【安田記念】意外に低い「GⅠ連覇」達成率 グランアレグリアを止めるとしたら?東大HCが徹底検証

東大ホースメンクラブ

連覇がかかっていた馬のGI成績,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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グランアレグリア連覇なるか

今週は東京芝1600mを舞台に安田記念が行われる。昨年の同レースで大本命馬アーモンドアイを真っ向勝負で破ったグランアレグリアに対し、長年マイル界のトップクラスで活躍を続けるインディチャンプ、朝日杯FS以来のGⅠ勝利を目指すサリオス、3歳馬ながら勇猛果敢に参戦してきたシュネルマイスターなど、春の最強マイラー決定戦にふさわしいメンバーが出揃った。

注目は連覇のかかるグランアレグリア。前走のヴィクトリアマイルではただ一頭格の違いを見せつける走りで圧勝し、安田記念でも他馬の逆転は困難に思える。ただ、昨年全く同じローテーションで臨んだアーモンドアイが2着に敗れており、馬券的に逆らう余地がないわけではない。

今週は「GⅠ連覇」をテーマに、前年優勝したGⅠに連覇をかけて再度出走した馬の成績を検証。グランアレグリアは本当に安泰なのか、過去のデータを紐解いていこう(データは2001年以降の3歳以上・4歳以上の平地GⅠレース)。

連覇を拒む安田記念

連覇がかかっていた馬のGⅠ成績ⒸSPAIA


<連覇がかかっていた馬のGⅠ成績>
全体成績【22-21-15-69】勝率17.3%/連対率33.9%/複勝率45.7%
1番人気【17-9-6-13】勝率37.8%/連対率57.8%/複勝率71.1%
牝馬【8-6-4-11】勝率27.6%/連対率48.3%/複勝率62.1%
安田記念【1-3-1-3】勝率12.5%/連対率50.0%/複勝率62.5%

まずは連覇を目指してGⅠに出走した馬の成績を概観していく。

全体成績で複勝率が5割を下回っているのは意外なデータ。2年連続で現役の一線級を張る難しさがうかがえる。勝率ベースで見ても連覇を成し遂げるのは6頭に1頭程度だった。なお1番人気に限定すると複勝率は7割を超えており、芝のGⅠレースに限ると2017年天皇賞(春)を勝ったキタサンブラック以降、目下7戦連続で馬券圏内だった。

馬券的に頼りになるのは牝馬で、6割超えの複勝率を保ちながら単勝回収率208%・複勝回収率159%をマーク。ヴィルシーナやホエールキャプチャの激走だけでなく、上位人気勢が堅実に3着以内を死守してきたからこその数字だ。このうち牝馬限定戦を除くと【3-2-1-3】で、前走同騎手組に限れば【2-2-1-1】とほとんど凡走がない。ここまでのところ、グランアレグリアに逆らえる要素はない。

唯一の懸念材料は安田記念が連覇を拒んできた歴史。2001年以降8頭が挑戦したものの、クリアしたのは直線で四方を囲まれながら勝った2009年のウオッカのみ。2001年のフェアリーキングプローンは9着に敗れ、日本と香港を股にかけたモーリスですらロゴタイプの逃げ切りを許した。70回で連覇を達成したのはわずか3頭しかいないレース。グランアレグリアが馬券から消える目は薄そうだが、差し切れずの2・3着は十分に見込める。

前年優勝馬が出走した安田記念の他馬成績ⒸSPAIA


<連覇のかかる馬が出走した安田記念の他馬成績>
距離短縮【0-1-1-22】勝率0.0%/連対率4.2%/複勝率8.3%
前走同騎手【7-3-3-67】勝率8.8%/連対率12.5%/複勝率16.3%
6歳馬【3-0-3-20】勝率11.5%/連対率11.5%/複勝率23.1%

グランアレグリアを脅かす存在となるのは果たしてどの馬か。前年優勝馬がいた年の安田記念についてデータを分析する。

まず、距離短縮組の成績が非常に悪い点が目につく。チャンピオンマイラーがいるレースではスピードの絶対値が問われ、前走で速い流れを経験していないという条件がかなりのマイナスになるようだ。馬券になったのはディープスカイとアーモンドアイのみ。掲示板まで広げても2頭を加えるのみで、現役屈指の実力がなければ勝負に加わることもできない。今年の該当馬サリオス、ダノンプレミアム、ダノンキングリー、カデナはまとめて評価を下げたい。

一方、ウオッカが勝った年を除いて全レースで勝利しているのが、前走と同騎手が騎乗する馬。サトノアラジン、ロゴタイプ、グランプリボスなどが穴を開けており、手の内に入れた馬で一発を狙った騎乗が功を奏している。このうち前走0.2秒差以内で負けた馬に限ると【4-1-1-10】と信頼度が増し、単勝回収率は500%を超える熱い条件になる。

マイルの流れを知り尽くしたベテランも走ってくる。5歳馬【0-2-1-39】の苦戦を尻目に、前述の6歳馬のみならず、7歳馬もブリッシュラックとブラックホークがそれぞれアサクサデンエン、フェアリーキングプローンを破っている。年少馬に世代交代を告げられるケースが多いのかと思いきや、意外にもベテランが健闘する。

今年のメンバーで6歳勢の筆頭は安田記念1勝3着1回のインディチャンプ。マイルGⅠ春秋制覇の実績に加え、前走の高松宮記念でも0.1秒差の3着と衰えを知らぬ末脚が武器。ストロングリターン・インディチャンプで2度、他馬の連覇を阻止している福永祐一騎手が継続騎乗する点も前述の条件を満たしており、プラス材料だ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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