【福島記念回顧】7歳アラタがタフな消耗戦を制し“三度目の正直” 展開読んだ大野拓弥騎手のアシストも光る
勝木淳
ⒸSPAIA
過去2回1番人気のアラタ
アラタが7歳26戦目で重賞初制覇を遂げた。重賞初挑戦は2020年弥生賞ディープインパクト記念。異例の無観客競馬2週目のこと。サトノフラッグの6着に敗れた。つづく青葉賞では14着。勝ったのはオーソリティ。アルゼンチン共和国杯を連覇し、2年後のジャパンC2着、翌年、ドバイシーマクラシック3着になる馬だった。その後、約9カ月休養。3歳春のダメージは大きかった。
復帰は4歳冬。ここから条件戦を駆けあがった。4連勝でオープン特別を勝利。21年福島記念ではその勢いをかわれ、1番人気に推された。ハンデは56キロ。チャンスだった。だが、パンサラッサの大逃げの前に3着。重賞の難しさを痛感する。翌年は札幌記念4着から福島記念へ。再び56キロを背負い、1番人気に支持された。今度はパンサラッサと同じ矢作厩舎のユニコーンライオンに逃げ切られ、またも3着。後半じわじわとペースをあげられ、展開に惑わされた。
翌6歳シーズンは金鯱賞3着、巴賞1着と活躍するも、福島記念へ向かわず、オールカマーを最後に休養へ。そして今年は13、5、7着と成績を落としていた。2年ぶり3度目の福島記念はハンデも57.5キロと増え、近走も踏まえ、7番人気と人気を落とした。ここまで14戦手綱をとった大野拓弥騎手の選択は後方待機。福島記念特有の読みにくい展開に対し、後ろで控えて機をうかがった。
福島記念らしい消耗戦
レースは伏兵ウインシュクランが先手を主張し、好位勢が追いかける形に。混戦のレース、特に福島で混戦とくれば、みんな意識は前に行く。序盤600m34.8と速めに入り、中盤もペースは落ちない。福島記念でよくみる大きな先行集団が形成され、前がひしめく展開になった。
スペースの奪い合いもあり、ペースは落ちることなく進み、1000m通過59.5、1600m通過1.35.7。アラタが敗れた2年前が1000m通過59.4、1600m通過1:36.0だから、先行勢に厳しい流れになった。
ここまで速く流れたため、残り400mは12.4-12.6で最後の直線は失速のステージへ。先行勢が崩れ、色気をもって先に動いた差し馬も脚を失くした。失速の局面で仕掛けたアラタはどんぴしゃり。念願の福島記念制覇を成し得た。
このレース特有の中盤まで一気に進む流れを読み切った大野拓弥騎手のアシストが光る。差し馬の仕掛けに定評がある騎手だが、その戦略に応えたアラタの執念を称えたい。
同一重賞に3度挑戦し、7歳で勝利を手にするなんてそうできることではない。7歳の平地重賞制覇は今年3勝目。22年11勝、23年6勝に比べると、やや少ないが、先日は8歳ハヤヤッコのアルゼンチン共和国杯制覇もあり、相変わらず高齢でも活力ある馬が増えた。ちなみに福島記念での7歳馬の勝利は01年ミヤギロドリゴ以来となる。
一瞬の動きに強いフェアエールング
2着フェアエールングも後方から追い込んだ。といっても、こちらは内枠から終始、内を進み、馬群を縫って最後に抜け出した。前走STV賞でも馬群をさばいて抜けており、直線が短く、一瞬の動きが勝敗を決する混戦で強い。ペースが速く、得意の先行策がとれないにもかかわらず、伸びてきたのは適性の賜物。小回り2000mは合う。父ゴールドシップは平坦巧者であり、今後も平坦ローカルの1800、2000m重賞で狙いたい。
3着ダンディズムも後方から進んだが、こちらは3コーナーから先に動き、厳しい流れに身を置いた分、最後に伸び負けた。といっても、小回り特有の時計を要する流れを先に動いて粘り込むのはダンディズムのパターン。仕掛けが早かったのはしかたない。むしろ自分の形を貫いた。レースが全体的に流れる小回りと好走パターンははっきりしている分、付き合いやすい。
1番人気ドクタードリトルは7着。こちらは小回りより直線が長いコース中心に使われており、適性の差が出た。位置取りは悪くなかったが、コーナーで置かれ、リズムを乱した。舞台替わりで見直そう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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