【アイビスSD】新潟芝1000mの新常識 最近流行の「1、2枠からの好走」に要注意

逆瀬川龍之介

新潟芝1000mの「1、2枠」×「追込み馬」の成績,ⒸSPAIA

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内枠の好走パターンを探る

昨年あたりから、新潟芝1000mの直線競馬で〝ニューウェーブ〟が起きていることにお気づきだろうか。2001年に新潟競馬場がリニューアルオープンされて以降、直線競馬といえば外枠超有利が常識。過去23回のアイビスサマーダッシュ(以降、アイビスSD)においても、8枠がダントツの8勝で、ワンツーも3回。対照的に1枠は未勝利で、2着すら一度もない。

ところが、昨今の直線競馬では今までになかった傾向が出ている。昨年から今年の春開催までの全30鞍を見ると、勝利数は1位が7枠の10勝、2位が8枠の6勝だから、これは従来と同じイメージ。しかし、外枠同士の決着は減少傾向にある。30鞍のうち、約4割を占める13鞍で1~2枠が馬券に絡んでいるのだ。

代表例が昨年のアイビスSD。1番人気は8枠16番のファイアダンサー、2番人気は8枠17番のシンシティ、3番人気は7枠14番のスティクス。やはり外枠が人気を集めたが、勝ったのは2枠3番のオールアットワンス、そして3着にも1枠2番のロードベイリーフが突っ込み、3連単は80万4,460円という波乱の決着になった。1~2枠の馬が2頭以上馬券に絡んだのは、レース史上初の珍事だった。

こういった〝変化〟はなぜ起きているのか。その要因はジョッキーの意識にあると考えている。内枠の場合、以前はなんとなく馬群の内寄りを追走し、外枠の各馬に伸び負けるというパターンが多かったように思える(騎手は反論するかもしれないが……)。

しかし、最近はどうか。一旦後方に下げて外ラチ沿いへ→レース終盤で馬群の中に進路を見つけて伸びる、という戦法がトレンドになっているのだ。

新潟芝1000m『1~2枠×追込馬』の成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1000m 『1~2枠×追込馬』の成績>
2014~22年【1-6-3-296】勝率0.3%/連対率2.3%/複勝率3.3%/単回収率1%/複回収率41%
2023年以降【2-3-2-48】勝率3.6%/連対率9.1%/複勝率12.7%/単回率90%/複回率97%

2023年以降の新潟芝1000m(計30鞍)では『1~2枠×追込馬』の好走が増えており、現在7頭が馬券に絡んでいる。2014~22年の同条件(計218鞍)で10頭だったことを考えれば、率は相当高くなっている。

前述した昨年の1&3着馬、オールアットワンスとロードベイリーフがまさにそうだった。今年でいえば5月18日の飛竜特別を制したオリアメンディ。黛弘人騎手は2枠4番から一旦下げて、スタートから1Fほどの地点では外ラチ沿いに誘導。残り300mから馬群を捌きながら伸びて、ゴール前でグイッと抜け出したのだ。繰り返すが、これは数年前には見られなかった勝ち方。直線競馬の〝内枠不利〟という特質に対し、騎手の対応力が追い付いたといえるだろう。

今年のアイビスSDも、おそらくは外枠の各馬が人気を集めるはずだ。しかし、近年の傾向を踏まえると外枠だけで馬券を組み立てるのはハイリスク・ローリターン。ヒモに内枠からアウト差しを試みそうな馬を忍ばせれば、思わぬ高配当にありつけるかもしれない。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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