【夏の自由研究】真夏の小倉で単勝回収値135 松若風馬騎手の攻めどころとは?

勝木淳

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夏の小倉で頼れる男、松若風馬騎手

夏の小倉といえば、九州出身の川田将雅騎手や浜中俊騎手が毎年好成績をあげ注目を集めるが、馬券的妙味という視点からみると、松若風馬騎手を忘れてはならない。

夏の小倉騎手成績ⒸSPAIA



小倉の夏開催、騎手に関するデータがここにある。過去10年100走以上騎乗した騎手限定の勝率順ベスト10だ。

1位福永祐一、2位川田将雅は勝率18%超、複勝率40%オーバーとさすがの数値だが、回収値はいずれも100を下回る。リーディング上位騎手だけに人気馬への騎乗ばかりでベタ買いすると儲からない。これはしかたない。強い馬にいい騎手が乗るのは自然の摂理に近い。

しかし上位10人のなかで唯一単勝回収値が135とベタ買いしても儲かってしまうのが松若騎手だ。夏の小倉は松若騎手の単勝を残らず全部買おう、まあこれでも儲かるからまちがいではないけど、ここ10年間の夏の小倉での勝利数は川田騎手122勝、浜中俊騎手134勝に対して松若騎手は45勝。といっても松若騎手は14年デビューで夏競馬騎乗は6年間。6年で45勝、ひと夏平均7~8勝。総騎乗回数は491回、その確率、勝率は9.2%。だからこそ効率よく狙いどころを押さえたい。

芝1200mの傾向分析

まずは芝の傾向から考える。

距離別でみるとダントツなのは1200mで【12-12-5-139】。1200m戦で日本一時計が早いとされる小倉芝1200は施行回数も多く、松若騎手の騎乗回数も多いため確率的には高くはないが、単勝回収値は200もある。ここはぜひ押さえよう。

確率でいえば5歳【2-0-0-8】勝率20%だが、騎乗数10回、単勝回収値70で上位人気馬ばかり。であれば4歳【3-3-0-15】勝率14.3%、複勝率28.6%、単勝回収値430、複勝回収値127がおいしい。3勝で資金4倍、10、7、4人気と穴馬もここから出る。反対に夏の短距離戦で有利な3歳は【2-5-2-54】と案外勝ちきれず。騎乗数が多く絞りにくいうえに単勝回収値は33。悩ましいところ。2歳は【5-4-3-57】と勝ち切り傾向、単勝回収値も316とおいしい。2歳戦の芝1200mに松若騎手騎乗は注目しておこう。

内枠は悪くはないが、回収値は低めなので上位人気馬をケアしておけばOK。注目は外枠だ。6枠【3-3-0-16】勝率13.6%、複勝率27.3%、単勝回収値937、複勝回収値140、7枠は単回収値29だが、【3-2-1-24】と率は高め。8枠【2-0-0-20】単勝回収値は158。どうやら外枠で穴を出す傾向があり、6枠3勝は11、2、6人気、2着3回は4、4、1人気で1人気は1回しかない。8枠2勝は8、7人気。小倉芝1200m、外枠に松若騎手もポイントだ。

乗り替わりの有無で成績に違いがあるか調べると、乗り替わり【6-5-2-69】、継続騎乗【4-4-2-42】と確率はほぼ互角も単勝回収値は前者が134、後者は68と明暗くっきり。小倉芝1200、乗り替わり松若騎手、これだけで単勝をベタ買いするとプラスになる。

さらにフカボリを。松若騎手で夏の小倉芝1200mに出走した馬のその前のレースでの着差別の成績。前走タイム差なしの負けや0秒1~0秒2負けた、いわゆる前走惜敗組が次のレースで来るのは当然といえば当然。注目は勝ってきた馬。それも2着に大きな着差をつけた馬ではなく、0秒1~0秒2差で勝った馬に松若騎手が乗った場合だ。【3-1-1-4】勝率33.3%、複勝率55.6%、単勝回収値1081、複勝回収値298と驚異的。3勝は10、7、6人気。昇級馬が松若騎手騎乗により夏の小倉で連勝するというシナリオを描けそうなときは買いといえよう。たった1回だが勝利した前走着差0秒3~0秒5差勝ちも8人気(17年フェニックス賞ゴールドクイーン)だった。

前走から距離延長、同距離、距離短縮で成績を見ると、同距離、つまり前走1200m出走馬に松若騎手が乗った場合は【8-4-2-73】で延長【0-0-0-3】、短縮【1-5-2-35】を圧倒。ちなみに残り3勝中2勝はデビュー戦、1勝は前走障害出走馬だった。

松若騎手小倉芝成績



ダート1700の傾向分析

次はダートについて。まずは距離別成績から絞る。

松若騎手の小倉ダート距離別インフォグラフィック



単勝回収値は1000mで120、1700mは155とさすがの数字。だが施行回数が断然上位の1700mは【16-4-4-92】と勝ち切り傾向にあり、ここに注目すべきだろう。

芝1200mのときは上位人気だけ押さえておけばと述べた3歳がダート1700mでは一転して【10-3-3-60】勝率13.2%、複勝率21.1%、単勝回収値169と優秀。反対に芝1200mで狙いだった4歳は【3-1-0-12】と確率は3歳より高いものの、単勝回収値は86。むしろ4歳は上位人気中心と考えるべき。得意条件でも条件によって数字が逆転することはデータ予想ではよくあるもの。芝1200は4歳で穴、3歳は上位人気、ダート1700mは3歳で穴、4歳は上位人気。ここは整理して覚えたい。さらにもっともおいしいのは5歳で【3-0-1-9】勝率トップにくわえ単勝回収値291、複勝回収値は111もある。

こちらも芝1200では6枠より外枠が買いだったが、ダート1700は6枠から内枠が買いと対照的。6枠【4-0-0-18】単勝回収値118、5枠【2-0-0-9】単勝回収値537、4枠【3-2-0-9】単勝回収値267、3枠【3-0-1-12】単勝回収値119。ダートでは有利とはいえない1枠も【3-1-0-13】単勝回収値148と好成績。6枠を起点に芝1200mは外、ダート1700mは内と覚えよう。

芝は乗り替わりも継続も確率はほぼ同じ、回収値では乗り替わり優勢だったが、ダート1700mは乗り替わり【5-3-4-59】、継続騎乗【11-1-0-31】と継続騎乗が圧倒的。前者は勝率11.3%、単勝回収値75、後者は勝率25.6%、単勝回収値295。このデータも芝1200mとは傾向が逆になる。芝1200mは乗り替わりが狙いだが、ダート1700mでは継続騎乗時に狙いたい。

芝1200mと同じく前走勝った馬の成績もいいが、こちらはさらに全体的に数が少なく過信できない。むしろ前走0秒6~0秒9負けは【5-1-0-16】勝率22.7%、単勝回収値210、前走1秒~1秒9負けは【5-1-2-34】勝率11.9%、単勝回収値145とおいしい。ダート1700mでは前走0秒6~2秒未満負けを狙ってみたい。

延長【3-3-2-29】勝率8.1%だが、同距離【5-0-1-17】勝率21.7%、距離短縮【8-1-1-44】勝率14.8%なので、前走でダート1700m以上に出走した馬に松若風馬騎手が乗り、小倉ダート1700m戦に出走した場合は買いだ。しかしながら単勝回収値は延長141、同距離112、短縮189とすべて100を超える。夏の小倉ダート1700m戦の松若騎手は確実に頼りになる。

松若騎手、小倉ダートの成績



ざっくりでもいいが、正確に覚えたい

夏の小倉で松若騎手が得意にしている条件芝1200mとダート1700mを深掘りしてみた結果、どちらも得意ながら狙いどころがかなり異なることがわかった。

やはり競馬は印象論で語るのは禁物で、条件ごと、指標ごとに狙うポイントは違う。芝1200mのデータから6枠より外がいいとわかっていてもダート1700mに当てはめると見当違いになってしまう。細かい数字まで覚える必要はないが、ざっくりと枠番なら芝1200mは6枠より外、ダート1700mは6枠より内、芝1200mはどちらかといえば乗り替わりだが、ダート1700mでは圧倒的に継続騎乗など勘所はしっかりとらえておきたいものだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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