【朝日杯FS】持続力のある末脚が最大の武器 京大競馬研の本命はトータルクラリティ
京都大学競馬研究会
ⒸSPAIA
レースの質と展開を重視
12月15日(日)に朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)が行われる。阪神競馬場の改修工事の影響で、先週の阪神JFに引き続き京都競馬場で施行される。
出走メンバーはサウジアラビアRC勝ち馬アルテヴェローチェをはじめ、新潟2歳S勝ち馬トータルクラリティ、京王杯2歳S勝ち馬パンジャタワー、小倉2歳S勝ち馬エイシンワンドなど、世代重賞勝ち馬が集結。暮れの2歳マイル王者決定戦に相応しい一戦となった。
以下では、本レースが行われる京都芝1600m(外回り)のコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
地力の高い差し馬が順当に好走
まずは京都芝1600mのコース形態をみる。向正面の2コーナーポケットからスタートし、初角までの距離は約700m。向正面半ばから緩やかな上り坂があり、3コーナーで頂上を迎え、そこから4コーナーにかけて一気に下る。最後の直線はDコース使用時399mで平坦となっている。これが今回のコースレイアウトだ。
まず注目すべきは初角までの距離が約700mとかなり長いこと。序盤の隊列は決まりづらく、先手争いが長引きやすい。さらに3コーナーから4コーナーにかけて下り坂となるため、ここでもペースは落ちにくい。スタートからゴールまで全体として淀みないラップが続く、タフなコース形態である。
序盤、中盤で淀みないラップを刻むため、先行負荷はそれなりに大きい。加えて、軽い芝のおかげで後続も脚を使わず追走できるため、速いペースも馬群は凝縮する。先行勢が十分なリードを作れない状態で最終直線を迎えることが多い。
先行勢が粘り込むには、3~4角でリードを保つための早仕掛けから持続力勝負に持ち込むしかない。しかしそれまでの先行負荷もあり、持続力勝負の適性がない馬や地力のない馬は直線半ばでいっぱいになる。
したがって、道中は中団~後方を追走し、速い上がりを使うことができる地力の高い差し馬が順当に好走しやすい。それがこのコースが持つレースの質だ。
<京都芝1600m (外)OPクラス以上 上がり3F5位以内馬の成績(過去10年)>
【47-40-37-170】
勝率16.0%、連対率29.6%、複勝率42.2%、単勝回収率101%、複勝回収率128%
この傾向は数字にも表れている。過去10年の京都芝1600m (外)OPクラス以上における、上がり3F5位以内馬の成績は上記に示した通り優秀だ。54レース中47レースをメンバー中上位の上がりを使った馬が勝利している。
脚質問わず、下り坂から長く良い脚を使うことが好走の鉄則と言っていい。地力がなく、速い上がりを使うことができない先行馬の前残りはほぼない。
特に朝日杯FSに関してはホープフルSのGⅠ昇格後、中距離タイプの出走が減少し、1200mや1400mがベストという短距離タイプの出走が増加している。
今年も例年に違わず短距離タイプの先行馬が揃った。この点でも、このコースが持つ差し有利なレースの質は強まる。
また今週からはDコース替わり。コース替わりと聞くと内前有利のバイアスをイメージするかもしれないが、今秋は10月からの連続開催で、京都の芝は内側を中心に荒れ切っている。仮柵の移動程度ではもはやカバーが効かないほどだ。馬場の観点からも、このコースが持つ差し有利なレースの質は変わらない。
順当に現時点での各馬のポテンシャルを比較したうえで、上がりの速さを重視しつつ、展開とオッズ妙味を加味して印を打っていく。
ハイペース必至の先行馬構成
続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が9頭と出走馬全16頭に対してかなり多い。
その中に距離延長馬や、若駒らしく折り合いに課題がある馬も多くいる。初角までの距離が長いコース形態と相まって、序盤の先手争いは激化することが想定される。
この展開の場合、やはり恵まれるのは中団から後方で立ち回り、速い上がりを使える差し馬だ。ただ、荒れた内側を先行勢が避けていくと、馬群全体が大きく外に膨らみ、4角最後方から先頭まで一気に捉えきるというのは難しい。
したがってポジション取りも重要。コーナーに入るまでに好位から中団近くに位置取るか、3~4角でマクっていく競馬が差し馬にとっては理想と考える。差し馬については序盤、中盤のポジション取り、または機動力も評価して印を打つ。
持続力のある末脚が持ち味
◎トータルクラリティ
前走の新潟2歳Sは牝馬路線上位のコートアリシアンに完勝。一度差されてから再度差し返しているように、しぶとく長く良い脚が使える。
一瞬のキレ味よりも持続した末脚が生きる京都外回りは合っている。また、左回りの前走でモタれる面を見せており、右回りはプラス材料だ。
2走前の新馬戦はスローペースからの瞬発力戦をラスト3F11.8-11.4-10.9の強烈な加速ラップで完勝。出走馬の次走以降の内容を見てもハイレベルな新馬戦だった。
外目から長く良い脚を使いたい本馬にとって5枠10番は絶好枠。スタートセンスも良く、比較的ポジションも取れるため、不安要素が少ない。順当に能力を発揮できれば勝ち負け必至とみる。想定人気からオッズ妙味が見込まれるため、本命を打つ。
◯アルテヴェローチェ
前走のサウジアラビアRCは差し有利な展開が向いての勝利で、素直に評価できる内容ではなかった。ただ、勝ち時計、上がりはともに優秀で、持続する末脚が生きる京都外回りは本馬に合う。
2走前の新馬戦は終始大外を回される厳しい競馬の中、ラスト3F12.1-11.6-11.5の加速ラップを差し切って完勝。高いレースセンスを見せた。ハイレベルな戦いを続けており、まだ能力の底は見せていない。今回のメンバーでもオッズ以上に能力が抜けている可能性はある。
また自分の内外にテンの速い馬がいる並びも良い。出たなりに外目のポジションを確保しやすく、多頭数替わりも大きな不安要素ではない。トータルクラリティ同様、外目から持ち前の末脚を使うことができれば勝ち負け可能だ。
▲ミュージアムマイル
黄菊賞は内前有利な展開が向かない中、6番手追走から3、4角で一気にマクり2着に0.5秒差をつける圧勝。勝ち時計、上がりも非常に優秀で、今回のメンバーでも上位に入る能力を示した。
新馬、未勝利戦も優秀な上がりを記録しているように、キャリア3戦を通して能力の底を全く見せていない。距離短縮もハイペースが想定される今回は好材料となる。
レースセンスが非常に高く、近2走の京都での走りを見ても、下り坂からのロングスパート適性は抜群。ただ、外目から長く良い脚を使いたい本馬にとって、内目の枠はややマイナスとみて3番手評価とする。
△タイセイカレント
前走のサウジアラビアRCは展開が向いたとはいえ優秀な上がりを記録。2戦続けて上がり最速を使っており、京都外回りにも高い適性が見込める。大外枠も大きな不安要素ではない。
×アルレッキーノ
新馬戦、未勝利戦の内容から間違いなく世代屈指の能力がある。しかし、今回は先行馬の並びからして前が楽な展開にはならない可能性が高い。相手までとする。
買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連4点、◎-◯▲-◯▲△×3連複5点で勝負する。(花田)
▽朝日杯FS予想▽
◎トータルクラリティ
◯アルテヴェローチェ
▲ミュージアムマイル
△タイセイカレント
×アルレッキーノ
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
《関連記事》
・【朝日杯FS】アルテヴェローチェとアルレッキーノは消し ハイブリッド式消去法
・【朝日杯FS】改修後の京都マイル戦は種牡馬に注目 アルテヴェローチェ、ミュージアムマイルは明暗クッキリ
・【朝日杯FS】過去10年のレースデータ
おすすめ記事