【函館スプリントS】キミワクイーンが重賞初制覇! ロードカナロア産駒が函館芝1200mで買える理由とは

勝木淳

2023年函館スプリントS、レース結果,ⒸSPAIA

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先行、内優位という傾向

昨年、函館スプリントSをナムラクレアが勝利したことも手伝い、今年は桜花賞やトライアル以来の3歳牝馬が短距離適性と実績を見込んで3頭出走してきた。まして同レースはサマースプリントシリーズらしく牝馬が優勢。函館といえども開幕週の馬場はスピード優先で先行勢に分がある。札幌だった2年前も含め、ここ3年の決着時計は1分7秒台。今年の1:08.2は例年と比べるとやや時計を要した。開幕直前に雨が降った影響で少しソフトな状態だったこと、そして先行有利の心理が働き、全体的に前がかりになったことも要因だろう。

今年の開幕週芝1200mは内枠の先行馬が強く、1200mに限らず小回りでスキのない競馬が多い函館は、内枠に分があるだけに最後は内側に馬が殺到し、渋滞を起こしやすい。直線が短いので、最後までバラけにくく、詰まったまま進路を作れずにゴールなんて場面も多かった。函館でインを狙う以上、そのリスクはついて回り、抜け出すタイミングを計る間に外から出し抜けを食らうことも多い。そして、本レースもそんな典型的な競馬になった。

ファンタジーSを逃げ切ったリバーラはマイルを見据え控える競馬を試みてきたが、スプリント戦転向を機に本来のスピードを活かす競馬にシフトチェンジし、ハナを奪った。ダッシュ力抜群のテイエムトッキュウ、外枠から好スタートを切ったカルネアサーダ、ジャスパークローネも先行態勢を作り、全体的に好位に馬が殺到したため、前半600m通過33.0のハイペースになった。

後半600mは11.5-11.7-12.0と失速し、先行勢には厳しい形。こうなるとバテて下がる先行馬もあらわれ、ますますインを抜けるのは難しい。こういった乱戦を読んだかのようだったのが勝ったキミワクイーンだ。先行できる脚もあるが、外枠から内の動きを見て、控える作戦を選択し、内に入れることなく、スムーズに走れる外を通ってきた。レース全体の展開を読み、あえて逆を行く感覚はさすが横山武史騎手だ。

キミワクイーンにとってもハイペースで後半失速したことで、1:08.2という自身が好走できる時計になったのも大きい。1月のサンライズS、4月春雷Sは1:08.8で1、2着。昨年の札幌も1.09:3と時計面に課題を残す馬で、函館開幕週で速い時計になった際に不安があったが、ハイペースと横山武史騎手の嗅覚がその不安をかき消してくれた。サマースプリントシリーズを歩むだろう今後も走破時計によって取捨しよう。

函館芝1200mに強いロードカナロア産駒

父ロードカナロアは函館芝1200mが得意で、2018年~2022年までの5年間で20勝。2位ダイワメジャーが13勝なので、頭一つ抜けている。一方、同じ洋芝の札幌だとロードカナロア11勝でダイワメジャー9勝と差が詰まる。函館と札幌は同じ洋芝でもコース形態に差があり、コーナー半径が小さく、スタートから向正面を長く走る函館は前半600m区間に占めるコーナーの割合が少ないため、今回のようにハイペースを誘発しやすい。実際、函館スプリントSでは17年前半600m32.2、22年32.8と速い時計が記録される。反面、今年は差しが決まったが、コーナーがタイトで差し馬は勢いに乗せにくく、後ろから行くなら札幌の方が走りやすい。ロードカナロア産駒の成績の違いはここにあるのではないか。函館はハイペースでも前を行く馬に有利な舞台設定であり、スピードの持続力に長けたロードカナロア産駒に合う。

2着ジュビリーヘッドも同じロードカナロア産駒で、レース内容はキミワクイーンよりもモデルパターンに近い。ハイペースを前で踏ん張り、先に抜け出して見せ場を作った。キミワクイーンに上手く乗られてしまい、最後は差されたが、函館芝1200mで買える同産駒としてこれから先も参考にできる。まだ函館開催は5週間もある。ロードカナロア産駒と上手く付き合って、的中を稼ごう。ちなみにこのコースでジュビリーヘッドと同じ4枠だと、通算で【6-4-1-12】勝率は26.1%もある。

3着トウシンマカオは実績馬らしく、ハイペースを好位で受け、バテた馬をさばきながら、上手く馬群を抜けてきた。高松宮記念以来の実戦で最後は少し伸びを欠いたが、これを使って上向きそうだ。ビッグアーサー産駒もこのコースで【5-3-4-12】勝率20.8%。出走馬にいないか忘れずにチェックしよう。

2023年函館スプリントS、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。

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