【エプソムC】前有利のコースで先行力が生きる 前走で厳しい流れを経験したショウナンマグマの巻き返しに期待

山崎エリカ

2023年エプソムC出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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逃げの複勝率50%、真ん中より後ろからでは届かない

エプソムCは春の東京開催16日目。高速馬場なら各馬が内を開けて走る外差し傾向になる。しかし、初角を斜めに入る東京芝1800mのコース形態から、先行馬(特に内枠)が活躍している。

過去10年でかなりのスローペース4回、平均ペース3回、ややスローペース2回。不良馬場だった2020年こそハイペースだったが、良~重馬場なら平均ペースより遅くなる傾向だ。逃げ馬不在の2019年は前半4F51秒3-後半4F45秒2の超絶スローペースになったが、大半は前半4F47秒台~48秒くらい。

ペースが平均よりも遅く、上がりが速くなるため、過去10年で逃げ1勝、先行5勝、中団4勝、差し、追込の優勝はゼロと、真ん中よりも後ろの位置からでは届かない。追込馬の2着は2回あるが、逃げ馬の複勝率が50%もあることから、前目が有利なレースと言える。

能力値1~5位の紹介

2023年エプソムC出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ジャスティンカフェ】
昨秋の毎日王冠2着馬。同レースは9番枠からやや出遅れ、そこからもあまり進んで行かず後方2番手を追走。3~4角の少しペースが落ちたところで後方外から進出。前のポタジェに追いついて4角ではその外につけ、キングストンボーイの後ろ、後方2列目で直線へ。序盤で追い出されるとすっと伸びてラスト2Fでは2列目の外3番手。ラスト1Fで前2頭を捉えたが、最後に内を捌いてきたサリオスに交わされ、半馬身差の2着に敗れた。

本馬が毎日王冠で記録した指数は、今回のメンバーではトップタイ。今回と同じ舞台になるが、当時は後方からだったが道中で前からあまり離されず追走し、3~4角では前との差をロスなくスムーズに詰めている。実質、中団くらいの位置からの競馬で100点満点の騎乗だった。そこを考えると今回も当時と同じ騎乗が出来るかは疑問である。

本馬は横山典弘騎手に乗り替わった7走前から末脚勝負に徹することで安定感が増し、着実に地力を付けてきた馬。昨秋の毎日王冠以降も、マイル重賞で小差のレースが出来ている。昨年のこのレースでもやや出遅れ、最初から最後方に下げて、最後の直線で馬場の悪い最内を狙う形でクビ+クビ+クビ差の4着に善戦したように、今年も善戦するとは見ているが、大外一気が難しいこの舞台では取りこぼす可能性もある。

【能力値2位 マテンロウスカイ】
前々走で芝1800mの難波S(3勝クラス)を勝利し、前走はOPのメイSで2着と上昇中の馬。前走は8番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚でドーブネなど内外の各馬を楽に制してハナを主張。そこからも淡々と緩みないペースで逃げ、3角では2列目に約4馬身差を付けた。ここでやや息を入れ2列目の仕掛けを待ち、2馬身差のリードで直線へ。序盤で後続を離しにかかったが、内を捌いてきたサクラトゥジュールに食らいつかれ、最後はクビ差捉えられた。

前走はクビ差の2着だったが、3着馬には3馬身差を付けており、重賞でも勝ち負けになる指数を記録。今回も有利な内枠から逃げられるのはいいが、前走はオークスが開催された週で超絶高速馬場だった。今回は間違いなく当時よりも時計が掛かる。本馬は稍重で時計の掛かる馬場で行われた昨秋のセントライト記念では最下位13着と崩れていることから、馬場がタフになるほど不安がある。

【能力値3位 インダストリア】
前走のダービー卿CTで初重賞制覇を達成した馬。前走は8番枠から五分のスタートを切り、そこから無理をさせずにじわっと流れに乗って中団外目を追走。3~4角でも前がペースを引き上げなかったため、ここで好位の外まで進出し、4角で仕掛けて3列目付近で直線へ。そこからジリジリ伸びてラスト1Fでは2列目。ラスト1Fですっと抜け出し、3/4差で完勝した。

前走はジャスティンカフェが終始本馬をマークしていたが、最後まで寄せ付けなかったことは評価できる。また本馬は二の脚は遅いが、長く良い脚を使える馬。芝1800mで3番枠なら好位を取れる可能性もある。しかし、4走前のダート戦で大敗していることから、やはり雨は懸念材料。前走で自己最高指数を記録した後の一戦で、上昇が見込みにくい点からも過大評価は禁物だ。

【能力値3位 エアファンディタ】
前々走は阪神芝1800mの大阪城S(L)2着、前走は京都芝1800mの都大路S(L)1着と今年に入っての2戦が光る馬。前走は8番枠から五分のスタートを切ったが、そこからコントロールして後方2列目の外を追走。向正面で中団の外まで上がり、3~4角ではルペルカーリアの後ろまで押し上げ、4角出口で外に出した。直線序盤で軽く追われると4番手まで上がって、ラスト1Fでそのまま伸びてアドマイヤハダルをクビ差捉えて勝利した。

本馬はゲートが甘く、その後の進みも悪いので今回もテンで置かれて後方からになる可能性が高い。3~4角で加速する阪神芝1800mなら、前々走の大阪城Sのように大外一気でも通用するが、今回の舞台では届かない可能性が高い。またこれまでの戦歴を見ると、稍重馬場では不振で、時計の掛かる馬場で行われた昨年のマイラーズCで11着と大敗している点が気になる。東京コースの今回は1番人気で5着に敗れた2年前のキャピタルSのようになってしまいそうだ。

【能力値5位 レインフロムヘヴン】
2、3歳時にエフフォーリアの2着やイルーシヴパンサーを倒す実績があったが、ここへ来て本格化した馬。前走の府中Sは4番枠からやや出遅れたが、そこからじわっと差を詰めて中団馬群の中目を追走。2角で内目を通って好位の直後まで上がり、3~4角で徐々に差を詰めて直線序盤では2列目。ラスト2Fで追い出されると、ラスト1Fで一気に先頭に立ち、そのまま押し切って1馬身半差で勝利した。

前走はかなりのスローペースで、レース最速がラスト3F地点という仕掛けが速いレースだった。この流れを早めに動いて押し切ったことは評価できる。長めの距離を多く使われており、馬場がタフになってスタミナ比べになるのは悪くない。前走で自己最高指数を記録した直後でさらに奥があるか、天井が問われる一戦だ。

【能力値5位 ガロアクリーク】
昨年のエプソムC2着馬。同レースは8番枠から少し出遅れ中団やや後方の外を追走。3~4角で前のトーセングランが仕掛けていったので、それについて行き、直線はスムーズにその外へ。序盤は追われてもジリジリだったが、そこからしぶとく伸びてラスト2Fでは2列目。内から粘るノースブリッジにクビ差まで食らいつき2着と好走した。

昨年のこのレースは脚部不安による8ヵ月半の休養明けで中山記念を使い、長期休養明け3戦目での2着。当時は外枠で最後の直線で上手く馬場の良い外に出せると見て本命とした。しかし、今年は脚部不安による1年の休養明けで目標はこの先。この中間の追い切りは重苦しさをそこまで感じさせなかったが、6ヵ月の休養明けとなった一昨年のこのレースでは12着に大敗している。今回はマイナス材料が多すぎる。

穴馬は前走で厳しいペースを先行したショウナンマグマ

【ショウナンマグマ】
芝1800mでは1勝クラス時に逃げて8馬身差で圧勝した実績があり、昨年のディセンバーS(OP)も勝利した馬。同レースは2番枠からまずまずのスタートだったが、そこから押してハナを窺う形。最終的には外のノルカソルカを行かせて、やや離れた2番手を追走した。3~4角では2列目の外から動き、4角で一気に先頭から半馬身差まで詰めて、直線序盤で先頭。そこから抜け出しを図った。最後に馬群を捌いて伸びてきた2着馬に3/4差まで詰め寄られたが、年末のタフな馬場でかなりのハイペースだったことを考えると好内容だった。

本馬が芝1800mで唯一、馬券圏外に敗れたのは相手が強かった今年の中山記念だけ。ここでも2番手からレースを進め、勝ち馬ヒシイグアスから0.3秒差と崩れていない。スタミナが不足する休養明けの前走の新潟大賞典は、極悪馬場でセイウンハーデスのオーバーペースを追い駆けたため13着と崩れた。しかし、前走の厳しい経験は今回の粘り強化に繋がるはず。先行できる強みもあり、得意条件のこの舞台なら巻き返し濃厚。安田記念を除外された馬たちの出走で、レースレベルが上がったが今回の本命候補としたい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジャスティンカフェの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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