【エプソムC】“府中千八展開いらず”上位人気が堅調 データからは「同距離×前走1着」デビットバローズが有力

勝木淳

15年以降の東京芝1800mのデータから見るエプソムC,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

8枠に好走ゾーンあり

安田記念翌週からNHKマイルC前日へ。エプソムCは重賞スケジュール変更のなかでも大きく日程が動いたレースのひとつでもある。

春戦線がひと段落し、夏もしくは秋を展望する馬たちが賞金を加算する場だったが、5月2週目となると、宝塚記念なども視野に入る。といってもファン投票選出レースなので、賞金を加算したからといって出られるわけではないので、エプソムCルートも微妙か。

翌週には左回り芝2000mの新潟大賞典もあり、以前ほど出走馬が集まらない可能性が高い。さらにレースの名を冠するエプソム競馬場の大一番、英国ダービーは例年6月1週目の施行であり、今年は6月7日。エプソムCはなんともいえない立ち位置になった。

さすがに一ヵ月前倒しとなると、ローテーション別成績など前走データを当てはめるのは気が引ける。したがって、当記事では2015年以降、東京芝1800m・古馬オープン以上の計40レースのデータを用い、高額条件でのコース傾向をみていくことにする。

人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績を見る。1番人気【17-7-4-12】勝率42.5%、複勝率70.0%。分母が40であることを踏まえると、かなりの高確率といえる。古い格言だが、「府中千八展開いらず」といわれ、実力がストレートに反映されるコースだ。

大雑把にいえば、コーナー2回のワンターンであり、さらに最後の長い直線を意識するため、中距離戦らしく速いペースで展開することは滅多にない。3コーナー手前から4コーナーにかけてひと腰入れて直線へ。出走馬の大半が末脚を温存して直線を走るので、最終的には末脚比べに持ち込まれる。

確実に末脚を発揮できる人気馬であれば、前半で位置をとらなくても間に合う。展開いらずとは、展開利を味方に残り目を狙う伏兵に厳しいことを意味する。

ただし、馬場の影響は受ける。冬のDコースなどどうやっても外から差せない馬場状態だと、さすがに狂い目も出る。当日の馬場コンディションを見極めさえすれば、攻めてもいいのではないか。

とはいえ、人気別では5番人気【4-6-5-25】勝率10.0%、複勝率37.5%と6番人気【0-2-4-34】複勝率15.0%の間に断崖があり、人気順の傾向といっていい。基本は大振り厳禁。着実に上位人気をピックアップし、仕留めよう。

枠番別成績,ⒸSPAIA


末脚比べの東京では速い上がりが記録されるため、外を回るなど距離ロスはアウト。終盤まで内目で我慢し、直線は馬群を縫う。そんな手順をイメージするものの、実際の枠番別成績では1枠【3-3-5-42】勝率5.7%、複勝率20.8%、2枠【2-5-1-50】勝率3.4%、複勝率13.8%とさほど高くない。

そして8枠が【10-6-8-65】勝率11.2%、複勝率27.0%と目立つ。外を回ることの利点はどこにあるのか。あるとすれば、スローペース特有のタイトな馬群のなかで、プレッシャーを受けにくいことが考えられる。終始外は厳しいかもしれないが、一列ぐらい内に誘いさえすれば、内側ほど押圧されずに脚を溜められる。内枠に目を向けやすい競馬場だが、芝1800mの高額条件では8枠がプラスに働く。

注目は昇級初戦キョウエイブリッサ

今年の顔ぶれはダービー卿CT2着コントラポスト、小倉日経賞を勝ったドゥラドーレス、大阪城S1、2着デビットバローズとトーセンリョウ、そして白富士Sを勝ったシュトラウスが中心を担う。

前走距離別成績,ⒸSPAIA


前走距離別成績では距離短縮【8-11-11-178】勝率3.8%、複勝率14.4%に対し、同距離【14-15-12-121】勝率8.6%、複勝率25.3%、延長【18-14-17-148】勝率9.1%、複勝率24.9%と確率上では1800m以下を経由する馬に分がある。

前走1600m・コース別成績,ⒸSPAIA


距離短縮組では前走1600m【16-14-16-136】勝率8.8%、複勝率25.3%に注目。コース別では阪神芝1600m【4-3-1-12】勝率20.0%、複勝率40.0%、中山芝1600m【4-1-5-27】勝率10.8%、複勝率27.0%、そして頭数が多い東京芝1600m【6-6-7-46】勝率9.2%、複勝率29.2%はマークしたいところ。

中山芝1600mはダービー卿CT経由のコントラポスト、3勝クラス・幕張Sを勝ったキョウエイブリッサなどがいる。9着以内【4-1-4-16】、10着以下【0-0-1-11】。そして前走1着の昇級馬は【2-0-0-1】。データを当てはめるならキョウエイブリッサがいい。

前走1800m・着順別成績,ⒸSPAIA


前走1800mの同距離組は着順に注目で、1着だと【7-6-2-20】勝率20.0%、複勝率42.9%。大阪城Sを勝ったデビットバローズが当てはまる。また2着【2-3-2-16】勝率8.7%、複勝率30.4%も悪くなく、ほか6~9着も【3-1-3-27】勝率8.8%、複勝率20.6%と負けた組にも急所がある。大阪城S2着トーセンリョウ、小倉大賞典8着シルトホルンなどに妙味を感じる。

最後に前走2000mは【4-8-9-140】勝率2.5%、複勝率13.0%。こちらは1800mより傾向が極端で、1着【2-2-2-17】勝率8.7%、複勝率26.1%、10着以下【2-0-2-40】勝率4.5%、複勝率9.1%と勝った馬か大敗した馬のなかに好走馬が隠れている。

白富士Sを勝ったシュトラウス、小倉日経賞1着ドゥラドーレス、もしくは白富士S大敗のレガトゥスらが当てはまる。

15年以降の東京芝1800mのデータから見るエプソムC,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
東京芝はルメール騎手以外に池添謙一騎手も狙い目 騎手、種牡馬の府中巧者を徹底検証
芝1800mで“買える”種牡馬、騎手、調教師を調査 堀宣行調教師は「外国人騎手」起用がポイント
現4歳世代は「イクイノックス世代」に匹敵! ダービー組は芝の上級条件で単複回収率100%超