ジェンティルドンナ、マリアライトなど牡馬顔負けの大物ばかり!【ディープインパクト産駒 古馬中・長距離編】

門田光生

ディープインパクト産駒のジェンティルドンナⒸ明石智子

Ⓒ明石智子

牝馬に大物誕生

GIを勝ったディープインパクト産駒のインフォグラフィックⒸSPAIA

マイルのGIをたくさん勝っているディープインパクト産駒だが、産駒全体のデータを調べると、最も成績がいいのは1800mだった。非根幹距離ということもあって日本ではGIが行われていないが、海外ではリアルスティールとヴィブロスがドバイターフを、エイシンヒカリがイスパーン賞を勝利。もし日本でも1800mのGIが行われていれば、ディープ産駒はもっとタイトルを積み重ねていただろう。

海外では、ほかにジェンティルドンナ(ドバイシーマクラシック)、グローリーヴェイズ(香港C)も勝っている。ドバイや香港に適性があるのは何となく分かるが、エイシンヒカリがフランスの芝でGIを勝った時には驚いた。エイシンヒカリの母の父は、ディープと最高の相性と誇るといわれるStorm Cat。そこへCaro×Key to the Mintが加わる母系。フランスの馬場をこなせてもおかしくはないとはいえ、ディープの軽さを打ち消すほどの重さも感じない。ただ、フランスのクラシックを勝ったStudy of Man(仏ダービー)、Beauty Parlour(仏1000ギニー)の2頭も、母の父がStorm Cat、もしくはStorm Cat系の種牡馬。この組み合わせは額面以上のものを引き出す何かが存在するのかもしれない。

大物牝馬ばかり

さて、国内の古馬中・長距離路線に目を移すと、牡馬は4頭(アルアイン、サトノダイヤモンド、スピルバーグ、フィエールマン)、牝馬は4頭(ジェンティルドンナ、ショウナンパンドラ、マリアライト、ラキシス)のGI馬が誕生している。ただ、タイトルの数をいえば、牡馬の4勝に対して、牝馬は7勝(うち5勝は牡馬混合)。古馬の中・長距離では牡馬優勢が当たり前なのだが、ディープ産駒の牝馬はこのカテゴリでも幅を利かせている。

そのうちの1頭、エリザベス女王杯を勝ったラキシスは全弟に安田記念勝ちのサトノアラジンがいる。全く同じ配合でも、姉が中・長距離向きで、弟はマイラーに出た。3つ下の全弟サトノケンシロウは姉に似たタイプで、4つ下のフローレスマジックはサトノアラジン似。このきょうだいもエイシンヒカリと同じ母の父にStorm Catを持つ馬である。Storm Catをクッションとして、祖母の父の影響が出たのがサトノアラジン、曾祖母の父の影響が出たのがラキシス、ということになるか。

菊花賞と天皇賞・春を勝ったフィエールマンはディープ産駒における理想形の1つだと思っている。スピードと切れを伝える父系に、スタミナと底力でガチガチに固めた母系。そこから生まれたのは、スタミナがあって速い時計にも対応できるという、まさに現代型のステイヤーだ。ただ、強い馬であればあるほど、父から「軽さ」と「切れ」を受け継ぐ。日本の芝に実績があるディープ産駒が凱旋門賞で活躍できないのも、このあたりが大きな原因と思われる。

おすすめ記事