【ホープフルS】上級戦の経験が問われる一戦 中心は「キャリア2戦」で理想のローテを歩むクロワデュノール

勝木淳

GⅠ昇格後の過去7年のデータから見るホープフルステークス,ⒸSPAIA

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来春への予告編

有馬記念が終わった。だが、競馬は終わらない。JRAはホープフルSを控え、地方競馬もビッグレースの東京大賞典がある。

28日のGⅠホープフルSは2017年からはじまった。2020年は27日の有馬記念と開催が入れ替わり、26日(土)に行われたが、この年以外は中央競馬の締めくくりの重賞はホープフルSが担ってきた。

確かに有馬記念が最後だとすっきりするかもしれないが、一年の総決算のあとに翌年の予告編が挿入されるのもいい。なんとなく続編をにおわせて終幕し、その後が気になるドラマのようなもの。来春に思いを馳せながら、その年にひと区切りをつける。競馬は決して終わらない。ホープフルSにはそんな感覚がある。

データはGⅠ昇格後の2017年以降を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【5-0-0-2】勝率、複勝率71.4%。21年コマンドライン、22年ミッキーカプチーノ以外はすべて勝利した。どちらも無敗であり、ミッキーカプチーノは葉牡丹賞を0.6秒差で圧勝。やはりキャリアが浅い2歳だけに、インパクトのある無敗馬であっても好走するとは限らない。

2番人気【1-2-1-3】勝率14.3%、複勝率57.1%以下は4番人気まで好走ゾーン。上位人気馬が強い一方、22年14番人気1着ドゥラエレーデなど波乱もある。上位人気が基本線ではあるが、決めつけてもよくない。年の最後、忙しいときこそ集中力が求められる。

キャリア別成績,ⒸSPAIA


GⅠともなると、新馬勝ち直後のキャリア1戦は【0-0-1-13】複勝率7.1%と苦しい。とはいえ、朝日杯FSではランスオブカオスがキャリア1戦で3着。流れを考えると、データだけでばっさりでいいのか。アマキヒ、ジュタだって素質は決して見劣らない。

データの主力は2戦【4-5-2-32】勝率9.3%、複勝率25.6%、4戦【2-0-2-10】勝率14.3%、複勝率28.6%あたり。理想は新馬の後に、特別ないし重賞からGⅠといったステップだが、多少回り道しても問題はない。

加速ラップの前哨戦

理想のローテなら東スポ杯2歳Sで2連勝を決めたクロワデュノール、札幌2歳Sを勝ったマジックサンズ、アイビーSを制したマスカレードボールあたり。上位人気を形成する馬たちでもあり、注目だ。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別をみると、OP/L【3-2-3-11】勝率15.8%、複勝率42.1%、GⅢ【3-2-1-17】勝率13.0%、複勝率26.1%などOP以上の経験が問われる。

前走重賞・レース別成績,ⒸSPAIA


重賞レース別では東スポ杯2歳SがGⅢ時代も含めて【3-0-1-10】勝率21.4%、複勝率28.6%。コントレイル、ダノンザキッドが連勝し、21年からGⅡに昇格。22年ドゥラエレーデが4着から巻き返した。勝ち馬に限ると【2-0-1-1】。クロワデュノールも無傷で2歳シーズン突破なるか。

今年の東スポ杯2歳Sは逃げたサトノシャイニングが残るスローペースの展開。1000m通過1:00.9からラスト600mは11.3-10.9-11.2、計33.4の決め脚勝負に。好位から上がり33.3で勝ち切ったクロワデュノールは完成度の高さを示した。当時の馬体重は24kg増で504kg。成長期の勢いもあり、冬の中山のセオリーである「大型馬を狙え」にも一致しそうだ。本命候補筆頭でいい。

京都2歳Sは【1-2-0-8】勝率9.1%、複勝率27.3%。同じ右回り、コーナー4回の2000mだが、やはり中山とは勝手が違うか。1、2着【1-2-0-2】、3着以下【0-0-0-6】と好走が条件だ。

2着ジョバンニは戦線離脱したエリキングには離されたが、コーナーでの立ち回りは決して悪くなかった。連敗を喫したエリキングが不在なら出番が回ってくる。きょうだいはマテンロウアレス、セキトバイーストで、穴を開ける血統でもある。

前走OP/L・レース別成績,ⒸSPAIA


アイビーSは【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%。1~3着が【1-1-1-0】だからマスカレードボール、ピコチャンブラックは条件を満たす。

このレースもスローペースで進み、ラストは11.8-11.3-11.2、計34.3。数字では東スポ杯2歳Sほどではないが、理想に近い加速ラップを描いており、決してレベルは低くない。

ホープフルSと同舞台の芙蓉Sは【0-0-1-5】複勝率16.7%とそこまで強調できない。おそらく、アイビーSや京都2歳S、東スポ杯2歳Sと比べると、メンバーが集まらないことが要因だろう。今年は勝ち馬ジェットマグナム、2着馬レーヴドロペラが出走する。

1000m通過1:02.1、ラストは12.0-11.8-11.5。中山なので時計自体はかかったが、こちらもゴールに近づくにつれ加速している。2番手から粘り切ったジェットマグナムは人気以上の素質があるかもしれない。

GⅠ昇格後の過去7年のデータから見るホープフルS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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