3代母はキャサリーンパー、活躍馬多数の一族にまたも砂の大物候補登場 血統で見抜く新馬の力

貴シンジ

2025年8月23日(土)中京6R出走予定 トリグラフヒルの血統分析,ⒸSPAIA

今週デビュー予定の注目新馬

出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。

従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで今回は血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。


8/23(土)中京6R・ダート1800m トリグラフヒル

2025年8月23日(土)中京6R出走予定 トリグラフヒルの血統分析,ⒸSPAIA



日本での牝祖は3代母キャサリーンパー。同馬も現役時代は未勝利ながらフランスの重賞で好走歴がある馬だが、特筆すべきは繁殖牝馬としての実績だ。

直仔に2006年ジャパンカップダート勝ち馬アロンダイトがおり、孫世代にもクリソライトやマリアライト、クリソベリルといったGⅠ級の名馬をクリソプレーズから輩出している。

トリグラフヒルの祖母にあたるタンザナイトの分岐からもブラックスピネルやダンビュライトといった重賞級が出ていて、名門ノーザンファームでも屈指の名牝系だ。

フランスからのファミリーらしい持続性能の高さが魅力で、じわじわと加速してどこまでも伸びるような末脚を持った馬が多いことも特徴のひとつ。タンザナイトの父がサンデーサイレンスということもあり、スピードを活かして芝で活躍する馬も多い。

とはいえ、トリグラフヒルの母トリプライトは父がワイルドラッシュで、現役時代はJRAのダートで計3勝。産駒を見ても父がエピファネイアの半兄マーシャルポイントは芝で2勝を挙げているが、ほか2頭はダート中距離を主戦場としている。

上述した半兄3頭がいずれも複数勝利を挙げていることからも、トリプライトの繫殖能力の高さは証明済み。その母の良さを活かすためには、ダートの中距離を狙った配合がベストといえる。

その点、トリグラフヒルは父にナダルを迎えた。まさにダート中距離を意識した配合となっている。

ファミリーとしては少し晩成傾向があるが、ナダルは早期から走る馬を出すことに長けている種牡馬なので問題ない。母父ワイルドラッシュは気性的に難しい馬が出やすいものの、本馬は目立ったクロスもなく、調教を見ても乗りやすそうな印象を受ける。

すでに馬格があるため調教ではそこまで動いていないが、しっかりと走れば新馬戦は通過点にできる素質の持ち主。生産者としてもトリプライトの傾向も把握してきた頃合いで、脚元にも問題なく素晴らしい配合の一頭だ。

<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:ダート
・距離適性:1800~2400m/ベスト2000m
・能力:スピードS/瞬発力B/パワーS/持久力S
・同タイプ:クリソベリル
・特徴:高い持続性能/成長力◎
※持久力=スピードの持続力


8/24(日)新潟6R・芝1600m ペンダント

2025年8月24日(日)新潟6R出走予定 ペンダントの血統分析,ⒸSPAIA


日本での牝祖は3代母ウェディングバンド。日本ではそこまで聞き馴染みのない牝馬かもしれないが、シャンハイボビーの3代母にあたる馬でもある。

長らく米国で繋がれてきたファミリーであり、ペンダントの祖母スパイラルリングの父もエンドスウィープとかなり米国血統で固められていて、高いダート適性と一定のスピードで走ることに長けているという特徴を持つ。

日本ではJRAのダート中距離で計4勝を挙げたソリティールや、JRA芝で4勝のスパイラルダイブくらいしか活躍馬は出ていなかったが、ペンダントの半兄エートラックス(父ニューイヤーズデイ)が兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)と東京スプリント(JpnⅢ)を勝利。注目が高まりつつある。

ペンダントは父にオルフェーヴルを迎えた。オルフェーヴル×母父シンボリクリスエスはオーソリティと同じ配合だが、同馬は牝系も芝適性が高かったところが本馬との違いだ。ただペンダントは牝馬で身体が柔らかい分、牝系がダート血統であっても芝寄りに出ているのだろう。

エートラックスの実績からもわかるように、元々スピード性能の高さを産駒に引き継ぐ母にスタミナとパワーに秀でたオルフェーヴルという非常にバランスの良い配合。距離もマイルがベストとみる。新馬戦のなかでも特にスローになりやすい牝馬限定戦であれば、前目のポジションを取ってそのまま押し切る形で勝ち負けに持ち込むことができるだろう。

<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1400~1800m/ベスト1600m
・能力:スピードS/瞬発力B/パワーS/持久力A
・同タイプ:レシステンシア
・特徴:スピードの持続力◎
※持久力=スピードの持続力

《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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