【宝塚記念】前走でタフな馬場を経験、枠にも恵まれたアーバンシックが本命候補 穴馬はローシャムパーク
山崎エリカ

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ハイペースで外差し決着が濃厚
今年の宝塚記念は3回阪神開催の4日目、Aコース使用4日目で行われる。芝自体は良好だが、梅雨期の開催となるため「超」が付くほどの高速馬場にはなりにくく、今年も重馬場が予想される。
また、阪神芝2200mで実施された過去10年ではかなりのハイペースが2回。一方、かなりのスローペースも2回と振れ幅が大きく、パンサラッサのような強烈な逃げ馬が出走してくるとかなりのハイペースに振れる傾向だ。
今年は折り合いに不安のあるメイショウタバルが逃げるとなると、かなりのハイペースが予想される。重馬場になると外が有利になるだけに、キタサンブラックがレースを引っ張ってマリアライトの外差しが決まった2016年のような決着に期待したい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ロードデルレイ】
デビュー4戦目の神戸新聞杯では0秒1差の4着に敗れたが、それ以外は連対を外していない馬。3、4走前のアンドロメダSと中日新聞杯ではデシエルトに屈したものの、2走前の日経新春杯で重賞初制覇を達成した。
その2走前は8番枠から五分のスタートを切り、促して中団中目を追走。向正面ではメイショウタバルがぶっ飛ばし、かなりのハイペースになったため、中団中目で我慢して3角へ。
3~4角で内目のスペースを一気に2番手に押し上げ、直線序盤はでメイショウタバルとの差を一気に詰めて抜け出す。2馬身ほど前に出ると、ラスト1Fではさらに差を広げて3馬身差で圧勝した。
2走前はかなりタフな馬場で、前後半5F57秒7-60秒9の激流。1~4角のロスが小さく、後方有利の展開にも恵まれたが、早めに前を捉えに行ってラスト1Fで後続を全く寄せ付けなかったことは評価できる。
また、そこで記録した指数は今回の出走馬の近5走でNo.1のものだ。コンスタントにレースを使われているので上昇度がカギになるが、週末の雨予報は歓迎。外枠も好ましく、2走前を再現できれば当然ここでも勝ち負けになるだろう。対抗か3番手評価は外せない。
【実質能力値2位 ドゥレッツァ】
未勝利勝ちから破竹の5連勝で2023年の菊花賞を制した実績馬。2走前のジャパンCではドウデュースとクビ差の2着(シンエンペラーと同着)、前走のドバイシーマクラシックでもダノンデサイルと0秒4差に健闘していることから、おおよそ能力値2位には入ってくる。
前記の菊花賞では大外17番枠からやや出遅れたが、やや掛かりながら好位の外まで挽回。1周目の3~4角でハナを取り切った。
スタンド前でペースを落とすと外をチラッと見て、1~2角で1F13秒台までペースを落とし、向正面ではパクスオトマニカとリビアングラスを行かせて2列目の最内で3角に入った。
3~4角でペースアップして行く中で最短距離を通り、4角では前2頭の間を縫ってすっと外に出すと、先頭のリビアングラスと3/4馬身差で直線へ。序盤で同馬をかわして2馬身ほど前に出ると、外から迫るタスティエーラも突き放して3馬身半差で圧勝した。
当時は高速馬場ではあったが、前半でドゥレッツァ自身が前2頭に競りかけていったことで、5F通過60秒4のハイペースとなった。しかし、中盤5F64秒1とペースを落として捲りを誘発させ、3角では2列目の最内というベストポジションにつけた。
C.ルメール騎手の天才的な騎乗が光ったレースとはいえ、前半でハイペースに持ち込みながら最後の直線で再加速したのはスタミナがあればこそ。
ただし、2番手の外で前に壁が作れずかなり掛かり、ペースも速かった昨年の天皇賞(春)では15着に敗退。このように折り合い面の課題はあるが、前の位置が取れるため長距離がベストとなる。
それでも、2走前のジャパンC時のように序盤は無理をさせず、途中でハナを主張する形ならこの距離でも通用の余地がある。前走・ドバイシーマクラシックのように2~3番手でも悪くないが、その時は5F通過が65秒前後のかなりのスローになったこともあり、上位2頭の決め手に屈することとなった。
今回はメイショウタバルが出走してくるだけに、ジャパンC時のような競馬は難しいが、雨予報で馬場が重くなれば前走のように伸び負けするリスクは減る。
本馬はスタートが速くないのに掛かるリスクもあり、さらにある程度前の位置を取りたいタイプ。好走条件が狭い馬で、型に嵌まれるかが課題になる。
【能力値2位 ベラジオオペラ】
昨年と今年の大阪杯を連覇。今年の大阪杯は5番枠から五分のスタートを切って先行策。2列目の最内を追走していたが、出遅れたデシエルトが1~2角でハナを奪ったことで一列下がり、向正面では3列目の最内で我慢した。
3~4角でも3列目の最内で、ホウオウビスケッツをマークして直線へ。序盤で前2頭の外に出して追われ、すっと伸びて先頭のホウオウビスケッツと半馬身差の2番手に上がる。ラスト1Fで同馬を捉えて突き抜けると、1馬身差で勝利した。
前走はコンクリート馬場で前後半5F57秒5-58秒7のややハイペース。A→Bコース替わりでやや内有利の馬場をロスなく立ち回り、昨年の大阪杯を上回る自己最高指数を記録した。
今回はそこから疲れを取りながらの臨戦過程。昨年は超高速馬場の大阪杯1着→重馬場の宝塚記念(京都芝2200m)でも3着に健闘しているように、折り合いの不安なく安定した走りを見せている。
しかし、今年は休養明けの大阪杯で自己最高指数を記録した後の一戦となるだけに、昨年よりもパフォーマンスを落とす可能性は高い。
【能力値4位 ヨーホーレイク】
2022年の日経新春杯(中京芝2200m)で初重賞制覇を達成した馬。同レースでは10番枠から出遅れ、内にササって接触。後方からの追走となったが、挽回して中団馬群の中目を追走した。
道中はフライライクバードをマークしていたが、同馬が前に進出していったため、途中でやめて中団外目で3角へ。3~4角では外のスペースを拾ってステラヴェローチェの後ろまで押し上げて直線へ入った。
序盤でしぶとく伸びて一気にステラヴェローチェに並びかけると、ラスト1Fでマッチレースに。最後は同馬を競り落として3/4馬身差で勝利した。
当時は標準馬場で60秒2-59秒1の緩みない流れ。差し馬に有利な展開ではあったが、3~4角で外を回るロスを作りながら3着馬には3馬身3/4差をつけており、GⅠでも通用する指数を記録と、とても強い内容だった。
しかし、その後に屈腱炎を発症。2年2カ月もの長期休養を余儀なくされ、復帰後も昨年は鳴尾記念、今年も京都記念を勝利するなど重賞でも勝ち負けはしているが、2022年の日経新春杯ほどは走れていない。
前走の大阪杯は上述したようにコンクリート馬場のややハイペース、かつA→Bコース替わりでやや内有利の馬場を出遅れて後方2番手で脚を温存。3~4角でも最短距離を通し切って3着という内容だった。
物理的に届くのが厳しい位置で進めたことで、前の馬には押し切られたが、80~90点は与えられる好騎乗といえる。今回も悪くはないが、GⅠとなると馬場悪化で上がりが掛かるなど、展開の助けが必要だ。
【能力値5位 レガレイラ】
昨年の有馬記念の優勝馬。同レースでは8番枠からやや出遅れたが、じわっと挽回して中団中目を追走。かなりペースが遅かったので、好位の中目まで進出して向正面へ。下り坂でダノンデサイルがペースを引き上げると、それに付き合う形で3角に入った。
3角で内にいたスターズオンアースが失速すると、4角で2列目の内を確保。4角出口でベラジオオペラの後ろから外に誘導して3列目で直線へ。序盤は外のシャフリヤールと一緒にじわじわ伸び、ラスト1Fで同馬と併せ馬の形で逃げたダノンデサイルを捉え、最後はクビの上げ下げをハナ差で勝利した。
この日は向正面が追い風、スタンド前は向かい風の強風。高速馬場で前後半5F62秒9-57秒9のスローペースとなったが、ダノンデサイルが向正面の半ばから一気に仕掛けたことでラスト1Fでは12秒1まで減速しており、前に行った馬には苦しい展開だった。
また、やや内有利の馬場で外々から位置を押し上げ、本馬と一騎打ちを演じたシャフリヤールの方がインパクトで勝っていたのは確かだが、本馬も強いレースをしている。
ただ、3走前のローズSでは前有利の展開を最後方からレースを進めて5着に敗れ、2走前のエリザベス女王杯でも中団中目で包まれて4角で位置が下がり、最後の直線で狭い馬群の間を接触しながらこじ開ける形で5着に敗退。秋2戦が不発に終わったことで、前走はピークを持っていきやすかったという面もある。
今回は一転して骨折による長期休養明けの一戦。実戦から遠ざかっているため馬場が悪化するとスタミナ面での不安があり、実績馬でもあるので大事に乗られる可能性が高い。ここは評価を下げたい。
本命候補はアーバンシック
アーバンシックはデビュー時から鋭い末脚で高い素質を感じさせていた馬。3歳春の時点まではレースぶりが不器用で結果に繋がらなかったが、秋を迎えて本格化。セントライト記念と菊花賞を連勝した。
菊花賞では13番枠からやや出遅れ、促して後方中目を追走。スタンド前では中団中目のショウナンラプンタの後ろまで上がり、1角手前で同馬をかわして中団の外に進出。向正面でややペースが落ち着くと、好位の外まで上がった。
3角手前で前のシュバルツクーゲルとアドマイヤテラがマクリを仕掛けていったが、3~4角で徐々に進出して2列目の中目に誘導。直線序盤で追われるとすっと伸びて半馬身ほど前に出る。ラスト1Fでさらに差を広げ、2馬身半差で完勝した。
ここは標準馬場で前半5F62秒0-中盤61秒7-後半5F60秒4。中盤でペースが上がっているが、前半が遅くややスローペースだった。ちなみに、このレースの2着馬は今年の天皇賞(春)の勝ち馬ヘデントール。同馬との差は3角までに良い位置を取れたことで、鞍上の手腕によるものも大きい。しかし、本馬はここで自己最高指数を記録している。
2走前の有馬記念では6着に敗れたが、ここは芝3000mで後方からレースを進めた影響で、3番枠から出遅れてテンに置かれて後方からの追走となってしまった。
しかし、何とか位置を取りに行こうと中団馬群に突っ込んでいくと、スタンド前でも向正面でも動けず、3角ではスターズオンアースが下がってくるのに巻き込まれて位置を下げてしまう形に。
直線序盤で追われてもあまり伸びず、ラスト1Fで失速した馬たちをかわしての6着と物足りない内容ではあった。とはいえ、有馬記念は菊花賞で自己最高指数を記録した疲れもあったと見ている。
前走の日経賞は休養明け。しかも超タフな馬場となり、前半のペースがかなり遅く、かなり折り合いを欠いていたことや、3~4角で中団外々を追走するロスが生じて最後の直線で伸び切れなかったもの。今回は叩かれての前進が見込める。
また今回が道悪となると、前走でタフな馬場を経験し、そこで能力を出し切れなかった馬に優位性がある。さらに今回13番枠と枠にも恵まれているだけに、本馬を本命に推したい。
上がりの掛かる決着歓迎のローシャムパーク
ローシャムパークはデビュー4戦目の山藤賞を好指数でマクリ勝ちし、若い時点から高い素質を感じさせていた馬。その後、徐々に上昇して昨春の大阪杯では2着、秋のBCターフでも2着とGⅠで通用するほどまでに成長した。
昨年のBCターフでは1番枠から出遅れ、後方から追走。すぐに外に誘導したが、スタンド前でもまだ最後方。向正面で外からじわっと進出して、後方外まで上がって3角に入った。
3~4角でもそのまま外々から押し上げ、中団の外から直線へ。序盤で好位列を一気にかわして2番手に上がり、ラスト1Fで先頭のレベルスロマンスとの差をクビ差まで詰めた。
ここは高速馬場で前後半5F61秒30-59秒90(日本の計測法だと前半がおおよそ1秒速い)の平均ペース。昨年のドバイシーマクラシックの優勝馬であるレベルスロマンスが外枠で序盤の位置取りにやや苦労していた面があったが、けっして後方有利の展開ではなかっただけに、この2着は立派なものだ。
2走前の有馬記念は海外で好走した後の疲れ残りの一戦。6番枠から出遅れて後方付近からの追走となり、向正面で進出したもののペースが速く、位置を上げ切れずに7着に敗れた。
このように本馬はゲートが下手という弱点を抱えており、ここも位置取りが悪くなりそうだが、馬場が重くなって上がりが掛かればその弱点を補える。休養明けの前走を叩かれての上昇に期待し、穴馬に推したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ロードデルレイの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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