1位サウンドトゥルーは7億円超、90年代の個性派が続々ランクイン! セン馬限定獲得賞金ランキング
高橋楓

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トップは7億円超え! 「サウンドトゥルー」
デビュー戦から2戦連続でブービーから1.4秒差、1.6秒差の殿負けを経験した1頭の馬が、後に重賞を3勝し4億円近くの総賞金を稼ぐことになるとは想像もできなかった。金子真人オーナーが1997年北海道8月市場にて700万円で購入したその馬の名前は「ホットシークレット」。デビュー2戦を惨敗の後、去勢されセン馬になるのだがそれが大きなきっかけとなった。
復帰後にいきなり勝ち上がりを果たすと、5戦連続馬券圏内。長距離戦線の常連として長年にわたって活躍した。今回はそんな「セン馬」になって才能が開花した競走馬達の歴代総賞金ランキングを振り返ってみたい。
今回は2022年2月25日時点で、去勢後に国内競走で獲得した5着以内の総賞金を基にランキング化した。
1位 サウンドトゥルー 7億560万円(50戦11勝・2010年うまれ)
2位 アサカディフィート 4億6564万円(76戦11勝・1998年うまれ)
3位 マグナーテン 4億4894万円(31戦12勝・1996年うまれ)
4位 レガシーワールド 4億1080万円(27戦7勝・1989年うまれ)
5位 マーベラスクラウン 3億9555万円(18戦6勝・1990年うまれ)
トップは11歳まで現役で頑張った「サウンドトゥルー」となった。それでは1頭ずつ振り返ってみたい。
GⅠ&JpnⅠ・3勝の古豪! 「サウンドトゥルー」
通算成績は68戦13勝で総獲得賞金7億6002万円。東京大賞典(2015年)、チャンピオンズカップ(2016年)、JBCクラシック(2017年)と3年連続で大レースを制覇。転機は2014年6月21日の3歳以上500万円下(現1勝クラス)のレース後。去勢前後での成績や獲得総賞金は以下の様になる。
去勢前 18戦2勝 5442万円
去勢後 50戦11勝 7億560万円
本馬は去勢前も[2-5-6-5]と堅実な走りを続けていたが、体質の問題で去勢に踏み切ったとされている。「去勢=気性難」と思われる事が多いと思うが、実な体質にも効果があらわれる。その一例が筋肉への影響だ。
筋肉はあればあるほど良いというわけではない。つきすぎると首の動きに影響がでて重心が崩れてしまったり、硬くなりしなやかな走りができなくなってしまうことがある。また、馬体重の増加から脚元への影響も危惧される。その場合、去勢する事で男性ホルモンを減少させ、筋肉質になり過ぎないように調整する効果が期待されている。まさにサウンドトゥルーの場合はこれが効果的だったようだ。
復帰初戦で勝利を飾るとコンスタントに走り続け、2か月後には条件戦を連勝。1年後までに日本テレビ盃制覇やJBCクラシック2着の結果を残し、GⅠ戦線で活躍し始める。その後はダート路線の強豪として戦い続け、船橋の佐藤裕太厩舎へ移籍後も金盃競走連覇など活躍を続けた。
平地重賞勝利最高齢記録保持馬! 「アサカディフィート」
デビューした頃にはゲート難克服のためにすでに去勢されていたアサカディフィート。彼の現役生活もまた波乱万丈だったと言える。
通算成績 76戦11勝 4億6564万円
デビュー戦はジャングルポケットが日本ダービーを制した2週間後、2001年6月9日の中京競馬場だった。すんなり先行することに成功すると危なげないレースぶりを披露し快勝。その後少しずつ力をつけ、6歳を迎えた2004年の中山金杯で重賞初制覇。
この頃には、先行競馬ではなく、中団から後方で脚をため追い込むというスタイルにチェンジしていた。そこから低迷期を迎えるも、7歳秋シーズンのカシオペアSで最低人気ながら上がり3ハロン32.8秒の末脚を繰り出し復活。
続く京阪杯や2006年の中山金杯、そして久々のダート戦となった名古屋大賞典などで馬券に絡み続ける。そして2007年、2008年の小倉大賞典連覇。連覇達成時には馬齢10歳。すでに種牡馬となっていた同期のジャングルポケット産駒やアグネスタキオン産駒達と走り続けるその姿は、時代を見続けてきた生き証人としての貫禄すら漂わせていた。
覚醒の地は盛岡! 「マグナーテン」
父が名種牡馬Danzigで、母が1991年のヴェルメイユ賞の勝ち馬で凱旋門賞とジャパンカップを2着したマジックナイト。そして藤沢和雄厩舎所属。なんと華やかな字面だろう。それでも彼は当初結果を残せなかった。
去勢前 6戦0勝 405万円
去勢後 31戦12勝 4億4894万円
4歳未勝利戦にて1番人気でデビューするも6着。その後も結果を残すことが出来ず、未勝利のまま4歳シーズンを終えてしまう。これだけの世界的良血馬。叶う事なら種牡馬入りを夢見たはずだが、サラブレッドとして走らせる道を陣営は選択する。
半年後、去勢明けに盛岡競馬場で行われたフレンドリーカップに出走した際はよもやのマイナス24kg。そこを3着すると、1か月後には待望の初勝利。東京競馬場で行われた500万下戦を挟み、再び盛岡のフレンドリーカップを快勝し2勝目をあげると徐々に軌道にのってくる。
その後8戦5勝を記録し、迎えた2001年の関屋記念ではクリスザブレイヴ、エイシンプレストン、スティンガー、ダイワテキサス、地方からの刺客として当時話題であった3歳馬ネイティヴハートなどを相手に重賞初制覇。
それ以降も毎日王冠やAJCC制覇など重賞戦線で活躍を続ける。もし、血を残す事だけを考えていたらこれだけの活躍は出来なかっただろう。
日本調教馬初、セン馬のGⅠ制覇! 「レガシーワールド」
父は初年度に32頭の種付け数ながらダービー馬シリウスシンボリを輩出したモガミ。翌年には牝馬三冠にトライアルまで含めた完全制覇を成し遂げるメジロラモーヌを世に送り出すなど大成功をおさめていた。しかし、気性難の馬が多く誕生したと言われている。
レガシーワールドは父より優れた能力と激しい気性の両方を引き継いでいた。デビュー以降、出遅れを繰り返し5戦連続で掲示板を確保するも勝ちきれない。少しでも能力を発揮させることが出来るようにと陣営は去勢を決断する。
去勢前 5戦0勝 556万円
去勢後 27戦7勝 4億1080万円
結果がではじめるのに時間はかからなかった。復帰初戦こそ騎手を振り落として競走除外になるも、その後はジャパンカップ制覇までに[7-4-1-1]と大躍進を果たした。
セントライト記念では後の菊花賞馬ライスシャワー、ドンカスターSでは鬼脚ヒシマサルを破っており、2着に敗れた際の相手も有馬記念はメジロパーマーとハナ差、AJCCはホワイトストーン、京都大賞典はメジロマックイーンなど強豪ばかりだった。
1993年のジャパンカップではコタシャーンのケント・デザーモ騎手がゴール板を誤認したことで脚色が鈍っていたとはいえ、キッチリ差し切って日本調教のセン馬として初のGⅠ制覇を成し遂げた。
2年連続セン馬のジャパンカップ制覇! 「マーベラスクラウン」
気性難による去勢手術後の活躍では、マーベラスクラウンの活躍も有名である。
去勢前 4戦1勝 1480万円
去勢後 18戦6勝 3億9555万円
もともと能力は評価されており新馬戦でしっかり勝ち上がると、次走のもみじSではビワハヤヒデの3着。エリカ賞では後に重賞戦線で活躍するワコーチカコの2着など、相手なりにしっかりと走れていた。
それでも調教中に南井克巳騎手を振り落とすなど、気性の荒いところがあり陣営は去勢を選択。これが吉と出た。
復帰後に一気に3連勝すると、重賞で6戦中4回の2着を記録。そして1994年金鯱賞で待望の重賞制覇を果たす。そのまま、好調を維持し秋には2年連続のセン馬によるジャパンカップ制覇を達成。
ちなみにこのレースには米国から半兄のグランドフロティラが参戦し、異国の地で兄弟の再開を果たし話題となった。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。
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