【ダイヤモンドS回顧】人馬ともに復活のテーオーロイヤル 血統からも充実の6歳シーズンで高みを目指す

勝木淳

2024年ダイヤモンドステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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2年ぶり2勝目の意味

テーオーロイヤルが2年ぶりの勝利をダイヤモンドSで飾った。最後に勝ったのもダイヤモンドSであり、いかにもステイヤーらしい戦歴といえる。これに似たパターンにフェイムゲームがいる。14、15年連覇、その3年後に3勝目をあげたときのハンデ58.5キロはテーオーロイヤルと同じ。生粋のステイヤーは斤量など気にしない。序盤から淡々と自分のリズムで走り、自分のタイミングで動いて勝つ。周囲のペースに惑わされず、自分の得意条件で結果を残す。自然体な走りに思わずあこがれを抱きたくなる。こんな大人になりたい。ステイヤーには人生の理想がみえる。

2年前はその後、天皇賞(春)でタイトルホルダー、ディープボンドに次ぐ3着。もう1年、経験を重ねれば、いずれステイヤーのトップに立てる器のはずだった。だが、ジャパンC後に骨折が判明、休養は約1年に及び、充実の5歳の大半を空白で終えた。その終わり、アルゼンチン共和国杯を叩き、ステイヤーズS2着。やはりステイヤーは得意距離になれば、きっちり走る。

5歳シーズンをほぼ白紙で終えたということは、充実の6歳が待っている。母メイショウオウヒといえば、兄にパイロ産駒メイショウハリオがいる。帝王賞連覇は5、6歳時のことで、6歳シーズンはGⅠ級4戦で3、1、1、4、5着とピークを極めた。血統からも6歳充実説をあと押しする。そのサインがダイヤモンドSだ。当然、目標は天皇賞(春)。真のステイヤーは淀の坂越えなど気にしない。構えず、自然体で挑戦してほしい。

鞍上の菱田裕二騎手はテーオーロイヤルと同じく、昨年、左肩の脱臼で離脱を余儀なくされ、年末の復帰後、2勝目(JRA)で重賞タイトルをつかんだ。人馬ともにケガに苦しみながら、復活し、再び高みを目指す。そんな共通点も応援したくなる要素だ。

変幻自在のステイヤーはレースに無駄がない。序盤からサリエラの背後をとると、残りはそのまま動かない。目標が動くまでじっと待ち、サリエラをとり逃がさないよう立ち回り、併せ馬できっちり競り落とした。サリエラ以外には負けることはないだろう。もっといえば、併せられさえすれば、サリエラにも負けない。人馬からそんな自信を感じた。


展開に泣くも、進化を感じるワープスピード

2着サリエラは初の3000m超で、テーオーロイヤルに最後まで食い下がったのは立派だった。こちらも斤量55.5キロは馬格を考えれば、しんどかったはずだ。目標にされた相手が悪かった。晩成傾向のサロミナの系統らしく、まだまだ成長も見込める。長距離もこなせるが、ベストは2400m前後だろうか。どちらにせよ、春は牡馬相手に挑むことになる。勝ちに行く競馬が理想だが、牡馬相手なら、体力負けしない切れ味勝負に持ち込みたいところ。昨年3着だった目黒記念は目標にちょうどいい。ハンデさえ、これ以上課せられなければ、チャンスが巡ってきそうだ。

3着ワープスピードは超スローペースで位置取りの差が出てしまった。前半1000m1.01.2、中盤1000m1.04.7と中盤でさらに遅くなり、レースが動いたのは残り600mから。11.8-11.0-11.5では、繰り出せる末脚に限界がある。切れ味で劣るため、長距離に活路を見出したことを踏まえると、自身が記録した上がり600m33.7はむしろよく頑張った方だろう。やはり長距離はベストであり、もう一列前で競馬を進められれば、結果も変わってくる。長距離戦は隊列が決まると、そう簡単には動けないので、序盤の位置取り争いで器用に立ち回ってほしいところだ。

このレースは序盤、出遅れたグランスラムアスクが外から番手を狙いに行った場面以外、ほぼ隊列に変化がなかった。東京の長距離戦はことさら途中で動きにくい。非常に勇気が必要であり、結果が担保されないことを承知でいえば、伏兵はどこかで動き、レースを面白くしてほしかった。長距離戦の魅力は駆け引きにある。このレースでは、そんな魅力を感じられなかった。最後のテーオーロイヤルとサリエラの競り合いが迫力満点だっただけに、その点を余計、感じてしまう。


2024年ダイヤモンドS、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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