「複回108%」武豊騎手、「単回308%」ルメール騎手が双璧 京都芝3000mを徹底分析
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コーナー6回、名物「淀の坂越え」も2回
今週末は京都芝3000mを舞台に菊花賞(GⅠ)が行われる。前哨戦の神戸新聞杯を上がり32.3秒で快勝したエリキングを筆頭に、新潟記念で古馬相手に2着と善戦した青葉賞馬エネルジコ、ダービー3着の京都新聞杯勝ち馬ショウヘイら実績馬に加え、直近2年続けて好走馬が出ている日本海ステークス勝ち馬のゲルチュタールなど、最後の一冠を目指す戦いも楽しみなメンバーが揃った。
京都芝3000mが舞台のレースといえば、クラシック最終戦・菊花賞(GⅠ)と、今年は中京を舞台に行われた万葉ステークス(OP)、そして古都ステークス(3勝クラス)の3レース。今回は同コースの特徴をデータで分析していく。なお、使用するデータは2000年以降のものとする。
まずはコース紹介。京都芝3000mは外回りコースを使用。向正面の3コーナー手前、上り坂部分からスタートし、わずか200mで3コーナーに到達する。3コーナーは上りで、4コーナーにかけては淀の名物といえる下り坂へ。これを無事に回り切るとホームストレッチへ突入する。大歓声のスタンド前で、冷静に折り合いをつけて走れるかどうかがひとつのポイントだ。
その後は1コーナー、2コーナーと回ってバックストレッチへ。そして2回目の3コーナーに差し掛かるところで高低差4.3mの坂を再び上り、4コーナーにかけて下ってゆく。最後の直線は平坦で、全長は403.7m(Aコース)となっている。
改修前は内枠有利の傾向も…

<京都芝3000mの枠順別成績>
1枠【6-4-5-59】
勝率8.1%/連対率13.5%/複勝率20.3%/単回収率130%/複回収率72%
2枠【8-8-8-53】
勝率10.4%/連対率20.8%/複勝率31.2%/単回収率85%/複回収率81%
3枠【7-8-5-59】
勝率8.9%/連対率19.0%/複勝率25.3%/単回収率88%/複回収率71%
4枠【7-2-7-65】
勝率8.6%/連対率11.1%/複勝率19.8%/単回収率58%/複回収率68%
5枠【2-6-5-70】
勝率2.4%/連対率9.6%/複勝率15.7%/単回収率14%/複回収率42%
6枠【4-7-7-67】
勝率4.7%/連対率12.9%/複勝率21.2%/単回収率61%/複回収率95%
7枠【9-8-10-84】
勝率8.1%/連対率15.3%/複勝率24.3%/単回収率31%/複回収率57%
8枠【8-8-4-95】
勝率7.0%/連対率13.9%/複勝率17.4%/単回収率118%/複回収率55%
※2000年以降
枠別成績では1〜3枠が複勝率25.7%、4〜6枠が同18.9%、7〜8枠が同20.8%で内枠>外枠>中枠という成績になっている。京都芝3000mはコーナーを6回通過するため、コースの内側を通って外々を回すロスを軽減することが重要。そのため、ポジションを主張すれば自然に内側を走れる内枠の有利が大きい。
しかし、コーナーのロスを軽減したいのは外枠の馬も一緒。序盤で内側へ切れ込んでポジションを確保しようとする馬も出てくる。となると、内枠と外枠の馬に挟まれる中枠が一番不利になるという仕組みだ。
ただし、改修工事完了後の2023年以降では1〜3枠が8.3%で4〜6枠は14.8%、7〜8枠は40.9%と外枠が非常に強い。実際に昨年の菊花賞も7枠→8枠→8枠の外枠3頭で決まっている。
要因としては、改修によって4コーナーが緩やかになり、馬群が凝縮しやすくなったため、内枠の馬の馬群を捌く難易度が上がったことなどが考えられる。昨年の菊花賞で1番人気に支持されながら6着に敗れたダノンデサイルは、まさにその典型といった負け方だった。今年の菊花賞も外枠を減点するのではなく、むしろ「買い要素」と考えたい。
軸に最適な位置取りと注意点

<京都芝3000mの脚質別成績>
逃げ【5-3-6-45】
勝率8.5%/連対率13.6%/複勝率23.7%/単回収率163%/複回収率93%
先行【23-21-19-114】
勝率13.0%/連対率24.9%/複勝率35.6%/単回収率117%/複回収率103%
差し【16-19-18-207】
勝率6.2%/連対率13.5%/複勝率20.4%/単回収率49%/複回収率62%
追込【3-7-6-175】
勝率1.6%/連対率5.2%/複勝率8.4%/単回収率19%/複回収率27%
マクリ【4-1-2-9】
勝率25.0%/連対率31.3%/複勝率43.8%/単回収率275%/複回収率124%
※2000年以降
脚質別成績では、セオリー通り逃げ・先行が強い。最終直線が400mと長いため、後方一気が決まりそうなイメージもあるが、実際はその逆であるようだ。
具体的に4コーナー3番手以内の馬は単回収率123%、複回収率82%と勝負所で前方にいることが重要。そのためマクリ戦法も有効であり、複勝率は40%オーバーで回収率も単複ともに100%超えとなっている。
しかし、改修後の脚質別成績では逃げ【1-0-0-6】複勝率14.3%、先行【2-0-2-10】同28.6%、差し【1-4-3-22】同26.7%、追込【1-1-0-19】同9.5%と、逃げ馬の優位性が薄れ、先行馬と差し馬の差もほとんど無くなっている。
これも枠と同様に改修の影響がひとつの要素として考えられ、4コーナーが緩くなったことで後方勢の外を回すロスが小さくなったため、以前よりも差し追込が決まるようになったのではないか。今週の菊花賞でも差し追込馬に要注意だ。
武豊騎手の庭

<京都芝3000mの騎手別成績>
武豊【8-4-8-17】
勝率21.6%/連対率32.4%/複勝率54.1%/単回収率74%/複回収率108%
C.ルメール【4-1-1-3】
勝率44.4%/連対率55.6%/複勝率66.7%/単回収率308%/複回収率162%
酒井学【3-3-0-11】
勝率17.6%/連対率35.3%/複勝率35.3%/単回収率114%/複回収率99%
和田竜二【3-1-2-24】
勝率10.0%/連対率13.3%/複勝率20.0%/単回収率122%/複回収率91%
■武豊騎手
京都といえばこの騎手。2000年以降の菊花賞(京都開催)では【3-1-4-13】複勝率38.1%、複回収率109%と素晴らしい成績を誇る。
エアシャカールやディープインパクト、ワールドプレミアといった人気馬で勝ち星を挙げているのはもちろん、昨年のアドマイヤテラ(7番人気3着)や2018年ユーキャンスマイル(10番人気3着)など、人気薄でもキッチリ馬券に絡んでいるのが素晴らしい。
逃げ、先行、差しと幅広い脚質で複勝率50%を超えている点も好感で、このコースでの信頼度は高い。
■C.ルメール騎手
菊花賞といえばこの騎手、と言っても過言ではない。アーバンシック、ドゥレッツァ、フィエールマン、サトノダイヤモンドで計4勝を挙げ、通算【4-1-1-2】勝率50.0%、複勝率75.0%で単回収率347%、複回収率182%と圧倒的な成績を残している。
今年はエネルジコとのコンビで、勝利した昨年と同じシルクレーシングの勝負服で大一番に臨む。今年もこの騎手に逆らうのはなかなか難しいだろう。
■酒井学騎手
単回収率は114%とプラス域をマーク。菊花賞は2014年にトーホウジャッカルで制している。
なかでも1〜4枠【3-1-0-4】複勝率50.0%、複回収率116%で5〜8枠は【0-2-0-7】複勝率22.2%、複回収率84%と内枠で狙いたい。
■和田竜二騎手
近年ではディープボンドとのコンビで長距離路線で活躍。菊花賞も勝利こそないが【0-1-2-10】複勝率23.1%、複回収率157%と素晴らしい成績を残している。
馬券絡みを振り返ってみると、2007年アルナスライン(6番人気2着)と2008年ナムラクレセント(9番人気3着)で2年連続の激走。そこから少し空いて2017年にポポカテペトル(13番人気3着)でも大穴を開けた。全て5番人気以下の人気薄で馬券に絡んでおり、人気薄でも紐で押さえておく価値がある。
菊花賞で使えるデータ4選

<京都開催の菊花賞の条件別成績>
前走新潟芝2200m【1-1-2-15】
勝率5.3%/連対率10.5%/複勝率21.1%/単回収率38%/複回収率113%
前走神戸新聞杯×上がり最速【8-3-0-8】
勝率42.1%/連対率57.9%/複勝率57.9%/単回収率148%/複回収率93%
前走セントライト記念で5〜8枠×先行【2-1-1-14】
勝率11.1%/連対率16.7%/複勝率22.2%/単回収率169%/複回収率80%
皐月賞5着以内×前走3着以内【9-4-5-18】
勝率25.0%/連対率36.1%/複勝率50.0%/単回収率79%/複回収率88%
※2000年以降
最後に今年の菊花賞で使えるデータを4つ紹介する。
■前走新潟芝2200m
ドゥレッツァ、ヘデントールと2年連続で連対馬を出しており、いま最もアツいローテーションと言っても過言ではない。
先述した2頭以外にも、2018年ユーキャンスマイル(10番人気3着)や2017年ポポカテペトル(13番人気3着)といった人気薄も好走している。
菊花賞に繋がりやすい理由としては、新潟芝2200mが「長く良い脚を使う力」を求められる戦いになりやすいということが考えられる。今年の該当馬はアマキヒとゲルチュタールの2頭だ。
■前走神戸新聞杯×上がり最速
「速い上がりが使えるか」は絶対能力を測る上で非常に有効な指標であり、神戸新聞杯で速い上がりを使った馬はそのまま菊花賞でも好走しやすい。
勝率は驚異の42.1%、単回収率も148%とプラス。なお、上がり最速×1着で【3-1-0-3】、上がり最速×2着でも【1-2-0-5】、上がり最速×3着も【4-0-0-0】と着順に関係なく好走馬を輩出している。今年の該当馬はエリキング。人気が予想される一頭だが、順当に好走してきそうだ。
■前走セントライト記念で5〜8枠×先行
キタサンブラックやアーバンシックなどを出している東の前哨戦・セントライト記念。秋の中山開催の序盤に行われる重賞であるため、内有利の馬場になりやすく外枠は不利になりやすい。
また、残り1200mから1000mほど下り坂が続くため、道中のペースが緩みにくく、先行馬には苦しいペースになりやすい。すなわち、セントライト記念で外枠に入った先行馬は、馬場と脚質の不利をダブルで受けることになる。
これを乗り越えて菊花賞へ駒を進めた馬はまずまず優秀な成績を残しており、単回収率100%オーバーを記録。前述したキタサンブラックのほか、マンハッタンカフェもこの条件に該当していた。
今年の該当馬はレッドバンデ。セントライト記念は少頭数だったとはいえ6枠8番から先行し、直線で不利を受けながらも勝ち馬と0秒1差の3着に好走した。
実は2走前の稲城特別(1勝クラス)が非常に優秀で、全体時計2:24.3でラスト1000mは57.8秒。昨年の菊花賞で2着と好走し、今年の天皇賞(春)を勝利したヘデントールも同時期・同コースで行われた町田特別を勝利しているが、その時の全体時計は2:26.9でラスト1000mも57.9秒だった。
一概に比較はできないが、今年のレッドバンデの記録はともにヘデントールの数字を上回っており、好勝負を演じる資格はある。持ち前の長く良い脚が活きる流れになれば、一発あってもいい。
■皐月賞5着以内×前走3着以内
皐月賞はダービーよりも菊花賞に直結しやすい。その証拠に、「皐月賞と菊花賞」を制した二冠馬は8頭いる一方、「日本ダービーと菊花賞」を制した二冠馬は2頭しか存在しない。中山芝2000mを好走する上で重要な要素が小回りコースを上手く立ち回る器用さと持続力で、これは京都芝3000mの菊花賞にも通ずる強みになる。
実際、京都開催の菊花賞に皐月賞5着以内の馬が出走した際の成績は【9-6-7-37】複勝率37.3%と高水準。その後に調子を崩した馬や、フロックで皐月賞上位に入った馬を除外するため、「前走3着以内」で絞り込むと【9-4-5-18】複勝率50.0%、複回収率88%の好成績となる。
今年の該当馬はジョバンニ。前走の神戸新聞杯は上がり33.1を使って3着と、不得意な瞬発力勝負で敗れた形。菊花賞は極端な瞬発力勝負にはなりにくく、皐月賞やホープフルステークスで見せた持続力、持ち前のレースセンスを発揮できれば、前走で先着を許した2頭と着順が入れ替わってもおかしくない。
《ライタープロフィール》
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約30年にわたる伝統をも大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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