【武蔵野S回顧】エンペラーワケアがペースを味方にマイル戦を攻略 フェブラリーSに向けた課題は?
勝木淳
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ハイペースでも上がり勝負
ドルチェモアの再ブリンカーがレースの様相を決した。前回ブリンカーを装着した京都金杯は前半800m45.3の猛ペースを演出し、18着敗退。2度目の装着となった今回もやはりブリンカーが効きすぎたようで、序盤600m12.1-10.4-11.3、33.8と芝のスプリント戦並みの時計を叩き出した。
レース前後半800mは45.8-50.2でハイペース判定になる。ただ実際は上がり勝負だったため、ちょっとややこしい。後半のレースラップは13.1-12.9-12.0-12.2。ハイペースで上がりがかかったわけではない。序盤が速く、中盤でマイル重賞では滅多に出ない13.1を記録し、その後12.9とコーナー区間で先行勢はかなりペースを落としている。
ドルチェモアが中心となった序盤の先行争いに巻き込まれたメイショウテンスイ、イーグルノワールは離れた後方で入線し、バテてしまったが、その後ろの組にとっては中盤のブレーキが終盤の脚につながった。
勝ったのはエンペラーワケア。マイル戦出走は阪神芝の新馬戦のみ。2戦目からすべて1400mに狙いを定め、【7-2-0-0】と安定している。昇級しても結果を残し、今年は根岸Sで重賞初制覇。フェブラリーSには向かわず、1400mにこだわってきた。4歳秋にしてマイル戦へ。この陣営のジャッジが見事にハマった。
たしかに終盤の13.1-12.9が味方したのは事実だが、この区間で折り合い、脚を溜められたのも大きい。1400m主戦の馬にとって、マイルを攻略するために必要な溜めが難しく、最後の伸びにつながっていく。我慢を覚えたからこそ、後半400m12.0-12.2をしのげた。ハイペースの上がり勝負という特殊な展開を攻略できたのはエンペラーワケアの走りが円熟味を帯びてきた証でもある。
エンペラーワケアの今後
序盤の激流を避け、中盤で我慢し終盤の速い脚へつなげる。これだけの競馬ができないと、好走できないレースだったことは覚えておこう。エンペラーワケアはこの先、マイル戦にも出走するだろう。これ以上、中盤が緩むことはなさそうで溜めは問題ない。GⅠに照準を定めるなら、中盤が緩まなくても体力が求められる。フェブラリーSを狙うなら、この冬でもっと体力をつけてほしい。
これも4歳秋というタイミングを考えれば、さして問題はなさそう。キャリアは10戦とダート馬としてはまだまだ少ない。いいかえれば強くなる余地は大きい。この先のローテはおそらく根岸SからフェブラリーS。チャンピオンズCの優先権を得たとはいえ、1800mに向かえば来年が難しくなる。
エンペラーワケア以下は正直、終盤勝負に徹した馬たちばかり。前で粘った4着ペイシャエスは見直しが必要だろう。3歳時にはハイペースのユニコーンSを先行して押し切った過去がある。当時の勝ちタイム1:35.2は今年の武蔵野S1:36.0よりはるかに速い。近走は中距離中心でスピード競馬を経験していなかったため4着止まりだったが、本馬もマイル戦中心に歩めば、かつての粘りを発揮しそうな予感もある。とはいえ中距離もこなすので、この辺の選択は悩ましい。
信頼できるペリエール
2着カズペトシーンは昇級初戦で重賞好走と最近の充実具合を証明できた。昇級初戦を踏まえ、思い切って溜める競馬に徹したことが好走につながった。ペースに慣れればもう少し前に構えて、勝負圏内に入って進められそうだ。
その意味でもコーナー4回の競馬がよさそうで、賞金面がクリアできればチャンピオンズCはこちらだろうか。勝ち馬と同じ4歳馬であり、まだまだ強くなる。来年は重賞で賞金加算し、トップ戦線に食い込んでほしい。
3着ペリエールは道中、エンペラーワケアと、グリーンチャンネルCで一緒に走ったショウナンライシン、タマモロックを前に置いて追走と理想的な位置をとれた。直線は外へ出し、進路もスパートのタイミングも申し分なし。これで3着、上位2頭とは決め手の差が出た。
ユニコーンS以降、東京ダート1600mは昨年の武蔵野S9着以外は大きく負けていない。このコース専用の印象は否めないが、その分、信頼度は高い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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