【注目2歳馬】モーリス産駒タイダルロックが4馬身差V 勝負所で馬なりのまま加速する好内容
三木俊幸

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
超スローペースで勝ちタイムは2:08.1
週末に撮影したレースから、最も印象に残った馬を取り上げる「注目2歳馬」。7月1週目の福島競馬場は重賞がなく場内はのんびりムードに包まれていたが、前週に引き続いて中距離の新馬戦ではノーザンファーム生産の素質馬たちが登場し、結果を残した。
今回は6日の芝2000m戦を勝利した武井亮厩舎所属のモーリス産駒・タイダルロックにスポットを当てる。
レースは8頭立てで、スタート直後からイチザペガサスとラディアントスターが牽制し合う形でペースは上がらず、前半5Fは13.1-13.2-13.5-14.2-14.5(1:08.5)と新馬戦であることを考慮しても超スローペースで流れた。
ゲートの出が遅かったタイダルロックは、鞍上の大野拓弥騎手が肩ムチを入れるなど促して3番手の外を追走する。1000mを通過するあたりで5番手にいたスターオブアダムが捲ったことで1000〜1200m地点までのラップは12.1と2.4秒も一気にペースが上がるも難なく対応して単独3番手をキープ。
その後も12.2-12.5と続き残り400mというところで一度もハナを譲らなかったイチザペガサスが苦しくなると、タイダルロックは外から先頭に並びかけて馬なりのままコーナーを加速していき、直線では内にモタれるのを矯正しながら11.1を記録する。
勝負所で楽々と1.4秒と急激にペースアップできるのは、いくら前半のペースが遅かったからとはいえ、簡単にできることではなく能力があるという証だ。
ラストは11.7と減速しているが、余裕十分で後続に4馬身差をつける完勝。ライバル達は全くついていけなかった。メンバーレベルは決して高くはなく、勝ちタイムも2:08.1と遅い決着ではあるが、レース内容は中身の濃いものだったと言えるだろう。
母アースライズで、おじは今年のダービー馬クロワデュノール。産駒にはデビューできなかった馬もいるなかで、半兄で4歳のラスカンブレスが5月の六社S(芝2400m)を優勝してオープン入りを果たすなど、4勝をマーク。スタミナ豊富で今後さらに活躍が期待される。
タイダルロックは早い時期のデビュー勝ちを果たしたが、脚長の体型でトモを含めて全体的な緩さはまだまだ目につく。超スローペースでも折り合い面に全く不安もなく、パドックやレース後も終始落ち着いていたのは好印象だ。
兄同様に古馬になってから良くなってくるタイプかも知れないが、重賞戦線でも活躍できる素質は秘めていそうなだけに、長い目で見ていきたい。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
母はオークス馬シンハライト、アランカールが4馬身差で勝利
タイダルロックと甲乙つけがたい内容で5日の牝馬限定・芝1800mの新馬戦を制したのは、エピファネイア産駒で母は2016年のオークス馬シンハライトという良血アランカール。

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
早い段階からこのレースを目標に調整され、デビュー2週前には斉藤崇史厩舎の僚馬でオープン馬のタガノエルピーダに食い下がり、栗東CWコースでラスト11.1-11.0と抜群の動きを披露するなど前評判は高かった。
また小柄な馬体ということで、福島までの長距離輸送を考慮して最終追い切りを火曜日にするなど、厩舎でも万全の対策をとって挑んだ一戦だった。奇しくも母シンハライトのデビュー時と同じ430kgでの出走となった。
スタートは大きく出遅れたわけではなかったが、その後の行き脚がつかず前半は7頭立ての最後方を追走。13.0-12.2-12.5と序盤からペースが遅かったが、2角から向正面にかけて13.0とさらにペースダウンしたところで鞍上の北村友一騎手は3番手の外まで進出を開始する。
直線に向いてからも軽く気合をつけられる程度で残り100mは流しながら4馬身差。12.1-12.0-12.1-12.6と最後は減速しているが、ここでは力が違うという能力の高さを証明する余裕十分の楽勝でスピードの持続力も示した。
勝ちタイムは1:52.0。金曜に7.0mm、土曜朝に1.0mmの雨が降って稍重発表ながら、次のレースからは良馬場に回復しており、道悪というイメージではなかったことは補足情報として書き加えておく。
4角で手前を替えて外にふくれる場面もあるなど今後に向けての課題も残ったが、今後が楽しみな馬であることは間違いなく、しっかりと勝ち切ったことは今後のローテーションを考えても大きい。体質の弱い血統なだけにこのまま順調にいってくれることを願いたい。
ライタープロフィール
三木俊幸
編集者を経てフリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場でレースシーンを撮影しながら、執筆活動も行っている。
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