【エプソムC】惜敗続きにピリオド、ここから反転攻勢! エピファネイア産駒ジャスティンカフェ、本格化へ

勝木淳

2023年エプソムカップ、レース結果,ⒸSPAIA

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底力勝負に強いジャスティンカフェ

上半期のGⅠも残すは宝塚記念の1レースになり、端境期にあるエプソムCは春に悔しい思いをした馬と、夏から秋へと飛躍を誓う馬たちによる争いといった構図になりやすい。降級制度が廃止されてからは強い4歳馬が安田記念へ向かい、エプソムCは以前ほど4歳馬が振るわない傾向があるが、今年は前走ダービー卿CTを勝った4歳インダストリア、同2着の5歳ジャスティンカフェが安田記念を除外され、こちらにスライド出走。少し例年とは違い、ハイレベルな組み合わせになった。

勝利したのはジャスティンカフェ。安田記念に出られなかった鬱憤を晴らすかのように重賞初制覇を飾った。4歳の昨年は昇級初戦でエプソムCに出走。前走の鋭い末脚を評価されて1番人気になるも4着、上がり最速33.5でも届かなかった。その後は1:44.1という高速決着だった毎日王冠で0.1差2着と好走し、改めてGⅠレベルの能力を示した。しかし、マイルCSでは内を突くも進路がなく、6着。年明け東京新聞杯4着、ダービー卿CT2着と歯がゆい状況が続いた。湘南Sのイメージから瞬発力勝負に強いタイプに見えるが、毎日王冠や今回のエプソムCのように東京のある程度流れる競馬が合う。

開催後半の稍重ながら前半1000m通過58.3。ショウナンマグマが先手を奪い、2ハロン目から5ハロン目まで11秒台が続くスキのない流れになった。後半600mは11.7-11.5-12.0、35.2と軽い瞬発力勝負ではなく、パワーと持続力を問われた。ジャスティンカフェは後方から徐々に動き、最後の直線で末脚炸裂。底力がないとできない芸当といってよく、好走条件がはっきり見えた一戦だった。返す返すも条件が合う安田記念除外は残念だった。

父エピファネイアはデアリングタクト、エフフォーリアと立て続けにクラシックホースを出し、早期から走れる印象も強いものの、現役時代は春二冠ともに2着。菊花賞と4歳ジャパンC4馬身差圧勝と、古馬になってから本格化した。父の父シンボリクリスエスの影響も強く、晩成型の血。むしろ、ジャスティンカフェはエピファネイアの典型だろう。軽めの競馬ではディープインパクト系に負けるが、底力勝負なら勝てる。基本的な能力値は高いので、買いどころさえつかめば、今後は付き合いやすくなる。


2、3着馬は同じく晩成型

馬場も合わさり、タフな競馬になったということは、2着ルージュエヴァイユの評価にもつながる。これまでのイメージを覆す2番手にとりつく積極策で、直線は相当粘り強い走りを見せた。これでキャリア9戦、オークスにも出走したジャスタウェイ産駒。もたつくレースもありながら、力をつけてきた。いかにも父ジャスタウェイと重なる。4歳6月に競馬の形を変え、力強い走りを披露した今回は、本格化のきっかけではないか。夏から秋へ。反転の合図と受け取り、次走以降も注目していきたい。

3着マテンロウスカイはこの日、新馬をダノンエアズロックが勝つなど好調だったモーリス産駒。適度に時計がかかる馬場もマッチしたものの、こちらも粘っこい走りに見どころたっぷりだった。1、2着と同じく奇しくもこちらも晩成型の血。4歳シーズン3、1、2、3着とその気配は十分漂っている。直線の長いコースでの粘りも父モーリスに重なる。小倉でも2勝2着1回と結果を残しているが、こういったタイプは直線の長いコースで恵まれる可能性が高く、やはり東京や外回りコースで狙っていくべきだろう。

2番人気インダストリアは7着と伸びを欠いた。前半から力んで走っており、脚を溜めきれなかった印象がある。前走ダービー卿CTなどを見ても、小回りで一瞬の切れを活かしたいタイプで、東京の持続力勝負は得意とはいえない。サマーマイルシリーズは最終戦の京成杯AHまで直線の長いコースが続くので、立て直すとすれば京成杯AHだろう。

驚いたのは16番人気4着レクセランスだ。5着エアロロノアと同じ上がり2位の末脚を繰り出し、3着マテンロウスカイにクビ差まで迫った。1800m戦出走はデビュー戦以来で、近走は長距離中心のローテと好走イメージが湧きにくかった。中盤までは久々の中距離戦で追走しにくく、順位を下げていったが、最後の直線は外を伸びた。この好走もエプソムCが持続力勝負でスタミナを問われる競馬だったことを示す。サマー2000シリーズで馬場が悪くなった際など狙いどころはある。


2023年エプソムC、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。

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