【注目2歳馬】母クロノジェネシスの超良血ベレシート 粗削りながらも加速ラップで豪快に差し切り
三木俊幸

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
他馬を0.7秒上回る上がり34.5を記録
週末に撮影したレースから、最も印象に残った馬を紹介する「注目2歳馬」。7月3週目は小倉競馬場へと足を運んだ。重賞の小倉記念も目当ての一つではあったが、最も楽しみにしていたのは、好メンバーが揃った開催最終日である20日の芝1800m新馬戦。勝利したのは父エピファネイア、母クロノジェネシスという超良血ベレシートだった。
追い切りで好タイムを連発していたリアライズルミナスが単勝1.5倍の断然人気を集め、ベレシートは4.7倍の2番人気という評価も馬体重は480kg、パドックの外目を周回するなど、さすが良血という雰囲気を醸し出していた。
しかしスタートの反応が遅く、加えて躓くシーンもあって行き脚はつかず1周目スタンド前では最後方、向正面では後方2番手の外を追走。ルートサーティーンが主導権を握り、1000m通過は1:04.8(13.2-12.3-13.3-13.1-12.9)とスローペースで先行勢に有利な展開だった。
レース後半に入って12.2-12.0とペースは上がったが、4角でうまく最内へと潜り込んでスムーズに7番手までポジションを押し上げることができたのは鞍上の北村友一騎手の好判断。これが勝利へのキーポイントにもなったと言える。
残り100mでもまだ5番手。好位追走から先に抜け出したロードフィレールが完全に勝ちパターンに持ち込んだ展開だったが、ベレシートはゴール前にかけて爆発的な瞬発力を発揮。外に大きくヨレながらも半馬身差をつけて豪快に差し切り、小倉競馬場はかなりの大歓声で盛り上がった。
勝ちタイムは1:52.5、ラスト400mからのレースラップは12.0-11.5。自身の上がりは34.5で、2位だったロードフィレールを0.7秒も上回るもの。1F11.5という数字以上に加速していたことは間違いない。外にヨレていたことやコース幅などの影響もあるが、体感スピードはあまり感じたことのない速さで、強烈なインパクトを残した。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
気性面を考慮し、調教では全体のタイムは遅めながら終いを伸ばす形で瞬発力を活かすことに重きを置いて進めてきた印象で、陣営が取り組んできたことが結果として結びついた。
北村騎手にとって母のクロノジェネシスは3度のGⅠ勝利をプレゼントしてくれた馬であるとともに、落馬負傷によって2021年の宝塚記念の優勝、凱旋門賞への挑戦、引退レースの有馬記念でコンビを組むことは叶わなかったという悔しい思い出もある。
日程こそ少しずれるが、初仔のベレシートが母と同じ小倉開催最終週の芝1800m戦で勝利したというストーリーは北村騎手にとっても「クロノジェネシス第2章」の幕開け。現状では課題も多く、粗削りながら高いポテンシャルを秘めているという印象だが、今年の日本ダービーを制したクロワデュノールも含め、これまで斉藤崇史調教師とはコミュニケーションをとって目の前の課題に向き合って一つずつ克服してきた。
ベレシートとのコンビでもこれまでの経験を武器に、ともに大きな舞台へと登りつめていってもらいたい。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
《ライタープロフィール》
三木俊幸
編集者を経てフリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場でレースシーンを撮影しながら、執筆活動も行っている。
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