快速ファミリーから注目馬がまた一頭、名牝クロノジェネシスの初仔も登場 血統で見抜く新馬の力
貴シンジ

今週デビュー予定の注目新馬
出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。
従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで今回は血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。
7/19(土)小倉5R・芝1200m フルムーン

日本での牝祖は祖母ムーンライトダンス。アイルランドを中心に広がりを見せた牝系で、4代母Bubinkaを根幹としている。
ファミリーにはアイルランド2000ギニーやジャックルマロワ賞を勝ったRomanised、香港カップにクイーンエリザベス2世カップ勝ちなど香港の中距離GⅠで4勝を挙げたDesigns On Romeのほか、オーストラリアのC.F.オーアステークスを制したAlabama Expressもいる。
さらに祖母ムーンライトダンスの半兄にはアイルランドダービーとタタソールズゴールドカップを制したGrey Swallowもいて、ファミリーの活力は相当高い。
芝適性が高く、スタミナとスピードを兼ね備えているのが特徴。また、父の強みを引き出すのも得意で、万能性もある牝馬が多い。掻き込むタイプの走り方も特徴のひとつで、タフな馬場でもしっかりと掴んで走ることができる。仕上がりの早さも魅力だ。
母ムーンライトベイはノーザンファームの出身だが、天羽牧場に移ってから2019年桜花賞2着のシゲルピンクダイヤ、2021年フィリーズレビュー勝ち馬シゲルピンクルビーを輩出している。
フルムーンは父にロードカナロアを迎えた。牝系を考えれば1600mまでは許容範囲に入りそうだが、胴部が詰まってピッチ走法で走れそうな身体つきをしているから1200mも対応可能とみる。2歳戦から活躍できる配合で、初戦から期待度は高い。兄妹の中ではシゲルピンクルビーが最もイメージとして近い。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1200~1600m/ベスト1400m
・能力:スピードS/瞬発力A/パワーS/持久力A
・同タイプ:シゲルピンクルビー
・特徴:スピード性能◎/タフな馬場歓迎
※持久力=スピードの持続力
7/20(日)小倉5R・芝1800m ベレシート

日本での牝祖は4代母ララスティックベル。日本でも随一の名牝系だ。仕上がりは早いが、2歳というより3歳春あたりからの成長が著しい馬が多い。また、芝適性が非常に高く、豊富なスタミナと持続性能の高い末脚がファミリーの特徴である。
祖母クロノロジストは現役時ダート中距離で1勝。2戦でキャリアを終えたが、産駒にはノームコアにクロノジェネシスと2頭のGⅠホースがいる。ベレシートはそのクロノジェネシスの初仔。言わずと知れたGⅠ4勝の名牝であり、クロノロジストの孫世代では最高の血統と言える。
父にエピファネイアを迎えた本馬はスタミナと芝適性をさらに高める配合で、成長力も兼ね備えている。調教の動きはそこまで良くないが、まだまだ発展途上。素質の高さは立ち写真を見てもわかる通りで、初戦はどうかも今後も追い続けるべき一頭だ。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1800~2600m/ベスト2400m
・能力:スピードS/瞬発力A/パワーA/持久力S
・同タイプ:エフフォーリア
・特徴:持続性能◎/成長力注目
※持久力=スピードの持続力
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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