【菊花賞】「ダービー大敗の皐月賞5着以内馬」は複回収率177% データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

菊花賞 データで探す穴馬,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の京都メインは牡馬クラシック最終戦・菊花賞。全馬にとって未知の3000mという距離で行われるGⅠ競走だ。

今年はダービー馬クロワデュノールが凱旋門賞へ遠征したほか、ミュージアムマイル、マスカレードボールも天皇賞(秋)に向かうため不在。エリキング、エネルジコを筆頭に粒ぞろいのメンバーではあるが、例年よりは混戦ムードが漂っている。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。

菊はダービーより皐月賞とつながる ジョバンニ

まず1頭目はジョバンニ。2歳時からホープフルSでクロワデュノールの2着に入った実力馬で、この春は皐月賞4着、日本ダービー8着だった。

菊花賞と春二冠との相関を調べると興味深い傾向がある。「皐月賞の着順」は菊花賞での成績に直結するが、「ダービーの着順」はそうでもないのだ。データで示そう。

菊花賞 春二冠での着順別成績,ⒸSPAIA


過去10年の当レースにおいて、皐月賞1~5着馬は【6-3-4-11】複勝率54.2%、複回収率139%、同6着以下馬は【0-1-1-41】同4.7%、複回16%。皐月賞で善戦した馬は菊花賞でも期待できるし、掲示板外に敗れた馬はほとんど反撃がない。

ところが、日本ダービー1~5着馬は【3-3-3-16】複勝率36.0%、複回62%に留まり、同6着以下馬が【3-3-2-45】同15.1%、複回59%。好走率はさすがに違うが、回収率で考えるとダービーの着順はほぼ無視していいくらいだ。

この違いはおそらく、皐月賞と菊花賞がどちらも「操縦性」と「持続力」の高さを問うのに対し、日本ダービーはもっと純粋に、長い直線で繰り出す末脚の爆発力を競うレースだからだと思う。質的につながりやすいのは皐月賞の方だ。

また「皐月賞5着以内」かつ「日本ダービー6着以下」だった馬は【3-1-1-6】複勝率45.5%、複回177%と妙味抜群。キタサンブラック、タイトルホルダー、アーバンシックなどがこのパターンだった。皐月上位の地力がありながら、ダービーの負けで評価を落とした馬。これがいれば狙っていきたい。

今年はジョバンニが唯一該当する。皐月賞4着は向正面で他馬と接触、4角でもミュージアムマイルが外に出てきて1頭分余計に振られるロスがあった。日本ダービー8着はレース前からテンションが高く、折り合い重視の中団待機でそのまま流れ込むだけの不完全燃焼なレースだった。

神戸新聞杯は3着に敗れたが、レース上がり33.1秒という極限の瞬発力勝負でキレ負けした感じ。1000m通過62.6秒のスローで折り合えたのは本番に向けて大きな収穫だった。まだ決して見限れない。

2200mの2~3勝クラス勝ち馬を今年も ゲルチュタール

2頭目はゲルチュタール。青葉賞でエネルジコと0.1秒差の3着に終わったが、その後2連勝。古馬相手に3勝クラスの日本海Sを勝ってここに臨む。一昨年1着ドゥレッツァ、昨年2着ヘデントールと同じローテだ。

菊花賞 春二冠での着順別成績,ⒸSPAIA


菊花賞には「2200m実績馬が穴を開ける」という法則がある。芝2200m戦で勝利歴があった馬は過去10年の当レースで【4-5-5-39】複勝率26.4%、複回収率110%だ。

「セントライト記念勝ち馬が走っているだけでは?」と思うかもしれないが、内訳を見るとそうではない。数字を押し上げているのは「芝2200mの2~3勝クラスを勝った馬」で、その成績は【1-3-4-6】複勝率57.1%、複回収率267%である。

一概に2~3勝クラスといっても、2600m戦はメンバーがやや手薄になりやすい。推論になるが、2200mは長距離戦に近いペースを経験しつつ、比較的レベルの高い相手と戦って力を測れる絶妙な距離なのではないだろうか。

……と、昨年も全く同じデータを紹介したところ、該当馬のヘデントールが4番人気2着、アドマイヤテラが7番人気3着と穴を開けた。であれば再度、同じパターンを狙ってみたい。

今年はゲルチュタールとアマキヒの2頭が該当する。どちらもマークしたいが、当記事では青葉賞の直接対決で先着したゲルチュタールを推奨しておく。

前走の日本海Sは1000m通過こそ60.6秒と平均的だったが、残り1000mから11.6のラップが入る早仕掛け戦。開催後半で外差し有利だったトラックバイアスも加味すれば、もっと外から差されてもおかしくない状況だった。それを4角先頭からクビ差とはいえ押し切った事実は高く評価したい。

芝長距離で花開くレイデオロ産駒 エキサイトバイオ

最後はエキサイトバイオ。ラジオNIKKEI賞を勝ってきた重賞馬だが、どうにも評価は上がっておらず、2桁人気で本番を迎えることになりそうだ。

菊花賞 春二冠での着順別成績,ⒸSPAIA




その父レイデオロは現4歳が初年度産駒。アドマイヤテラ、サンライズアースを輩出するなど長距離戦に強く、芝2500m以上では【9-8-2-18】複勝率51.4%と見事な成績だ。複回収率は92%とわずかにプラス圏内に届かないが、ざっくり「前走1.5秒以上負けた馬」を除くだけで【9-8-2-9】同67.9%、複回122%と黒字化する。

今回もう1頭のレイデオロ産駒マイユニバースとはあずさ賞で対決し、伸びないインを突いてクビ差2着。想定されるオッズ差も踏まえ、コチラを推奨する。

母アニメイトバイオも阪神JF2着、秋華賞2着の実績馬だが、その半弟にも菊花賞2着、天皇賞(春)勝ち馬のレインボーラインがいる血統背景。父のデータも含め、3000mで躍動する可能性がある。

《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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