【セントライト記念】ソーヴァリアントはデータを覆せるか 買うべきは春の実績馬タイトルホルダーと?
勝木淳
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上位人気堅実、大型馬優勢
日本競馬史上初のクラシック三冠馬セントライトは、現在の皐月賞にあたる横浜農林省賞典四歳呼馬を勝利後に中山芝に出走。セントライト記念の舞台である芝2200mは2.23.4で1着という記録がある。いまから80年前のことだ。覚えている方はもう少ない。
菊花賞トライアルのセントライト記念から菊花賞を勝ったのは過去10年で15年キタサンブラック1頭。同馬が5番人気だったように翌週の神戸新聞杯と比べると、ワンランク下に見られがちだ。だが、セントライト記念はここ最近も17年クリンチャー、19年サトノルークス、20年サトノフラッグと菊花賞3着以内馬を輩出。それぞれ10、8、5番人気であり、菊花賞の穴馬はここからあらわれる。そんな点を踏まえて、このレースに挑みたい。ここでは過去10年間(14年は新潟)のデータを使用して傾向をみていく。
秋のトライアルは春の実績馬VS夏の上がり馬という構図が多い。今年も札幌で条件戦を圧勝したソーヴァリアントが春の実績馬にどこまで通じるかがポイントになる。人気では1番人気が【4-3-1-2】勝率40%、複勝率80%と断然で、基本的にはすでに名が売れている実績馬が強い。
ただし、2番人気以下はやや混戦で、6番人気は【2-0-2-6】勝率20%、複勝率40%で上位人気と互角以上。好走4頭の内訳はフェイトフルウォー、アドマイヤスピカ、キタサンブラック、グレイル、春のクラシック出走歴がある馬が3頭、残る1頭も青葉賞以来。上がり馬の後塵を拝し、人気の盲点になった春の実績馬に注意したい。
中山の重賞あるある、大きな馬が強いはここでも同じ。500キロ以上は【4-2-2-18】勝率15.4%、複勝率30.8%と目立つ。480~498キロは【3-4-6-35】勝率6.3%、複勝率27.1%。勝率に差があるので、大型馬をあえて1着に置くという作戦もありだ。前走506キロだったソーヴァリアントは、血統面からもいかにも中山の重賞に適性がありそうなタイプ。一方、春の実績馬が夏を休んで、大きく体を増やした場合も歓迎したい。天高く馬肥ゆる秋。秋の馬体増は気にしてはいけない。
前走日本ダービー組を整理する3つのデータ
ここからは春の実績馬が強いという傾向を間隔別、前走レース別成績をみながら補強しつつ、具体的な好走パターンについて考えていく。
春の実績馬が強いことを示すデータが間隔別成績。夏競馬を使ってここに来るケース、たとえば中8週以内は【2-3-1-61】勝率3.0%、複勝率9.0%。中9~24週とたっぷり休んだ馬は【8-7-9-61】勝率9.4%、複勝率28.2%。成績の差は段違いである。
前走クラスをみると明らかで、前走GⅠが【7-6-5-22】勝率17.5%、複勝率45%と断然。一方、条件戦だった馬は【2-3-2-72】と頼りない。ソーヴァリアントの前走2勝クラスは【1-3-0-29】勝率3.0%、複勝率12.1%。着差0.6~0.9差で勝利した場合【0-0-0-1】。また、札幌出走は【0-0-0-5】。ソーヴァリアントには厳しい数字が並ぶ。はたして、これらデータを破れるだろうか。基本的には前走GⅠ組の取捨選択が中心になる。
GⅠ組の内訳をみると、前走日本ダービーが【7-6-5-19】なので、好走馬はすべて日本ダービー以来。ここを着順別成績で比較する。5着以内は【3-2-1-5】勝率27.3%、複勝率54.5%だが、ここに該当する馬は不在。6~9着だった馬は【0-0-2-5】複勝率28.6%、悪くはないが2着以内が出ていない点は気になる。該当するのはタイトルホルダー、グラティアスの2頭。
それなら大敗組の10着以下【4-4-2-9】勝率21.1%、複勝率52.6%も面白い。タイムトゥヘヴン、ヴィクティファルスが該当する。前者は中山の重賞2着2回、後者はスプリングSの勝ち馬。昨年の2、3着は中山の重賞勝ち馬だったので、この2頭の変わり身はありそうだ。
さらに日本ダービーでの人気から傾向をみる。ここは着順とは逆で、日本ダービーで10番人気以下だと【1-1-2-11】勝率6.7%、複勝率26.7%と信頼度が落ちる。6~9番人気は【3-2-2-6】勝率23.1%、複勝率53.8%なので、最低でもダービーで穴人気ぐらいになっていないと厳しい。これに該当するのがタイトルホルダー。着順別のデータと引っ張り合う形になった。
そこで日本ダービーでの位置取り別成績を出すと、後方【0-0-1-5】以外は好成績。ダービーを逃げたバスラットレオンはいないので、先行【3-2-2-3】勝率30%、複勝率70%に注目。ここに当てはまるのがタイトルホルダー、グラティアス、ヴィクティファルスの3頭。ここまであげた3つのデータのうち、2つに該当するタイトルホルダー、ヴィクティファルスが有力候補だ。
最後に前走GⅢ組、かつラジオNIKKEI賞組【1-1-1-10】について。春の実績馬が断然ながら、食い込みがあるとすればこの組だろう。昨年はラジオNIKKEI賞を勝ったバビットが連勝。今年も複数出走するので、掘り下げる。
ここは着順別成績でくっきり。ラジオNIKKEI賞を勝った馬は【1-1-0-1】。2着以下は【0-0-1-9】。今年の勝ち馬ヴァイスメテオールは出走予定がなく、2着ワールドリバイバル、3着ノースブリッジが参戦予定。前者は春のクラシック出走歴あり、後者は2歳時に中山芝2000m1着があるが、やや分が悪そうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。
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