【天皇賞(春)】「直近1年の中距離GⅡ勝ち馬」が複回収率128% データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

天皇賞(春)データで導く穴馬候補3頭,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週末の京都メインは天皇賞(春)。国内唯一となる古馬の平地3000m超GⅠであり、ステイヤーたちにとっての晴れ舞台だ。

しかし今年は現役の菊花賞馬であるドゥレッツァ、アーバンシックがおらず、昨年覇者テーオーロイヤルも春全休。確たる主役不在の混戦模様で、そのぶん波乱の余地もありそうだ。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。


「前年の3着以内馬」は複勝率57.1% ブローザホーン

まず1頭目はブローザホーン。昨年はこのレースで2着に入り、続く宝塚記念でGⅠ初制覇を果たした。秋シーズンは不振に終わったが、阪神大賞典3着と復調気配を見せて参戦する。

天皇賞(春)は昔から“リピーター”が多い。古くはメジロマックイーンの連覇→翌年2着があり、その3連覇を阻んだライスシャワーも隔年で2勝、ほかテイエムオペラオー、フェノーメノ、キタサンブラック、フィエールマンが連覇を達成した。そして、なんといっても昨年までディープボンドが4年連続で馬券に絡んだ。

3200mの特殊条件ゆえに、1年の間に出てくる新興勢力は数が限られる。一方で、一度結果を出した馬は次の年もここを春の大目標に狙いすましたローテを組むことが多く、そして繰り返し好走する。新陳代謝が緩やかな路線と言える。

天皇賞(春) 前年着順別成績,ⒸSPAIA


データを見ても、前年の1~3着馬は【2-5-1-6】複勝率57.1%、複回収率207%と好走率が高く、回収率も伴う(※過去10年。以下全て同じ)。ちなみに同4着以下馬は【2-1-1-24】複勝率14.3%、複回52%と低調だ。天皇賞(春)を占うには天皇賞(春)。前年の着順こそ最重要ファクターなのだ。

となれば昨年2着ブローザホーンは軽視できない。前走は勝ったサンライズアースが強すぎたが、休み明けで斤量59kgを背負って3着は確保しており、他のメンバーとの比較では悪くない内容だった。GⅠ馬が自身とジャスティンパレスの2頭しかいない相手関係なら、今年も好勝負になっていい。


「中距離GⅡ勝ち馬」が通用する シュヴァリエローズ

続いてシュヴァリエローズを取り上げる。以前は1600~2000m戦を使われて頭打ち感が出ていたが、昨年京都記念4着を契機に距離を延ばすと軌道に乗り、秋にはGⅡの京都大賞典とステイヤーズSを連勝した。

このレースには「中距離GⅡ勝ち馬が穴を開ける」という側面もある。2019年に前年アルゼンチン共和国杯の勝ち馬パフォーマプロミスが8番人気3着。20年にはオールカマー勝ち馬で、それまで中距離GⅠでは7着、7着、12着、13着止まりだったスティッフェリオが11番人気2着と激走した。

理由はあくまで推測だが、長距離路線は層が薄くメンバーレベルが低くなりがちだから、ではないだろうか。より相手が強い芝中距離でGⅡを勝つ能力があり、あとは折り合いさえつけばなんとかなるのが現代の天皇賞(春)。そんな風にも解釈できる。

天皇賞(春) 中距離GⅡでの実績別成績,ⒸSPAIA


実際にデータを見ると「直近1年以内に2500m以下の国内GⅡ勝ち」があった馬は【4-6-4-19】複勝率42.4%、複回収率128%でプラス収支となっている。ちなみに前走日経賞1着馬は【1-0-1-7】なので、単に前哨戦を勝った馬がいいわけではない。

該当馬2頭のうち、京都大賞典勝ち馬シュヴァリエローズに注目する。前走の日経賞は12着に敗れたが、外枠がたたって位置取りが後ろになり、4角では内から9~10頭目を回るロスもあった。

そもそも稍重~不良【0-0-0-5】と渋った馬場は合わない。悪条件が重なっての0.5秒差ならむしろ好感すら持てる。ステイヤーズS勝ちの実績から距離はもちろん対応可能。本来の先行策に戻れば一気の反撃が見られるはずだ。


「ノーザンファーム産の小型馬」を狙え! ビザンチンドリーム

ラストはビザンチンドリームを選んだ。昨年2月に豪快な大外一気できさらぎ賞制覇。クラシックではもう一歩、二歩足りなかったが、前走はサウジアラビアに遠征して芝3000mのGⅡレッドシーターフハンデキャップを優勝してきた。

現在の日本競馬において、芝中長距離馬の生産と育成に長けた牧場はどこか。こう聞かれれば多くの人が「ノーザンファーム」と答えるだろう。

天皇賞(春) ノーザンF生産馬の馬体重別成績,ⒸSPAIA


この天皇賞(春)において、ノーザンF生産馬の成績は【5-4-5-46】複勝率23.3%、複回収率83%。確かに全体平均よりは高い数値だが、全部ベタ買いではプラスにならない。もうひと絞りしよう。

ポイントは馬体重。ノーザンF生産馬のうち、馬体重が「479kg以下」だった馬は【2-4-4-14】複勝率41.7%、複回収率185%。これに対し「480kg以上」は【3-0-1-32】複勝率11.1%、複回収率15%。面白いほど決定的な違いが表れている。

よく使われる例えだが、人間でも100m走のトップアスリートは筋骨隆々でガタイのいいマッチョマンであり、マラソンのトップ選手は足が長くて細身のスラリとした体形であることが多い。競馬においても、短距離戦は筋肉量が多くてゴツい馬、長距離戦では小柄な馬が比較的活躍しやすいとされる。まさにそういう傾向が数字に表れている。

登録しているノーザンF生産馬のうち、馬体重が軽めなのは既に取り上げたシュヴァリエローズ(前走時466kg)、そしてビザンチンドリーム(前走不明、2走前460kg)だ。

ビザンチンドリームは昨年の菊花賞で5着敗戦。といっても2着ヘデントールからはわずか0.1秒差であった。序盤で馬場の荒れたインコースを通り、2周目4角ではゴチャつき、躓いてバランスを崩すシーンもあった。これらの不利を考慮すれば、まだ勝負付けは済んでいない。逆転の可能性を秘めた1頭だ。

《ライタープロフィール》
鈴木 ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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