【目黒記念】ウインキートスの勝利によってよみがえる、メジロ牧場の血の物語とは

勝木淳

2021年目黒記念のレース結果ⒸSPAIA

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88年メジロフルマー以来の牝馬V

1980年代後半に活躍したメジロフルマーという牝馬がいる。父は70年代初頭にアイルランドなどで走ったイギリス産ロンバード、母メジロチェイサーはメジロの創始者・北野豊吉氏がフランスで購入したシェリルの2番仔にあたる。メジロチェイサーはのちにメジロライアンをこの世に送る。ロンバードとメジロチェイサーの仔メジロフルマーは88年、当時2月だった目黒記念と日経賞を男馬相手に連勝した。

その後、両レースを勝つ牝馬は現れなかった。そして2021年。日経賞をウインマリリンが、目黒記念をウインキートスが勝った。33年の空白を経て、メジロフルマーの名前はこうして令和の時代に現れた。

目黒記念を勝ったウインキートスの父はゴールドシップ。その母ポイントフラッグの父はメジロマックイーン。同馬の父メジロティターンは父メジロアサマ、母シェリル。メジロティターンはメジロフルマーの母メジロチェイサーの1歳年下の半弟。ウインキートスが目黒記念を勝ったことで、メジロ牧場の歴史を令和に引っ張り出したといえる。

余談だが、目黒記念と日本ダービーは同じ1932年創設。目黒記念は日本ダービーより一週間だけ早い。現在は日本ダービーのあとに行われているが、本来は先だったりする。

願ってもない展開に

レースはダートを主戦場にするトップウイナーが大外枠から勢いよく内に切れ込みながらハナに立った。最低人気の奇襲に呼応する馬はウインキートスしかいなかった。スタートから7.3-11.4-12.5-13.3-13.2-12.4-11.9。トップウイナーは、序盤ゆっくり入り、向正面後半でペースをあげ、3番手アドマイヤアルバとの差はグングン離れる。

その後は12.8-12.7-12.5と再びペースダウンした。トップウイナーについて行き、マイペースを守ったウインキートスにとって願ってもない形になった。ここで差を詰めておいた3番手アドマイヤアルバが結果的に3着。最後の600mは11.1-10.6-11.1で32.8、完全なる上がりの競馬になり、後続は物理的に詰められない展開になった。

ウインキートスは残り400mを過ぎても丹内騎手がほぼ持ったまま。上がりの競馬とはいえ、東京芝2500mでここまで手応えに余裕があるのは父ゴールドシップ譲りのスタミナの現れだろう。札幌で1勝クラスを勝利してから一貫して男馬相手の中距離戦に出走、崩れたのは初重賞だった日経賞15着のみ。ムラっぽい馬が多い父の産駒としては抜群の安定感がある。

15番人気アドマイヤアルバの激走

2着は2番人気のヒートオンビート。これまでスローペースで高速上がりを求められる競馬では結果が出ていなかったが、最後の600mメンバー中最速の32.4を記録したのは評価できる。変則的な競馬を好位で流れに乗ったという点も新たな形を作るきっかけになった。

3着は15番人気アドマイヤアルバ。18年京都新聞杯2着以来、3年ぶりの馬券圏内とあってブービー人気は仕方ない。好走の要因は馬具。パシュファイアーつきのブリンカー着用で行きっぷりが一変、これまでは後方で終わっていた馬が先行できた。後ろが追い上げてこないという変則的な流れも味方したことは確かだが、矯正馬具による一変だけに今後も軽視しない方がいいかもしれない。

1番人気グロンディオーズは4着。正直、物理的に厳しかった。それでも最後はよく差を詰めてきたように休み明けとしては及第点。ステイヤータイプで、休み明けは走らない。使ってまたよくなるだろう。


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年目黒記念のレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA



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