【アイビスSD】競馬の1000mは人間でいえば500m走に匹敵 スピードの持続力とスタミナを兼ね備えた条件有利な馬とは?
山崎エリカ
ⒸSPAIA
大外から6頭目までが断然有利
緑が目に痛い新潟競馬の開幕週で行なわれるアイビスサマーダッシュ。新潟はJRAでは唯一、野芝100%で行われる競馬場だけあって、とにかく芝が軽く、直線1000mはスピードがあれば、押し切れるイメージがあるかもしれない。
しかし、競馬の1000mは、人間の500m走に似ていると言われており、スピードを持続させるスタミナも必要だ。アイビスサマーダッシュで、前走直線1000mに出走していた馬よりも、他場の芝1200mに出走していた馬のほうが活躍しているのはそのせいだろう。特に前走でタフな馬場の芝1200mを経験していた、2010年のケイティラブ(8番人気)のようなタイプが穴メーカーになっている。
また、“元祖千直マスター”の西田雄一郎騎手が度々「直線1000mでも展開がある」とコメントしているように、道中で少し息を入れなければ、最後のひと伸びが利かない。ただし、アイビスサマーダッシュに関しては、いかにも開幕週らしく、ある程度、行き切っても残れているのがポイント。前記のケイティラブも逃げ切りだった。
さらに定説どおりに馬場の良いところを走れる外枠が断然有利で、内枠は不利。これは開催が進むにつれて顕著になるが、開幕週でも大外から6頭目までが断然有利という傾向が見られる。また、距離が短いレースほど、軽斤量馬が有利となるだけに(スタートダッシュがつくため)、この辺りも踏まえて予想を組み立てたい。
昨年の覇者、ライオンボスの評価は?
直線1000mで5戦4勝2着1回と、連対率100%のライオンボスが今年も主役だ。同馬は昨年も韋駄天SをPP指数の最高値で勝利した後に、このレースも優勝している。前々走のルミエールオータムダッシュはレジーナフォルテにクビ差先着を許したものの、秋の新潟開催最終日の稍重馬場で時計を要していた。つまり、ペースが速く、早め先頭に立ったことで、終いが甘くなったものなので仕方ない。
また、ライオンボスは発馬が速いほうではなく、二の脚で先団に取り付くタイプの馬。それだけに直進できる、外から6頭目の13番枠もプラス。昨年のこのレースの時よりも斤量が1kg重くなることと、昨年よりも伏兵馬が多い点がネックだが、大きな死角もない。ここも上位争いが濃厚だろう。(PP指数の能力値3位タイ)
能力値1位はアユツリオヤジ
能力値1位は、初芝で前走のテレビユー福島賞を逃げ切り勝ちしたアユツリオヤジ。初芝で結果を出すことは容易なことではないが、前走は福島芝1200mの稍重という馬場で、かなり時計を要していたことを考えると、直近でダート1200mを経験していたことが強みとなった可能性もある。
同馬が時計の掛かる芝を得意とする馬ならば、休養明けの前走は条件に恵まれて好走したことになり、その場合は今回でダメージが出るはず。つまり、芝に慣れての上昇度も見込める一方、二走ボケの危険性もある。また、直線1000mのスピード競馬にどこまで対応できるかが課題でもあり、今回で指数を下げる可能性も視野に入れたい。
能力値2位は、前走のCBC賞で13番人気の低評価を覆し、前半3F33.5-後半3F35.0のハイペースで逃げ切り勝ちを果たしたラブカンプー。同馬は2018年のこのレースの2着馬であり、その年のスプリンターズSでも2着の実績があるが、その頃と比べると勢いは「?」。前走はハンデ戦で斤量が51kgと軽かったことから、出脚が良く、逃げ切れた可能性が高い。今回は斤量56kgで内枠となると、さすがに狙いづらい。
前走の韋駄天Sでライオンボスと同タイム、アタマ差2着に好走したジョーカナチャンが、能力値3位タイ。ただし、同馬は前走時が16頭立ての14番枠で枠順に恵まれたのは確か。また、トップハンデ57.5kgを背負っていたライオンボスよりも斤量が4.5kgも軽い53kgだったことを考えると、強調材料がない。この馬も狙いづらいだろう。
能力値5位は、今年のシルクロードSで3着と好走し、その後のリステッド競走とオープン特別でも0.3秒差以内と安定した走りを見せているナランフレグだ。シルクロードSでは、後の高松宮記念の覇者モススーパーフレアに先着しているのだが、それは外差し馬場に恵まれたもの。先団につけられるスピードがなく、展開待ちの脚質だけに、開幕週よりも開催が進んだ新潟直線1000mで狙いたい馬である。
今回の伏兵馬は?
伏兵馬には昨秋の阪神開幕週、超高速馬場で行われたセントウルSで3着と好走し、最高値を記録したイベリスを推す。セントウルSは五分のスタートから行きっぷり良く飛び出し、ハナを窺えるレベルだったが、内からマテラスカイ、外からラブカンプーがハナを主張してきたので、控えて好位の中目でレースを進めた。3〜4コーナーで少し置かれて、直線序盤では窮屈になり伸びきれなかったが、最後までしぶとく粘って、レコード決着の0.6秒差に好走した。
セントウルSの勝ち馬タワーオブロンドンがその次走でスプリンターズSを優勝していることからも、それなりのレベルにあったことが推測つくはず。そう、イベリスは快速馬で、高速馬場でこその馬なのだ。前走、淀短距離Sはタフな馬場の京都で、先行したために苦しくなって10着失速も、ケイティラブの如く、変わり身に期待したい。
その他では、ダート路線の快速馬で、昨秋のながつきS(オープン)では、前半3F33.0-後半3F36.0の超ハイペースで逃げて5馬身差の圧勝を飾ったゴールドクイーン。ながつきSのテンの1Fは11.6、これは芝スタートコースのダ1200m戦にしても、滅多にお目に掛れない数字である。前走のさきたま杯は出遅れてしまったが、本来は直線芝1000mでも置かれずに追走できる馬であるということが、これまでここに出走したダート路線馬とは異なるポイント。
また、ゴールドクイーンは3歳時に葵Sで楽にハナを切り、ラブカンプーを撃破。その次走の福島芝1200mのバーデンバーデンC(オープン)でも逃げて大接戦の2着と好走。3歳牝馬でハンデ51kgと恵まれた面はあるが、芝適性があるのも間違いない。そのうえ高速ダートのながつきSでダートの最高値を記録していることからも、スピード競馬は合うと推測される。今回はライオンボスよりも外枠と良い枠を引き当て、ハナ主張は無理としても、レースの流れに乗りやすそう。実に面白い存在だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)のライオンボスの前走指数「-219 は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
おすすめ記事