豪GⅠ馬の母から受け継ぐスピードに注目 キズナ産駒モンローウォーク 血統で見抜く新馬の力
貴シンジ

今週デビュー予定の注目新馬
出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。
従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで今回は血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。
8/16(土)新潟4R・芝1600m モンローウォーク

母アンフィトリテⅡはオーストラリア産馬のため、日本での牝祖は母。3代母Joolzyを根幹としてファミリーは広がっており、オーストラリアでの活躍が目立つ牝系だ。
Joolzyの直仔には目立った出世馬はいないが、孫世代が活躍。Joolzyの産駒であるTigereye(父Kaapstad)はブルーダイヤモンドステークス(豪GⅠ・芝6F)勝ち馬のSleek Chassis(父Flying Spur)を輩出した。
さらに、Tigereyeの半妹で本馬の祖母にあたるOcean Dream(父Redoute's Choice)はシュウェップス・サウザンドギニーズ(豪GⅠ・芝8F)勝ち馬で、本馬の母であるアンフィトリテⅡ(父Sebring)を輩出。Sleek ChassisとアンフィトリテⅡはデインヒルを近い世代に持つなど共通点が多く、オーストラリアの馬らしい、スピードを全面に押し出したタイプに出ている。
本馬は父がキズナの牝馬。キズナ産駒は牡馬だと筋肉が硬いダートタイプに出てしまうことも多いが、牝馬の場合はバランス良い身体つきに収まりやすく、芝での活躍馬が多数出ている。スピードとパワーが特徴的で、早熟性も兼ね備えた血統構成であることから、新馬戦から勝ち負けになるだろう。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1600~2000m/ベスト1600m
・能力:スピードS/瞬発力A/パワーS/持久力A
・同タイプ:ソングライン
・特徴:スピード性能◯/早熟性
※持久力=スピードの持続力
8/17(日)新潟4R・芝1800m ラフターラインズ

日本での牝祖は5代母ローザネイで、4代母ロゼカラーを根幹として活躍馬を多数輩出する“バラ一族”に属する一頭。ローズキングダムやスタニングローズなどが近親に名を連ねる。
バラ一族は、末脚の切れ味を武器にするタイプが多い。しかし、本馬の祖母ローザブランカを祖とする分岐に関しては、父クロフネの影響が強く、先行して粘り込むタイプが多いのが特徴だ。
また、器用で操縦性の高い馬が多く、早期から活躍する傾向も見られる。スタミナも豊富で、芝の中距離以上が主戦場となる。
本馬は父にアルアインを迎えた。産駒には、アルアイン自身が制した皐月賞のように、高速馬場でのスピード勝負を得意とするタイプが多い。本馬も調教より実戦向きの血統で、母系のスタミナと父のスピードが合わさり、バランスの取れた配合となっている。
本馬は操縦性が高いため、順調にいけば秋華賞が大目標になるだろう。加えて、胴伸びの良さには目を見張るものがあり素質の高さを感じさせる。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1800~2400m/ベスト2000m
・能力:スピードS/瞬発力A/パワーS/持久力S
・同タイプ:ミッキーチャーム
・特徴:末脚の持続力/胴伸びの良さ
※持久力=スピードの持続力
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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