【注目2歳馬】良血フィロステファニがラスト「10.7-11.0」の瞬発力勝負制す キング騎手は新潟初参戦で新馬2勝の活躍
三木俊幸

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
半兄は皐月賞馬ソールオリエンス
夏の新潟開催は新馬戦だけでなく、初戦で敗れた素質馬が未勝利戦に登場して圧巻の走りを披露することも多い。今年の開幕週もディアダイヤモンド(27日1R・芝1600m)が逃げて上がり32.9の末脚で7馬身差。ゾロアストロ(27日2R・芝1800m)は同じく上がり32.9、勝ちタイム1:47.4という好タイムで勝ち上がるなどインパクトを残したが、今回の「注目2歳馬」では新潟初参戦のR.キング騎手を背に新馬戦を勝利した馬たちに注目した。
最初に取り上げたいのは、7月27日の新潟3R・芝1600m新馬戦を勝利したエピファネイア産駒の牝馬フィロステファニ。母はスキアで半兄に2023年の皐月賞を制したソールオリエンス、2020年の富士Sを勝利したヴァンドギャルドがいるという良血だ。管理するのは栗東の中内田充正調教師、太い流星が目を惹く顔付きの黒鹿毛で、デビュー戦の馬体重は448kgだった。
レースは9頭立てで、ゲートの出はまずまず良かったが直後にトモを落とすような形になって後方3〜4番手の馬群を追走。ハナを奪ったセントリアンが12.7-11.9-12.9(37.5)と超スローペースに落とし、外回りコースの3〜4角に入ってからは13.4-13.2とさらにペースは落ち着いて、一団の隊列で直線に差しかかった。
道中は頭を右に向け、レースに集中できていない中での追走が続いていたフィロステファニ。馬群が密集して進路がないとみたキング騎手は大外に切り替えつつ、肩ムチを入れながらゴーサインを出すと一気に加速する。残り200mで先頭に並びかけると、直線に向いた時点で1列前にいたディールメーカーとの追い比べをクビ差制した。
ペースが遅かったこともあり、勝ちタイムは1:37.1での決着。開幕週の高速馬場かつ差しも決まるコンディションではあったが、レース上がり33.0(11.3-10.7-11.0)のところ、自身は上がり最速32.6をマークした。
最後は少し減速しているが、最も速くなった10.7の区間で一気に前へと迫った脚はさすが良血という走り。キング騎手の手腕も後押しとなったのは間違いないが、馬自身も好騎乗に応え、2着のディールメーカーが押し切ってもおかしくない展開を差し切った点は評価できる。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
また、この勝利でエピファネイア産駒は早くも8頭目の勝ち上がりと好調。幼さが目立ったデビュー戦ではあったが、大きな伸びしろがあるだけに、レース経験を重ねて一歩ずつ順調に成長して大舞台を目指してもらいたい。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
新潟芝1400mの新馬戦最速1:21.3で勝利
前日の26日、新潟3Rに組まれた芝1400m新馬戦は、モズアスコット産駒のエコロアルバが1番人気に応えて勝利した。速いスタートとは言えなかったが、流れに乗って道中は中団馬群を追走。直線で外へと持ち出されると、後続に2馬身半差をつける好内容だった。
勝ちタイム1:21.3は同コースの2歳新馬戦で歴代1位の好タイム。前半600m通過34.4、後半34.9というペースだったが、ラスト400mは11.3-11.1と加速ラップだった。ラスト50mほどは流す余裕もありながらの勝ち方で、道中のレース運びも新馬戦とは思えないほどスムーズで文句なしの立ち回りだったと感じる。完成度の高さで1400〜1600mの重賞戦線でも活躍が期待できそうだ。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
エコロアルバは新ひだか町の藤原牧場の生産で、2024年の北海道サマーセールに上場されると社台ファームが1980万円(税込)で落札。その後は社台ファームで育成、2025年の千葉サラブレッドセールに上場されて7700万円(税込)で落札されたという経緯を持つ。
育成段階で高値に見合う成長を遂げていたことも理由としてあるが、今回しっかりと結果を出したことで、「セリで発掘してきた良い馬を育成し、千葉サラブレッドセールに上場させる」という社台ファームにとっても新たなビジネスモデルが、広がっていく可能性はありえるだろう。
《ライタープロフィール》
三木俊幸
編集者を経てフリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場でレースシーンを撮影しながら、執筆活動も行っている。
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