【マイルCS】ロングスパート戦は最も末脚が生きる舞台 京大競馬研の本命はソウルラッシュ

京都大学競馬研究会

マイルCS-4角通過6番手以内の成績(京都開催の過去10回)

ⒸSPAIA

地力の高い差し馬が順当に好走しやすい条件

11月17日(日)にマイルCS(GⅠ)が行われる。昨年は藤岡康太騎手とタッグを組んだナミュールが4角15番手から豪快に差し切ってGⅠ初制覇を達成した。

今年は連覇を狙うナミュールをはじめ、復帰戦の府中牝馬Sを快勝したブレイディヴェーグ、GⅠ初戴冠を狙う日本マイル界屈指の実力馬ソウルラッシュ、GⅠ・3勝の欧州マイル最強馬チャリンなど多くの実力馬が集結。秋のマイル王決定戦にふさわしい、混戦模様の難解な一戦となった。

以下では、本レースが行われる京都芝1600m(外回り)のコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは京都芝1600mのコース形態をみる。向正面の2コーナーポケットからスタートし、初角までの距離は約700m。向正面半ばから緩やかな上り坂があり、3コーナーで頂上を迎え、そこから4コーナーにかけて一気に下る。最後の直線はBコース使用時399mで平坦となっている。これが今回のコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離が約700mとかなり長いこと。序盤の隊列は定まりづらく、先手争いが長引きやすい。さらに3コーナーから4コーナーにかけては下り坂となるため、ここでもペースは落ちにくい。スタートからゴールまで全体として淀みないラップが続く、タフなコース形態である。

マイルCSは例年、内前有利になりやすいCコース替わり1週目に施行されるレースでありながら、内前が特段有利になるわけではない。

その理由はまず序盤、中盤で淀みないラップを刻むため、先行負荷がそれなりに大きい点にある。加えて、軽い芝のおかげで後続も脚を使わずに追走してくるため、速いペースの割に馬群が凝縮する。先行勢が十分なリードを築けない状態で最終直線を向かえることが多い。

先行勢が粘り込むには、3~4角でリードを保つための早仕掛けから持続力勝負に持ち込むしかない。しかしそれまでの先行負荷もあり、持続力勝負を得意としていない馬や、地力のない馬は直線半ばでいっぱいになる。

したがって、道中は中団~後方を追走し、速い上がりを使うことができる地力の高い差し馬が順当に好走しやすい。それがこのコースが持つレースの質だ。

マイルCSの4角6番手以内馬成績別成績,ⒸSPAIA


<マイルCS 4角6番手以内馬の成績(京都開催の直近10回)>
【4-6-4-57】勝率5.6%、連対率14.1%、複勝率19.7%、単勝回収率43%、複勝回収率59%

この傾向は数字にも表れている。京都開催のマイルCSにおける4角6番手以内馬の成績は上記に示した通り優秀とは言えない。馬券内30頭中14頭を占めてはいるものの、そのほとんどが上位人気の実力馬であり、地力がなく速い上がりを使うことができない先行馬の残り目は皆無に近い。

まして今年はロングラン開催の影響でBコース3週目の施行。内前有利になりやすいCコース替わり1週目でも上記に示した通りの傾向だ。今年は差し有利なレースの質がより強まると考える。順当に各馬の地力を比較したうえで、展開とオッズ妙味を加味して印を打つ。

ポジション取りと機動力を重要視

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある馬が3頭、出走馬全17頭に対して少ない。直近で逃げる競馬をした馬はバルサムノートのみであり、同馬も徹底先行というわけではない。先行馬が手薄なメンバー構成だ。

ただ距離延長馬が3頭いることに加え、中団から立ち回る馬にもそれなりにテンの速さがあること、初角までの距離も考慮すれば、そこまで緩いペースにもならない。

恵まれるのは中団から後方で立ち回る、上がりの速さを持つ差し馬だ。しかし序盤、中盤がタイトとまではいかず、コースが持つ差し有利の質をやや弱めるため、4角最後方から一気の差し切りは難しいとみる。

したがってポジション取りが重要。コーナーに入るまでに出来るだけ好位から中団近くに位置取り、3~4角でマクっていく競馬が差し馬にとって理想であると考える。この序盤、中盤のポジション取りと機動力も重視する。

持続する末脚が生きる舞台

◎ソウルラッシュ
中団から常に堅実な末脚を使える安定感のある実力馬。前走の富士Sはスローペースからの瞬発力戦で、高速上がりが問われるレースで本馬にはやや分が悪く0.1秒差の2着。負けはしたものの、得意条件でない中でも堅実な走りを見せ、評価を下げる内容ではなかった。

2走前の安田記念も稍重とはいえ、同じく高速上がりが問われたレースで0.1秒差3着。ここでも日本マイル界屈指の力を示した。

この馬の最大の魅力は持続する末脚で、それは時計、上がりの掛かる馬場でこそ生きる。故に近2走のような舞台よりも、ロングスパート戦になる京都外回りの方が確実に向く。

揉まれずに長く良い脚が使える外枠も良く、持ち味を最大限に生かすことができれば勝ち負けは必至だ。近2走から条件が好転する今回は本命を打つ。

◯ナミュール
昨年の本レース勝ち馬。昨年は先行馬が壊滅する展開を最後方から運び、直線だけで一気に差し切る競馬。差し有利の展開が向いたものの、地力の高さと藤岡康太騎手の好騎乗が光った。

前走の安田記念はGⅠ・7勝馬だった香港最強馬ロマンチックウォリアーには負けたものの、日本マイル界屈指の実力馬であるソウルラッシュ、セリフォスに完勝の2着。能力値で言えば本命級の評価を与えるべき馬だ。

懸念点はやはり出遅れ癖。2走前のヴィクトリアマイルのように、どれほど良い脚を使っても届かない位置からの競馬になるおそれが常にある。この点を割引して2番手評価とした。

▲チャリン
マイルGⅠ・3勝の欧州マイル最強馬。前走のクイーンエリザベス2世Sでは、ドバイターフでナミュール、ドウデュースに勝利したファクトゥールシュヴァルに完勝。2、4、5着に差し馬が来る差し有利な展開の中、番手から運んで抜群の手応えで勝利した。能力だけで言えば今回のメンバーでも最上位だ。

ただこの馬の懸念点は勝利したGⅠ全てが直線競馬であった点と、日本の高速馬場に対応できるかという点。スローペースを差して好走、ハイペースを先行して好走と脚質に自在性があり、オッズ以上に能力が抜けている可能性もあるが、この2点を少し割り引いて3番手評価とする。

△セリフォス
本来の能力値の高さで言えば、印上位3頭と並ぶだけのものがある。近走は折り合い面での課題が大きく、能力を出し切れていない。ただオッズ妙味が見込まれる今回は相手で押さえたい。

×ブレイディヴェーグ
日本の中距離路線でも随一の能力を持つが、差し追い込み型の距離短縮にあたり、位置取り面で割引評価だ。

×ジュンブロッサム
ソウルラッシュに完勝した前走内容はかなり優秀。下り坂から持ち前の末脚を生かせれば。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連5点、◎-◯▲-◯▲△×3連複7点で勝負する。(花田)

▽マイルCS予想▽
◎ソウルラッシュ
◯ナミュール
▲チャリン
△セリフォス
×ブレイディヴェーグ
×ジュンブロッサム

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。


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