【競馬】東大HCが函館巧者を徹底検証 騎手は田中勝春騎手、種牡馬はジョーカプチーノ産駒がイチオシ
東大ホースメンクラブ
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夏競馬がスタート
先週から函館開催がスタート。今年もGⅢ函館2歳Sや函館記念の開催が予定されている。同競馬場の特徴はその癖の強さ。函館記念3連覇を達成し、同コースで無類の強さを見せたエリモハリアーを代表として、ここを得意とする「函館巧者」は少なからず存在する。スパイラルカーブ、中央全場の中で最も短い直線、洋芝、3.5mの高低差など、多くの要素が「函館巧者」を生み出しているようだ。
そこで今回は、種牡馬や騎手の函館適性をデータで徹底検証。ここでは同コースでの勝率から全場での勝率を引いたものを「函館巧者率」と定義し、この数値に基づいて各種牡馬や騎手の函館コースに対する得意、不得意をみていく(データは2013年6月15日~2023年6月11日)。
芝のジョーカプチーノ、ダートのドレフォン
まずは、種牡馬別に芝コースの函館巧者率について分析する。
リーディング上位10頭の種牡馬で、顕著な函館巧者率を記録した馬はいなかった。さらに2大巨頭とも言えるディープインパクトとキングカメハメハがどちらもマイナス値を記録している(ディープインパクト:9.6%-12.8%=-3.2%、キングカメハメハ:8.6%-9.9%=-1.3%)。一癖も二癖もある函館コース、やはり一筋縄ではいかないようだ。
そんな特殊条件下で、ずば抜けた函館巧者率を記録しているのが、ジョーカプチーノ産駒。その数値はなんと24.2%-5.9%=18.3%。2021年には産駒のナムラリコリスが函館2歳Sを制している。
リオンディーズも20.6%-8.1%=12.5%の高い数字を出している。ビッグアーサーは18.5%-9.5%=9.0%で、昨年はブトンドールが函館2歳Sを制した。そのほか、トーセンラーが18.5%-6.8%=11.7%と、二桁台の数字をマークしている。
ここまで紹介してきた5頭の産駒は短距離を中心に活躍中だ。特にジョーカプチーノとトーセンラーはこの傾向が強く、函館2歳Sが開催される芝1200mで函館巧者率を算出した場合、前者は26.7%-7.3%=19.4%、後者は23.8%-8.0%=15.8%とさらにパフォーマンスを上げる。そのほか、リオンディーズは16.7%-7.9%=8.8%、ビッグアーサーは18.5%-12.4%=6.1%と他場の同距離と比べて走っている。今後、函館2歳Sに出走してきた場合は要注目である。
では、函館の芝中距離で実績を残している種牡馬はどの馬だろうか。ここからは、函館記念が開催される芝2000mの函館巧者率を算出していく。最も高い数値を記録したのはジャスタウェイ。芝の全体成績では14.5%-7.9%=6.6%であった巧者率が、この距離に限ると27.8%-8.4%=19.4%まで跳ね上がる。
また先ほど登場したリオンディーズの半兄エピファネイアも、全体成績では8.8%-9.4%=-0.6%であった巧者率が、この距離では23.5%-10.0%=13.5%まで急上昇。こうなると、リオンディーズやエピファネイアの弟サートゥルナーリア産駒の函館での活躍に期待が膨らむ。産駒は24年にデビュー予定だが、新馬戦や函館2歳Sで狙ってみる価値はあるだろう。
その他では、ノヴェリストが16.7%-8.3%=8.4%、スクリーンヒーローが15.4%-8.3%=7.1%を記録している。
次にダートコースにおける種牡馬別の函館巧者率を見ていこう。
最も高い函館巧者率を記録したのは、14.8%-6.3%=8.5%でロージズインメイ。それにドレフォンが18.5%-12.6%=5.9%で続く形だ。そのほか、ホッコータルマエが13.9%-8.9%=5.0%、ハーツクライが13.1%-8.6%=4.5%、パイロが11.8%-7.9%=3.9%、ヘニーヒューズが14.3%-10.6%=3.7%とまずまずの巧者率を記録している。
また、芝コースと同様にディープインパクトとキングカメハメハの2大種牡馬が、ともにマイナスの巧者率を記録していることにも注意しておきたい(ディープインパクト:5.9%-8.0%=-2.1%、キングカメハメハ:7.9%-10.0%=-2.1%)。
田中勝春騎手、杉原誠人騎手が躍動
最後に、騎手別の函館巧者率を見ていこう。最も顕著な値を残しているのが田中勝春騎手。巧者率は23.5%-5.3%=18.2%を記録。その他の騎手が軒並み1桁台の巧者率を記録していることを鑑みると、驚異的な値であることが分かる。その他、池添謙一騎手は14.2%-9.7%=4.5%、北村友一騎手は12.9%-9.1%=3.8%を記録している。
函館2歳Sが行われる芝1200mに限ると、松山弘平騎手や横山典弘騎手が台頭。松山騎手は25.0%-9.2%=15.8%、横山典弘騎手は25.0%-10.8%=14.2%を記録している。どちらも騎乗機会が少ない中で結果を出しているため、今後、重賞での騎乗などで函館にやってきた場合は要注目だ。
また、原田和真騎手が13.8%-3.7%=10.1%で2桁台の巧者率を記録。その他、大野拓弥騎手が13.9%-6.1%=7.8%、杉原誠人騎手が11.5%-4.7%=6.8%とまずまずの巧者率であり、中堅ジョッキーの活躍が見て取れる。
函館記念が行われる芝2000mでは、杉原騎手の巧者率が急上昇。28.6%-3.4%=25.2%と頭ひとつ抜けた値を叩き出している。単回収率は480%であり、狙わない手はないだろう。その他、藤岡佑介騎手が23.2%-12.1%=11.1%、武豊騎手が22.0%-14.2%=7.8%の巧者率を記録している。
また、C.ルメール騎手は全体成績、芝1200m、芝2000mの3つ全ての条件で函館巧者率がマイナスだった(順に、20.7%-23.8%=-3.1%、13.2%-19.9%=-6.7%、24.4%-27.3%=-2.9%)。トリッキーな函館コースの乗り難しさを象徴するデータだ。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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