。4着以下が【0-0-1-38】なので、出走権を自力で獲得した馬を上にとろう。今年はメイショウタバルが逃げ切った。改めてダービー取消が悔やまれる。
菊花賞の逃げ切りはハククラマ、セイウンスカイ、タイトルホルダーの3頭しかない。セイウンスカイで逃げ切った横山典弘騎手が乗るダノンデサイルを破ることができるか。長距離戦の逃げを熟知した横山典騎手に対し、どんな手に出るだろうか。父ゴールドシップは菊花賞を3コーナーからまくって勝利。荒っぽい競馬が合うタイプだけに、レース展開への興味は尽きない。
セントライト記念はもう少し範囲が狭く、1、2着【2-1-2-9】、3着以下【1-2-0-30】。アーバンシック、コスモキュランダが候補だ。注目は後者。弥生賞ディープインパクト記念1着から二冠を走り、セントライト記念2着は昨年、早世した菊花賞馬アスクビクターモアを思い出す。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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