【エリザベス女王杯】本命は先行する競馬で本格化したシンリョクカ 穴馬はコンクシェルとサリエラ
山崎エリカ
ⒸSPAIA
先行馬が有利、穴は逃げ馬
京都開催時の過去10回ではっきりしているのはラスト5Fが遅いこと。3角手前の上り坂で一旦ペースが落ちて、そこからじわじわ加速する形になっている。この傾向は馬場が軽くても重くても同じで、馬場が軽い年はラスト2Fで最速のラップが刻まれている。
スローペースの傾向で馬場が軽い年ほど前の馬が押し切りやすく、京都開催の過去10回で先行~中団が7勝。2着馬は先行馬が5回、逃げ馬も2回。対して追込は1勝、3着は3回(内2回は重馬場)となっている。
追込馬の1勝は11年1番人気スノーフェアリー。ある程度の位置を取れないと勝ち負けまでは難しいうえに、逃げ馬の2着2回は7、9番人気といずれも人気がない。以上から中心は先行馬、穴は逃げ馬という想定で予想するのがベストだ。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 シンティレーション】
2走前に3勝クラスの新潟日報賞を勝利すると、前走の府中牝馬Sでも2着と好走した。前走は10番枠から出遅れて、軽く促されても進まず、後方外からの追走となった。道中も内には入れられず、ブレイディヴェーグをマークしながら3角へ。
3~4角でもブレイディヴェーグをぴったりマークして回る。直線序盤で追われたが、同馬に置かれてしまった。ラスト2Fで後方から中団には上がってくるが伸びは地味。ただラスト1Fでもしぶとく伸び、ブレイディヴェーグとの差をやや詰めて1馬身1/4差の2着だった。
本馬はエンジンがかかってからが強く、前走で自己最高指数を記録した。今回はブレイディヴェーグが不在。前走は超高速馬場のなか最後までしぶとく伸びていたことから距離が延びるのは悪くなさそうだ。
ただし、今回は前走で能力を出し切った後の一戦で、前進が見込みにくい。また後方からレースを進める馬はエリザベス女王杯で苦戦の傾向で、ここは割引とする。
【能力値2位 シンリョクカ】
デビュー2戦目の阪神JFでリバティアイランドの2着だった素質馬。激走の疲れが強く残り、その後は伸び悩んだが、今年3月の中山牝馬Sで3着と善戦した。次走の福島牝馬Sは、転倒するアクシデントに見舞われ競走中止。それでも、復帰戦である前走の新潟記念で重賞初制覇を成し遂げた。
前走は4番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促されると先頭列へ。外から競ってくるアリスヴェリテを行かせ、その外2番手を確保し、道中は同馬の3馬身ほど後ろを追走した。3~4角で同馬についていき、徐々に詰めてラスト2Fで先頭。ラスト1Fで外から迫るキングズパレスを振り切り、最後は中目をさばいたセレシオンに急追されたがハナ差で押し切った。
この時の新潟は外ほど伸びる馬場。最後の直線では外に進路を求める馬が多かった。そんななか、本馬は早めに仕掛けて外差し勢を振り切るという好内容だった。昨年のエリザベス女王杯は中団で進めて9着に敗れたが、疲れが取れて先行する競馬で本格化した今なら期待できる。今回の本命候補だ。
【能力値3位 ホールネス】
デビューから上昇一途で、格上挑戦のマーメイドSで3着に善戦すると、前走ではリステッド競走の新潟牝馬Sを勝利した。
前走は7番枠から五分のスタートを切り、中団中目の位置についた。道中はポツンと中団を追走し、3角で前との差を詰めていく。3~4角で前のエリダヌスが動いていったが、それを追いかけて進出し、直線序盤で同馬の外に誘導。追い出されるとじわじわ伸びて2列目に上がり、ラスト1Fで先頭のエリダヌスを捉え、1馬身差で完勝した。
本馬は4歳馬だが、これまで4度の休養もあってキャリアはまだ6戦。前走時はスタート後にモタつく場面があり完成度はあまり高くないが、それでもここまで出世したことは評価できる。まだ伸びしろが見込める馬で、よく見ておく必要がある。
【能力値4位タイ コンクシェル】
3歳時の2勝クラスで逃げてOP級の指数で圧勝したことがあるように、揉まれない競馬ができるととても強い馬。今年に入って初音Sと中山牝馬Sを連勝した。
5走前の初音Sでは5番枠から好スタートを決めて、そこから押していく。外から競ってくるセンタースリールに抵抗しながら進み、2番手についた。道中はセンタースリールから3馬身ほど離れた位置を追走。3~4角は同馬と2馬身差だったが、直線序盤で1馬身差まで詰めてラスト2Fで抜け出すと、突き抜けて3馬身差で圧勝した。
4走前の中山牝馬Sは7番枠からまずまずのスタートを切り、押してハナを主張する形に。道中はかなりのスローペースで主導権を握り、向正面でフィアスプライドがマクってくるとそれに抵抗して好位勢がペースアップ。4角でリードを広げて1馬身半差ほどで直線に向く。直線序盤で内からシンリョクカに1馬身1/4差まで迫られ、ラスト1Fでは外からククナに半馬身差まで詰められたが振り切った。
このレースは先行したヒップホップソウルが最下位に敗れているように、コンクシェルにも厳しい展開だったが、それでも勝利したことは評価できる。
3走前のヴィクトリアマイルは距離が短く、スムーズに逃げられず13着。前々走のクイーンSは惜敗の5着で、前走の府中牝馬Sも負けはしたが、しっかりと逃げており悪い内容ではない。今回は逃げ、先行馬が手薄。ここで自分の競馬ができればチャンスはある。今回の穴馬候補だ。
【能力値4位タイ キミノナハマリア】
今年1月、京都芝2000mの北大路特別(2勝クラス)で後続に1秒差の完勝。かなりタフな重馬場で行われたなか、OP級の指数を記録した道悪巧者だ。
ここでは9番枠から五分のスタートを切り、ゆっくりと好位の外へ進出した。向正面でマクったファジェスが先頭に立つと、本馬も位置を上げて2列目の外へ。3角で仕掛けてファジェスに並びかけ、4角で馬場の良い外に誘導しながら先頭に立った。序盤で2馬身のリードを奪うと、ラスト1Fでさらに差を広げ、2着馬に6馬身差をつけての圧勝。前半でゆったり運んで3角から仕掛け、最後の直線で後続を突き放す、豊富なスタミナを見せつける勝利だった。
近2走も雨の影響を受けた函館の五稜郭Sで1着、札幌芝2600mのリステッド競走・札幌日経OPで3着と、時計の掛かる馬場や長距離戦で善戦している。距離2200m自体は悪くないが、高速馬場では2勝クラスを勝ち切れなかったのが不安材料だ。また芝2600mの前走で前半3F38秒2とじっくりとレースを進めた後の一戦で、前の位置を取れない可能性もある。
もう一頭の穴馬は、変わり身期待のサリエラ
デビューから4戦3勝、5戦目の目黒記念でも人気薄の逃げ馬が残る前有利の展開を差して3着に入った素質馬。今年のダイヤモンドSでは後の天皇賞(春)勝ち馬を相手に2着と好走し、存在感をアピールしている。
3走前のダイヤモンドSでは8番枠からやや出遅れたが、コントロールしながら好位外目を追走した。道中は2番手のグランスラムアスクをマークしながら進み、3~4角でもペースが上がってこないなかで仕掛けを我慢。直線序盤でテーオーロイヤルにかわされ、ラスト2Fで抵抗し、差し返しそうな場面もあったが、クビ差及ばなかった。
この時のテーオーロイヤルは休養明けでトップハンデ58.5kgを背負っており不利な条件。サリエラはエンジンの掛かりが遅い馬で、3~4角で仕掛けていれば本馬が勝っていた可能性もあると感じさせる内容だった。
昨年のエリザベス女王杯は前有利な展開を序盤から位置を下げて、道中でもさらに後方2列目まで後退し、3~4角で大外を回す競馬で小差の6着に敗れたが、牝馬重賞なら上位の底力を持っている。
今回、先行意識が強いR.ムーア騎手に乗り替わるのは好ましい。また、国枝栄厩舎は特に状態が良い時に矯正馬具をつけるところがあり、昨年のエリザベス女王杯や今年のダイヤモンドSでチークピーシーズを着用していたが、近2走では外している。前走は休養明けで、ダメージが出るリスクを嫌ったのだろう。結果的に前走で能力を出し切っていないので、叩かれての変わり身が期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)シンティレーションの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
《関連記事》
・【エリザベス女王杯】GⅠ馬レガレイラ、スタニングローズは消し ハイブリッド式消去法
・【エリザベス女王杯】欧州血統由来の成長力と底力がキモ 適性舞台で末脚弾けるルージュリナージュ
・【エリザベス女王杯】過去10年のレースデータ
おすすめ記事