【血統で見抜く新馬の力】重賞勝ち馬輩出のシンハリーズ牝系から牝馬が初陣 実践向きで初戦から期待
貴シンジ

今週デビュー予定の注目新馬
出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。
従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで当コラムでは血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。
9/6(土) 札幌 5R・芝1500m ニルマーネル

日本での牝祖は祖母シンハリーズ。同馬はイギリス産馬だが現役時はアメリカで過ごし、デルマーオークス(GⅠ・芝9F)を勝利したほか、シーザリオが勝ったアメリカンオークス(GⅠ・芝10F)でも3着した実績馬だ。
シンハリーズは繁殖としても優秀で、JRAで出走した10頭は勝利。そのうち3頭は重賞を勝利しており素質の高さも十分だ。シンハライトの末脚のイメージが強い血統だが、持ち味はパワーと末脚の持続力でタフな馬場や急坂コースもこなせるのが強みだ。
本馬の母ポロンナルワは競走馬としては活躍できなかったが、繁殖としてはディーパワンサ(父ディープブリランテ)、アヌラーダプラ(父キングカメハメハ)などの活躍馬を輩出しており、シンハリーズの活力をしっかり伝えている。
母父のRahyが日本の種牡馬と相性が良く、機動力の高い産駒が目立っている。本馬は父にモーリスを迎えた。モーリスも持続性能の高さやパワーのある産駒を輩出するタイプで、ポロンナルワとの相性は良いだろう。馬格がなく人気はしないタイプだが、実践向きの血統のため積極的に狙ってみたい。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1200~1600m/ベスト1400m
・能力:スピードA/瞬発力A/パワーS/持久力S
・同タイプ:スリーパーダ
・特徴:高い末脚の持続性能/ハイペースに強い
※持久力=スピードの持続力
9/7(日) 中山6R・ダート1800m ルミテュット

日本での牝祖は3代母ウェイブウインドだが、祖母シラユキヒメを根幹としてファミリーが広がっている。本馬は鹿毛だが白毛遺伝子を持っていることでも有名なファミリー。日本に入ってくる前は6代母Milongaを根幹として北米を中心に広がりを見せていた。
Milonga自身はイタリアで走った馬で、現役時にはイタリアオークス2着の実績がある。北米で広がった牝系ではあるもののダート一辺倒というわけではなく、Milongaの良いところをしっかり継承した芝での活躍馬も出ている。
日本ではナックビーナスもこのファミリーだ。本馬の近親にはソダシ、ハヤヤッコなど重賞馬が多数おり、活力は抜群の血統と言える。
母ユキチャンは現役時に関東オークス、TCK女王杯、クイーン賞と3つの地方交流重賞を勝利した実績馬だ。繁殖としても優秀で羽田盃勝ち馬のアマンテビアンコ(父ヘニーヒューズ)を輩出している。
母父クロフネで牝系由来のスピードの持続性能をさらに強化しており芝、ダートどちらでも活躍馬を輩出できそうだが、本馬は父ルヴァンスレーヴのためダートの中距離がベストだろう。
牝馬ながらパワーがあって身体は立派。ギアが一気に上がるタイプではないため調教ではそこまで動いていないが、実践にいけば持ち前の持続性能の高さを発揮できるだろう。メンバーは揃った新馬戦だが勝ち負けまである。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:ダート
・距離適性:1800~2200m/ベスト2000m
・能力:スピードA/瞬発力B/パワーS/持久力S
・同タイプ:アマンテビアンコ
・特徴:高いスピード持続力/均一ラップが得意
※持久力=スピードの持続力
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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